クロックはアナログ信号です。
ジッターは
アナログ量です。

妄言多謝


2014

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2014年12月11日  1ビット研究会行きました。
「1ビット研究会」で早稲田大学の西早稲田キャンパスに行ってきました。所用あり、とんぼ返り。
 旭化成からDSD256(11.2MHz)のAD/DAチップが発売。これでDSD256に弾みが付くかな。でもね、サイズでかいんですよお。ストレージの容量食いますよお。

●夜は久しぶりに和田さんと清談しました。
 この初回のみ録音違い限定2枚組のジャズヴォーカル。2枚のCDの音の違いが分かるかなあ?

●こんなの見てると音楽オンデマンド=ストリーミングへの距離って、そう遠くないと思いません?
 頑張れAKB48!主婦の皆さん達ももっとExileのCD/DVD/BDを各種特典付で何枚も買ってもらって、CD大国・ディスク大国日本を守って下さいね~。
 『ネット配信、黒字化の先へ 「放送外」に走るテレビ局』



2014年12月10日  他党に投票してアベに「ノー!」と言おう。
●経済政策を問うアベノミクスとやらで、どれだけ国民が損害を被って来たのか、冷静に考えると分かるはずだ。

○日銀と政府が円安容認と出たから、世界中の余剰マネーが日本に集まり株高を演出しているが、そもそも株価と景気・成長とは関係がない。この間、GDPがどれだけ減ったか?
○また年金原資の半分以上を株などにつぎ込むのは、結局国民の財産を減らす事になる。ノーベル賞を受賞したファイナンス理論が証明するように、市場のトレンドを継続的に超える事ができるようなファンド運用は不可能だ。おまけに役人がおっかなびっくりの運用だから、必ず年金原資は減少する。
○消費税の増税分も結局は景気対策(本音は政治家の集票と選挙区対策)に無駄に費やされて、どっかにいってしまった。土建国家日本健在。
○国際収支は赤字に陥り、日本は借金国に転落しつつある。つまり国債を外国に買ってもらわないと資金が確保できない。米国債との競合も発生する。
○「3本の矢」などはじめから何も実体がない。
 金融緩和=人事権を乱用して日銀をどつき回して、中央銀行を通貨の番人からひきずり下ろしただけ。
 財政出動=ばらまきの一時的景気対策と集票対策。結果は財政破綻。
 成長戦略=これな真っ赤な嘘で、なにも出てこない。


●そして円安が続き、コストプッシュインフレがどんどん進行する。政権発足時は84円だったのが、いまや120円を超えて当たり前のような状況で、実に円切り下げ率40%以上の異常事態なのだ。歴史上、通貨を切り下げて繁栄した国はない。
 インフレは来る、年金は減る、財政は破綻する。どこかの本の題名ではなく、いずれ起こりうる可能性が確実に高まっているのだ。

●日本の政治家に経済学を分かっている者は一人もいない。アベは結局派手な言動で注目を集めただけだ。
 しかも経済ならアクシデントがつきもので言い訳が効くので、無政策のごまかしになる。

●一方で、久しぶりに権力行使をする政権と見たか、マスコミは総崩れ、結局損をしないようにちまちまとした「自主規制」とやらが幅を利かせて、反対派の声はメディアに載らない。
 健全な反対意見があって、はじめて民主主義としてのバランスがとれるのに、「言挙げせずの国」日本ではヤバそうなものには一切手を触れようとさえしないから、現状肯定論ばかりが幅を利かせ、将来のことは棚上げする結果にしかならん。情けない。

●憲法9条についての是非の議論は置いておくとして、少なくとも国民主権たる手続きを野合で私物化させてはならない。アベが目指すのは戦後体制の精算などと言われながら、その実は戦前へ戻そうとする保守本流とか言う幼児的願望でしかない。幼児は自分のことしか今しか考えない。譲るところもなければ交渉もできないから、得るところもない。100年の計もないそんな幼児にちゃんとした外交をやれるものか。

●はっきり言って任せたいタマはない。絶無だ。しかし選挙を棄権すればそれは意思表示にならない。少なくとも自民以外に投票しよう。できるだけ支持率を下げよう。それしか希望はない。むざむざと多数を取らせればさらに2年突っ走り、後には財政破綻をはじめとしておおいなる負の遺産だけが残るだろう。
 ムーディーズも考えたもので、絶妙のタイミングで日本国債の格付けを下げ、メガバンクの格付けも下げた。今は資金が国際的に余っているから1万8千円などとわめいているだけだ。状況が変われば、あっという間に日本売りに転じて資金を引き上げるだろう。

●放置すれば、この国は荒廃する。投票しても程度の差はあれそうなるだろう。しかしこのままでもっと悪くなっていいのか?意思あらば行動しようではないか。風邪をひこうが疲れていようが投票所に行こう。



2014年12月9日  光学ドライブその後
●最終的に我が家の光学ドライブは、Plextor PX-760A+Stardom IDE-Firewire800ケース、Pioneer BDドライブ2種、BDR-S05J(BDR-205)のデスクトップ組み込み&SATA接続、BDR-XU02JのUSB2.0 miniB接続という3系統のラインナップとなった。
 主役は写真では見えないがこの下にあるPlextor PX-760Aであり、右端の赤いチューブが付いたFirewire800ケーブルでPCに接続されている。Pioneer BDドライブ2種は予備役スタンバイという訳だ。大げさなように見えるが、静音設定可能なPC用光学ドライブは滅亡寸前の危機にあり、これくらいはやっておかないといけないと真剣に考えての話だ。



●PioneerのBDドライブはBDR-S05J(BDR-205)をデスクトップ(ASRock Z77E-ITX+Core i 3 3220T)内に収納してSATA2でマザボに接続した。
  写真でBDR-05Jの下にあるのはラトックシステムの内蔵リムーバブルケース SA3-RC1-LG でこれで、Windowsや各種Ubuntu Studio/Linuxのシステム用SSDを挿し替えて、各OSをマルチブートしている。
また BDR-XU02JのminiBからはアダプタを介さずSupraのUSB2.0 miniBケーブルで接続した。
ちなみにマウスはUSB3.0端子からHUB経由で、キーボードはPS2端子に接続しているので、XU02JはUSB2.0のEHCIコントローラを単独で占有しており、バス帯域の食い合いは生じないし、USB高速化ツールもXU02J付属のものだけをインストールしている。

●最新のBDR-S09Jもあったのだが、ドライブユーティリティが前のタイプの方がドライブ全体の静音化を明確に設定できるし、05も新品同様だったのでこちらにした。ちなみに、05も09も出力はSATA(1.5Gbps)なので、SATA2ケーブルを使いマザボのSATA2端子に接続している。
いつも言うように、オーディオ屋から見れば、少なくとも音源に関しては粛々と安定した伝送でローノイズである事が最優先で、「速ければ良い」というのは、PC屋さんのただの思い込みに過ぎないと言いたい。第一、薄型スロットイン光学ドライブ接続ケーブル(青いのが多い)は大体SATA2ではないか。



XU02J内部のカットモデルは上記写真の通り精巧な造りだが、現物をも見せていただいたところ、ノイズ低減のためSATAを出たところですぐにUSB2.0に変換して出力するなど、小さいスペースでいろいろと工夫して高い性能を発揮できるようになっている。なので、電源さえちゃんとしてやれば、これは単なるポータブルドライブではなくなる。皆さんには、これを分かっていただきたい。
 ドライブ関係のように瞬間的な電流立ち上がりを要求する機器には、スイッチング電源の方が適している。具体にはラトックシステムのRAL-AC05-03を5V電源として使っている。さらに本チャンの音源収録の場合はAC140V整流したパワータップをその前につけて万全を期す。
 もちろん新しいXU03Jも当然ありありだ。

●ちなみにCDリッピングはオーディオグレードのクロックで駆動されるLinuxが制御するワイスMAN301が圧倒的に凄いので、これらを使うのはアプリのインストールなどの他は、DVD-RからのHIResファイルトランスファー専用だ。これだけでもどれだけの違いがあるか、経験しない人には分からないかも知れない。後悔してもそのときにはもう遅いです。
 レーザーダイオードは使うほど減るので、中古があるさとも言ってられないのですね。

●結局NYタイムズの記事でも分かるように、「いまそこにあるPCオーディオの危機」=「滅亡寸前の静音光学ドライブ」というのは日本だけのお話なんですね。日本の中で片をつけなくてはいけないから、これらしかない。いやあよく分かりました。そらワシ程度が騒いでもどんならんわあ。



2014年12月7日  「ジッターフリー」なんて現実にはないんですけど。キーワードは「ツーツー」。
●メーカーや代理店の技術に詳しくない人が雰囲気で流したデマがまだ沢山残っている。「ジッターフリー」や「ジッターレス」もその一つ。

●ジッター、ジッターとあちこちで取り上げられてもその定義がちゃんと語られることはまずありません。河合一さんの「デジタルオーディオの基本と応用」(現役流通本です!素晴らしい。)の「DA変換におけるジッターの真実」によれば、クロックジッターは『時間軸(周波数、立ち上がり/立ち下がりの時間間隔)の「不確実性」であり、初期精度や温度ドリフトとは別特性で扱わなければならない。』(p.156)
 ジッターには「Time Intervalジッター」、「Half Periodジッター」などあるが、『各ジッターのうちオーディオD-A変換における変換精度(オーディオ特性)に影響するのは「周期(Period/Cycle)ジッター』である。」この点はラトックシステムシステムの岡村社長も強調しておられました。

p.s.ついでにジッターの測定はいろいろなやり方があって、それぞれに測定条件が違うので、測定値の絶対比較はできないそうです。

●河合さんによると『周期ジッターとは理想クロックでの理想クロック周期(Period/Cycle)と実クロックでの実クロック周期(Period)との誤差で定義される。』



●まず理想クロックというのは、立ち上がり/立ち下がり時間がともに「ゼロ」な真四角なパルスで、人間の頭の中にしかない理論モデルです。しかもデジタル量は「離散量」ですから、「値がない」タイミングも当然あります。(上図の黄線)
 一方現実の実装回路でのクロック信号は立ち上がり/立ち下がり時間がともに有限のへろへろな波形で連続的なアナログ量です。(上図の赤線)
 その理論モデルと現実の波形との誤差が「ジッター」であるわけです。
 また高品位なクロックを使うとジッターがより少なくなることも、理解されやすいと思います。

●この時点でお分かりでしょうが、ジッターフリーつまりジッターがないということは、理想クロックが現実には存在しない以上あり得ないことです。
 これは理論・モデルと実装回路の区別ができず、理論をすべて現実に適用できない場合があるということを理解できずに、両者を混同していることから来るわけです。理論通りに行かない場合は、当然理論値と実効値も異なります。

「現実の世界ではデジタル回路は存在しない、デジタル量は現実には存在しない。」というと初心者はパニクります。
 つまり、超広帯域アナログ回路の上で、電圧の高低で2値判別して「デジタル情報」を処理している、というモデルを理解できない方は案外と多いようです。そういう方は理論を根拠にして、「そんなことはないはずだ。」とおっしゃるわけですが、既に実際の回路の話になっている場合は別のレイヤーになっているわけで、もうその理想論は通用しないわけです。「全てのHDDで音は変わらない。」というプラシーボエゴの人たちも、ゼロイチだから変わらない、という恐ろしく単純な想定しかできない状況にあるわけです。

●例えばLAN/ネットワークを流れる信号は超高周波アナログ信号です。またLAN/ネットワークはパケットという形でデータを小分けして流すので、伝送路では他の信号とも同居し、パケットが欠損して届けば再送を要求します。当然に、LAN/ネットワークはリアルタイムな伝送路ではなく、ジッターフリーなどあり得ないわけです。
 すべてはアナログの世界の上で、しかしデジタル情報はデジタル情報として処理されていく訳です。電子回路上のデータは電圧変動や輻射ノイズなど不安定な状態に置かれており、PC規格はそれでもデジタル情報がデータとして適切に流れるレベルを確保しに行くわけです。当然にそれはオーディオグレードとは異なります。

●例えば電子出版などはデジタル出力です。しかし音楽再生は最終的にアナログ波形を出力しなければ耳には聞こえません。しかもHDDや光学ドライブから始まってDAまで「全てのアナログ回路がつながってしまう」というのが、オーディオ再生の特徴です。
 キーワードは「ツーツー」。



2014年11月25日  When I'm 64.
●いろんな方からSNSなどで誕生日のお祝いのメッセージをいただいたいます。ありがとうございます。

●昨年くらいから、川の流れがたゆたうように日々を大事にして、ゆっくりとやってます。モノや人間関係も含めて流れを見ながら急がずに断捨離しています。
 今年はまだ暖かいので助かっていますが、それでも天候不順のせいか喘息はずっと続き、ようやく最近になって納まり気味です。これから寒くなってくると、左半身中心に血行不良で痛みが続くかと思うとうんざりしますが、引きこもりで逃げるのと、来年1月は半月くらい沖縄にいようかなどと計画中です。

●左手の握力は右手の5分の1以下で、それもときどきゼロに近くなります。うちのiPadのガラス面にひびが入っているのはそういう訳です。食器も沢山欠けているので、高価なモノは買わない。
 最近も必要があって、いくつか製作していますが、ネジ一つ拾うのも大変で、えらく疲れます。穴開けは左手で押さえて、右手で電動ドリルを持ってやるので、これも大きな径の穴開けはもう止めようかと思ってます。

●PC/デジタルオーディオについて、事件は日野市(SFORZATOの所在地)あたりを除いて東京ではあまり起こっていないので大阪にいても特に不自由はなく、海外やあるいは友人知人などからの情報が一番有益です。
 オーディオ関係のギョーカイというのはマクロな情報での議論をほとんどしないのですね。それよりも同業他社の動向の方がよほど気になるようで。
 インポーターも結局は人材ですから、どんなに先進的な機器であっても、分からない物を自信を持っては売れない。期待がもてそうだけど、国内に入っていない機器、とくにネットワーク関連やLinux関連の機器は結構あります。とりあえず、入手可能でこれはと思ったモノに微力ながらフォーカスを当てていきたい。

●心波立つときもありぬれど、静かにもの思ひ、思ひを致せば、いま在るときの愛しさぞ募れる。



2014年11月23日  死に後(しにあと)
●僕はこの25日で64歳になる。いずれ居なくなる訳で、その感慨はともかくとして、心がけているのは僕が居なくなった後の心残りをなくしておく事だ。
 例えばオーディオについて言えば、僕自身が何かをメンテできる年数は限界があるということだ。人の為に何かを製作する事は、昔痛い目にあったこともあり一切しない事にしているが、それよりも後の事を考えてできるだけご本人がメンテしやすいように、ということを心がけている。例えば市販組み込み用電源にも高性能なものがあるので、それをオーディオ用に若干部品を加えてバランスをを整えるとか。信頼できるメーカーの製品があってお任せできるなら、本人もその方が楽だと思う。

●中途半端な関わり方はしないと言う事で、心残りはできるだけ減らしているつもりだが、関わる以上は僕なしでも転がるように死に後の事も考えておく。そういうことが大人としての責任だと思っている。



2014年11月22日  OCXその後
●OCXへの50~75変換トランスの取り付け問題は、写真のような形にしてみた。梱包用の発泡スチロールのやや堅めのものをカットし削って、トランスを黒のタイラップでぐるりと巻いて固定した。これでトランスと支持材が一体化するので、とりあえずはOKだと思う。穴を開けずに済んでほっとした。やれやれ。



●新ケーブルはまだ使わず以前からのDTR-142(50オーム)でSC-10から10MHzを入れて聞いている。大分落ち着いてきたが、もっと時間が必要なので、気長に待とう。あれこれ試聴したり思案するのはそれからで良い。

●クロックは文字通り時間の賜物なのだから、あせったり急いでもどうにもならない。変に情報を集めると、怪しい話も紛れ込む。設置環境を整えてやったら、まずは素性をじっくりと見極めることが第一だ。



2014年11月19日  Antelope OCXを聞く
●昨夜は懐かしい方から久しぶりにお電話をいただいて、大変嬉しかった。僕がオーディオでやっていることはパイロット的な事なので、多くの方々の理解と賛同を得られるとは思っていないが、少数でも理解してくれる人がいると言うことは、とても幸せな事だ。「また一緒に何かやろうよ。」との一言に感謝。

●実は今日はクロックジェネレーター Antelope Isochrone OCXの新品2日目を単体で聞いている。10MHzのアトミック級超高精度水晶は50オーム出力なので、それを受けるOCXのBNC端子には50〜75オームの変換トランスを入れている。設計者のイゴール・レヴィン氏に会ったときに「直接50オームケーブルをつないでもOCXはロックするけど、それじゃダメなんですか?」と聞いたら、にべもなく「ダメ!あんたも素人じゃないんだからインピーダンスのミスマッチングがどれだけヤバいか分かるだろ?」。
 すんませんです、はい。

●で、抵抗でやるのは音質的に好きになれないしロスも大きいので、ここは断然トランスということで定評あるスタック電子の変換トランスをBNC端子に差し込んで、そこにDTR-142ケーブルを接続した。で、BNC端子にはストレスが掛かっていたんだろうが、これまでは何事もなくきたわけだ、表面的には。

●んで、SFORZATOの小俣さんに教えてもらって、開発評価用に使えるグレードの潤工社の50オームケーブルを新調して接続した。超広帯域なので端子は当然小型のSMA端子。我が家にはユウエツ電機のSMA〜BNC変換アダプタがあるので、これで接続した。ところが、これまでは軽いケーブルだからなんとか保っていたものの、変換アダプタが加わって、さらに重くて堅いケーブルがぶら下がったのでひとたまりもなかったのだろう。慣らし運転で置いていた間に、BNC端子が壊れてハンダ付けが基板から浮いてしまった。訳ありで修理に出せない身なので、自分で修理を試みたがうまく行かなかった、グス。新しいケーブルはまだ音も聞けていない。グスグス。

●で、新品を調達して暖気しつつ音の変化を聞き始めた訳だが、新しいOCXは古いものよりかなり音質が良い事が分かった。自称「パワータップ」を製作し、SiCショットキー/BlackGate VK(秘蔵虎の子)で整流した直流140Vを給電して2日目だが、かなり行ける。これでOCXはノイズ対策だけで、10MHzを加えればそれで十分かも。

【注】念のため、「パワータップ」整流後の140V給電はスイッチング電源にしか使ってはいけない。ワイスMAN301のようにリニア電源も搭載している機器には使えない。

●だが今回で懲りたので、変換トランスやアダプタがBNC端子に負担をかけるのを放置するわけにはいかない。
 これまでのDTR-142ケーブルならの変換トランスの下に何か支持物を置けば良い。だが、変換アダプタと重く堅いケーブルだとそれだけで行けるだろうか。
 ケースに穴を1個開けて支持ステーをねじ止めして括り付けるのが一番良いんだが、ノイズ対策するならケースを開けにゃならんし保証修理外だから、今ではなくてもいずれは新品OCXに穴をあけるのもまあ仕方ないかと考えている。良い音を長く聞くには腹の一つも決めにゃ行かんだろう。我がゆくはけものみち。

●S/PDIFのケーブル内部での実クロックは実質32倍になるのに、サンプリングレートが低いし長さが短いからRCA端子で大丈夫とか、いまだに言う人が多いが、イゴール・レヴィン本人にぶつけたらどう言うだろう?「AES/EBUにしてくれ。」とか言いそうな気もするが、これは聞いてみないと分からない。
 僕は別にDA変換のためには外部クロックが必要だとか押しつけているわけでは毛頭ないので、誤解なきようにお願いしますね。(大体がDA変換の「精度」って何なんだ?)
 Fireface400など使っているとBNC端子が目に付くし、聞かせてもらったら欲しくなったので、頑張って勉強してなんとか導入しただけです。音を聴けば一発で分かりますから、後は欲しいのかどうかだけです。

●いま兵庫と鹿児島で二人の方がクロック導入に取り組もうとしている。どのあたりで頭を打つかは大体分かるけれども、昨今の風潮を見ても「這えば立て、立てば歩めの親心」は結果として本人のためにならないので、心を鬼にして見守ろうと思っている。何かを知るために代価を払うからこそ、活きた経験値として残って行くと思うからだ。
 ただSOSを出すならはっきりと出していただきたい。中途半端では分かりもはん。



2014年11月14日  ようやく穏やかな日々が
●60有余年を過ぎて、ようやく穏やかな日々が巡るようになってきた。時間はそうは残っていないようだ。だから、できれば美しいものだけに接していたい
 夢見たのは修道院の祈りと労働、あるいは竹林の七賢の清談の日々。唯吾知足。

●今日は母のグループホームで、仏壇の処分引き取りをお願いしているのでそちらにいく。あんなに大事にして日々読経していたのに、認知症の進行でもう父=亡夫との心の接点もなくなりつつあって仏壇との認識すらなく、ガラスの扉などむしろ危険なので、弟と二人で悩んだあげく処分と決めた。

●オーディオとは結局は音に淫する道楽だ。一瞬の響きに心を奪われ、自分のイメージに沿って音の淵をさまよい続けることだ。そのような息も止まるような瞬間がなくて、何の人生か。
 PCのロジックを少しばかり知っていようが、道楽を知らねば音楽再生には何の
役にも立たぬ。音楽の響きがオーディオだ。
 僕らは滅び行く種族だ。結構ではないか。富貴百年よく幾ばくぞ。方々よ、宴を開こうぞ。

●風が寒くなってきた。大嫌いな冬が来る。街にも出られず、体中が痛み悲鳴を上げる冬が来る。その前に暖かい日を選んで街に出よう。京都に行こう。こころにも休日が必要だ。
 暖かいところにいたい。



2014年11月10日  オンラインTVから、 オンラインミュージックへの距離
●抜歯後の炎症と痛みはいまだ納まらず、ハイエンドオーディオショーには1日も行けなかった。もともと心斎橋に出かけて行くだけで、ほとんど立ちっぱなしで、行って帰ってくるだけでほとんどへとへとになるような足と身体の状態では、ましておいておや。

●しかし、それどころじゃないかも。参りました。グーグル「クロームキャスト」に続きアマゾン「ファイアTVスティック」を米国で発売。HDMI端子に差し込むだけで、WiFi経由でインターネットから「ストリーミング」で映像を受信できる。「デュアルコアプロセッサーと1ギガバイトのRAMメモリーと8ギガバイトのストレージを内蔵しているので、フルハイビジョンの映画をスムーズに再生でき、手元のスマートフォン(スマホ)を使って一時停止や巻き戻し、字幕設定などができる。」
 この瞬間に日本や韓国でのスマートTV開発は蒸発したも同然で、アップルTVも同様だ。
 マイクロソフトの落日はさらに明らかだ。いまさらWindowsを一部のハードに限り無料化しても遅すぎる。MSがパナソニックに見えてくるから不思議だ。

●で、他人ごとだと思えますか?
 AVアンプやユニバーサル・プレーヤーのHDMI端子にこの種のスティックを差し込むだけで、ネットから最低でもCDクオリティの音楽をストリーミング再生できるとしたら、NYタイムズがトレンドだとする「オンラインミュージック」への距離は、技術的には凄く近づいたと思いませんか?
 変化の速度が速すぎて、質は見えない。書籍なんか書いていられない。

●トレンドだから良いとかはどうでも良いので、オーディオ的に見てプラスかどうか?ネットワーク/LANのノイズの海を超えて、高音質が取り出せるのかどうか?

●「フォーマットが同じだから、データが同じだから、世界中どこでも音も同じですよ、わはははは。」というようなアホな話のちょっとだけ違うバージョンをまた繰り返すのですか?でもこんどは相手の規模と質が違う。TPPで負けたりしたらやばいかも?

●僕らは健全に閉じていたって、何もおかしくない。「ガラパゴに何の問題がある?」と切り返すくらい、オーディオ業界は「音楽を高音質で」ということに立脚して立つべきだろうけど、無理なことは言っても意味がない。
 
 まあ、個人的にはどっちでも良いのですが、CDの買い漏れがないか急いで確認しようっと。



2014年1月7日  行けなかった......
●奥歯を抜いた後の痛みと腫れが長引いて、結局今日は心斎橋には行けずじまい。小伏さんの報告によると、立ち見も出る満席で「夢見る翼」をかけて下さったとのこと。

Rock DiskNextの記事はサイトランキングで1位になってます。さて首位をキープできますかどうか。



2014年1月6日  おかげさまでランキング2位
Rock DiskNextの記事は、5日午後9時の公開に関わらず、早くも同サイトのランキングで2位にいます。編集部によればTwitterの反応も上々ですので、ビュー数アップも期待できそうです。やはり読者のネットワークへの関心は高いようです。

●この兄弟企画の「LAN/ネットワークのオーディオ的使いこなし」(仮題)の記事も準備中で、その中にはLANパルストランス(アイソレーショントランス)や高機能ハブの選定と音質改善おための設定など、具体内容満載です。これらは今年度中に発売予定で開発中ののI/Oデータの「究極のオーディオ用NAS」などの機器にも組み込まれつつあるので、ようやくこれからがネットワーク・オーディオの本格的な使いこなし情報が発信され、具体化していく時代になって行くと思います。

●「ゼロイチ」だから全てのHDDで音が変わらない、とか言う「教えてGoo」などでの変なQAは姿を消しつつあるようです。もちろん言論もコメントも自由ですが、プラシーボエゴの無脳連中がアホ丸出しのちょっかいコメントをかけたりしたら、そのときはON爺怒り爆発で独立ページをアップして、過去のも含めて個々のコメントについてのアホさ加減と、どこがプラシーボか徹底的に死体解剖するからね。書くなら覚悟して書けよな。



2014年11月6日  「ちょっと一汗、オーディオ用NASを組んで高音質を目指そう」記事掲載
●久しぶりの記事です。I/O DATA の「RockDiskNextキットモデル」についての記事が共同通信の「Gandio+ PC Audio fanサイト」に掲載されました。
 いまだにNASをLANにつなげるHDDとしか考えておられない方が多いのは相変わらずで、ネットワークという「外海」に出て行くことがPCやユーザーにとってどれだけの負担になるわけですが、その交通整理をしたいという考え方です。単なる紹介でなく、担当者氏ともかなり連絡を取り合った上で、使いこなしについてマニュアル以外の補足をかなり盛り込み、ファイルサーバ機能などの説明も盛り込んでいます。
 もうとっくに解決している「Windowsミキサーの回避」などという古い内容のお勉強ネタ記事よりはよほど役に立つと思います。

●実はこの記事だけでは完結していない面があります。
 まずは「はじめてのネットワークオーディオ」に掲載されたメーカー取材記事「これも知っておきたいネットワークオーディオの深イイ話」です。「音にこだわる人のためのLAN構成とネットワークの基礎知識」という副題が示すように、実はオーディオ的観点からLAN/ネットワークを評価・整理したはじめての記事と言える内容です。4ページですが、4ページで\1,080は少しお高いものの、ネットワークオーディオに真剣に取り組んでおられる方には値打ちはあると思いますので是非お買い求め下さい。
 皆さんからリクエストがあれば、サイトに転載される可能性もあるので、ご希望の向きには編集部へのメールよろしく。

もうひとつが、編集部と企画を進めている次の記事です。「LAN/ネットワークの使いこなし」というコンセプトで、インタビューにもあった数々のLAN/ネットワークの問題点をオーディオ的に改善していく内容です。
 ノイズ対策にはLANケーブル間にBaaskeやNoratelなどのLANアイソレーショントランス(パルストランス)を入れるとか、ハブには何がお勧めかどう設定して音質改善するか、などという具体的知識を予定しています。

実は、これらが三位一体のようにユーザーに消化されて、ネットワークオーディオが音質的に優れた効果的な物になるわけです。

 
●その具体的な例証が音展でも展示されたI/O DATA の新型オーディ用NASです。「14年度内発売予定。
<音展>アイ・オー、“ハイレゾのため究極設計”のオーディオNAS参考出展 - 20万円以下予定」


 SFORZATOの小俣さんに聞くと、モックアップで音は出ていなかったとのことですが、増税前の今年度内に発売予定だそうです。
 「LANポートはネットワーク接続用とオーディオプレーヤー用に2系統搭載しており、それぞれに信号精度を向上させるLANパルストランスも採用する。」
 このネットワーク・プレーヤーとNAS直結も余計なルートをスルーする方法ですが、LANパルストランスがつまりはLANアイソレーショントランスになるわけで、この新型NASはその中に使いこなし要素を製品化していってる訳です。そういう要素を盛り込んでいることをご理解いただけたら、単に高価なだけではないとご理解いただけるでしょうし、腕に覚えのある方はご自宅のLANにこれらの要素を盛り込めばいいわけです。
 小俣さんもアイソレーショントランスの効果は凄いと言っておられたので、ようやくオーディオ界でもNASの認識や設定という基本問題を越えて、オーディオ的観点からのネットワークへの 取り組みがなされるようになったと言うことですね。
 ふう。



2014年11月5日  光学ドライブ問題は思わぬ形で決着した。
●奥歯を抜歯して、痛みに耐えながら気を紛らわすために書いてます。
 明後日のハイエンドショウ、傅さんの顔見にいけるやろか。

●光学ドライブ問題は思わぬ形で決着した。ケースとドライブが別で、しかもケース側にはいろんなソフトウェアツールが付属しているけれども、全てと言っていいくらいハードディスク用で光学ドライブには使えず、しかも実際に動作させて音質も確認したが、USB3.0は微妙に気になるところもあり今ひとつ気が乗らない。もう組み合わせが限られている悲しさでもある。
 で以前日立GSTさんに取材した時には「HDD内部の速度は40メガぐらいとお考えください。」と聞いていたので、これをメガバイトベースとして40MBpsと理解すれば、これまでPlextor PX-760AをFirewire400で使っていたのも結構バランスの良い取り合わせだと思う。じゃあUSB2.0でもいいじゃん、ドライブとケース一体型の光学ドライブないかなあ、と考えたら手元にありました。

Pioneer BDR-XU02Jで、雑誌記事でも推奨していた通りRatoc Systemの5V高音質スイッチングアダプタRAL-AC05-03のCDプラグを付け替えて外部電源にしていたが、今回スイッチングの強化用にAC100Vを直接整流して140Vで給電する「パワータップ」を製作した。金田式でも定番となりつつあるSiC(シリコンカーバイド)ショットキーバリアダイオードの電流規格やメーカー違いのブリッジ2組をパラにして、群遅延のずれで電流零ポイントを打ち消す疑似出川式にして、コンデンサには虎の子のBlack Gate VK 150micro/350Vを3個投入した。



●最新のXU03JもあってUSB3.0も使えるじゃないか、と言われる向きもあろう。勿論です。
 まあ、手元にあるもので、と言うことであります。

●で、XU02J+Ratocアダプタ+パワータップの音質なかなか良いじゃないか、と悦に入っていたら、昔オリオスペックから売り出していたStardomのドライブケースが出て来た。PX-760Aと同時代の製品で、IDE>Firewire800/USB2.0の出力だ。ダメ元とPX-760Aを入れて試したら、これが実に快調に動いてくれる。しかも電源はPremium2用に製作した自作の豪華絢爛4トランス電源がそのまま使える。音が良いのも当然で、PX-760Aをメインに、BDR-XU02Jをサブに使う事に相成った次第です。

●すっかり忘れていたのであまり大きな事は言えないのだが、同時代の製品でないとマッチしないのはPCがらみの通例で、まあこの辺りが蓄積の厚さの有り難いところですわ、などと買いておこう。同時に光学ドライブで高音質を求める難しさの具体例としてご理解願いたい。
 しかし、まあ良かった、良かった。ホッ。



2014年11月1日  SFORZATOの普及機とクロック、そしてフラッグシップ機
●最近クロックに挑戦するという人たちが少しずつだが増えているようで、サイトにもそういうページを作ってもと思うけれども、なにせ時間がない。
 光学ドライブやなにやら、結構時間を取られているし、明日は母のグループホームの文化祭で、一家総出でそっと繰り出す予定だ。喘息は治まり気味だが、体調は相変わらず低空飛行だ。

●実はこの1ヶ月近く、SFORZATOのネットワーク・プレーヤー「DSP-05」10MHzクロック「PMC-03」をお借りして、何組かの客様に聴いていただいたりしていた。388,000 (税別)と288,000 (税別)という、どちらもこなれた価格で、良い音の普及を心がけている小俣さんの心意気がうかがえる製品である。

●DSP-05は写真でお分かりのように電源内蔵のワンボディ機だ。
 電源が結構大きいのと、価格を抑えるのとの両方で随分と苦労されたかと思う。音質的にはやや小ぶりだが、DFORZATOに共通するしなや且つしっかりとした音で、特に音場の広がり方はさすがにSFORZATO製品だと思わせてくれる。
 一般のご家庭で長期にわたって使えるベーシックなプレーヤーとしてお勧めできるものだ。

●クロックPMC-03は50オームの10MHz出力だが、SFORZATOの各プレーヤーにはジェネレーター抜きで直接入力できる。その場合は音源のサンプリング周波数に合わせて自動的に切り替わるので、便利この上ない。ワイスMAN301でもこうは行かない。

 で、十分に暖機(筆者の経験では概ね3日、できれば1週間)したPMC-03を入力すると、DSP-05は彫りが深くなって深さが増してくる。DSP-05はグレードアップとしてPMC-03を織り込むのが自然な姿だろう。

 ただ10MHzといっても、高価なアトミック級の超高精度水晶とかルビに比べると、音質的に見てやはり届かないところがある。しかし、音質改善という点ではこの価格からみても余りあるものがあり、サイズや使い勝手、導入の楽なところから見ても、良い製品が登場してくれたと思う。

●で、DSP-05とPMC-03の価格を合計すると、DSP-03とほぼ見合うし、サイズ的にも全く同じなので、お客様からは、DSP-03とどちらを考えるべきか、ということを共通して聴かれたのが興味深かった。
 これはご予算や今後のグレードアッププランなど個々のご判断だと思うが、ここへ来てビッグニュースが飛び込んできて、「DSP-01」が登場するとのことだ。トラポには既に「DST-01」があったので、いずれフラッグシップのプレーヤーが登場するかもと製品番号から推測していたが、ヘッドフォン祭でDSP-01をプロトタイプだが初披露されたとのことだ。超弩級クロック「PMC-01BVA」とのセットで好評を博したとのことだが、うまくいけば大阪のオーディオセッションにも持ってきた下さるとのことだ。

 ラインナップの完成もめでたいが、特にフラッグシップ機の音質には大いに期待致したい。



2014年10月30日  光学ドライブとケース(動作確認編)
●聞くところによると、ワオン・レコードの小伏さんも必要に迫られてPioneer BDR-S09Jを買われたそうで、光学ドライブについては相も変わらず悩みが深い。もともと情報そのものが少ないと思うので、情報発信しときます。

●光学ドライブと5inchドライブケースを巡るてんわんやもようやく一段落しつつある。ケースに故障しているものがあったりして、多数組み合わせの中で特定するのに時間がかかった事もあるが、なにせ市販されている5インチドライブ外付けケースがほとんどなく、使える・良いと思えるのはさらに少ない。僕の見るところRatoc RS-EC5-U3秋葉館の林檎派RGH5M3くらいしかないので、買い求めたり手持ちのケースもかき集めて、Pioneer BDR-S09Jをはじめ、Plextor 760Aもあきらめきれないので、総当たりで動作確認しに行った。

●動作確認と言ってもデスクトップPC(ASRock Z77E-ITX / Windows7 & UbuntuStudio11.10/14.04)に接続して、DVD上のデータをWindowsファイルサーバにちゃんとトランスファできるかどうかだけで、ここで認識が不安定だったりするものはオミットして、その後音質確認する。



●秋葉館の「林檎派RGH5M3」はSATAからFirewireとUSB3.0/2.0出力なのだが、そこにはサンワサプライの「IDE-SATA変換アダプタ TK-AD40SATAD2」を経由してPlextor 760Aを取り付ける。また、このケースには、外部電源なので電源を大幅に強化できると言うメリットもある。
 Macの古いものにも対応を心がけているだけあって、FirewireでのPlextorとの相性に期待しつつ、結局PCの2つのPCIe Firewireポート(LSI/Ageere,TI)でのドライバーまで含めて動作確認しなければならなかった。結局はこれが認識されたりされなかったり1曲ごとしか移せなかったりで、結局プレクは常用としてはあきらめました
 Pioneer S09JもFirewire800で出力できたら、と言う思いもあって確かめたが、これがまたFirewire/USB(3.0,2.0)を含めて全く認識されない。ドライブとケースの相性問題は相変わらずあって、選択肢が少ないからさらにシビアになる。
 まあこのケースはサンワサプライのアダプタと合わせてIDEハードディスクで相当使えそうなので、そっち用にしよう。

●結局Pioneer S09JはRatoc RS-EC5-U3からのUSB3.0出力で問題なくスムースに動作したので、これを使う事にして残るは音質的にUSB3.0か2.0か、ケーブルをどうするかだけだ。ケーブルはUSB3.0に安心して使えるWireworld Starlightを注文したので、音質評価はこれが届いてからのことにしよう。



2014年10月28日  ダウンロードビジネスの行方、ストリーミングビジネスの行方
Audio Streamによれば、AppleのiTunesの音楽売り上げが前年比14%低下したそうで、一方ストリーミングは「up, up」とのこと。

 先日のNYタイムズの記事と照らし合わせると、面白いと思います。

●ちなみに何回も言いますが、良い音源としてのCD確保は数量だけではなく音質的に見ても、今のうちでしょう。



2014年10月27日  梅は匂いよ
●土曜日は40年ぶりの大学ゼミの同窓会。恩師にもご参加いただき、既に鬼籍に入った2人を除いて全員が三宮に集合した。それにしても40年ぶりでもスムースに話ができるという点で、やはり共有した時間がある仲は強いものだ。

●僕を除いてみな会社勤めなので、日本的組織の中でもまれてきた様子がうかがえる。体調的にはいろいろな問題を皆抱えており、それでも元気そうな様子で、過ぎてきた人生も違うので、いろいろな話が聞けたのは面白かった。
 やはり人は一人では生きていけないものなのだと、改めて感じる。

「梅は匂いよ、花は紅、人は心。」(閑吟集)

p.s.ブラウザによってホームページビルダーの表示がおかしくなってます。もう1年分も終わりに近づいているので、このまま行きます。済みません。



2014年10月24日  とほほ
●悠々自適などと大見得を切りましたが、知人に助けてもらったPlextorのDVDドライブPX-760Aが不調になってしまいました。これまでのIDE-Firewireアダプタでは認識されたりされなかったりで、手持ちのIDE対応ケースを片っ端から試しましたが、かろうじてRatoc Systemの古いFirewire出力ケースで、様子見そろそろで動く状態でしばしばフリーズに近い状態になります。とほほ。
 面白いことにRatoc SystemのUSB出力ケースではUnknown Feviceとしてしか認識されず、動作もしません。

●そこで腹を決めてPioneer BDR-S09Jアマゾンに注文しました。詳しくは追ってご報告。
  あ、用途はHiRes/HiDefのDVD-Rなどから音源ファイルをWindowsファイルサーバにトランスファするだけなんですが、ええい面倒くさいけど言っちまおう、ドライブによってトランスファーするだけでも微妙に音質は違うのですね。うちの環境で聴くと、良いドライブの音は微妙に良い。他の環境では知りませんけど。

●PCの流れを見ていると、音楽CD/CD-ROMはもう旧石器時代のレガシーメディアになっていることがよく分かる。データ量は少ないし、音楽はちゃんと再生できてるし、まあ光学ドライブの端っこに何とか入れといてやるから、くらいの話です。
 ところがNYタイムスが呆れたくらい日本は世界のCD消費大国。当然それが最大の音楽資産なのだけれども、PC用に再生できるまともな光学ドライブがほとんどない。これは本当はPCオーディオの危機なのだが、だれもそんなこと考えない。

昔グーグルの日本代表が①今時、コンピュータまたはその周辺部品を5年以上使うことはあり得ない。②よって、5年以上保つコンピュータまたはその周辺部品は「過剰品質」である、と言ったことがある。
 そういう機器の中から音が良くて、質が良くて、保ちが良いものを選び出して使いこなすのが、オーディオ側の知見というものだろう。
 ほとんど確立されていないのが実態だが。


なかでも最も危ういのが光学ドライブなのだが、なぜ、どのように危ないのか、気がついている人がろくにいない、という事の方がさらにもっと危ういのかもしれない。

●コンピュータ畑の人と話をしていると、音楽再生を分かっている自身満々なのだけれど、実施に楽器や音楽やその美しい音、いい音については何も知らない人が圧倒的に多数だ。
 この6月の早稲田大学の1ビット研究会でも参加者が凄く多かったのだけれど、大半はDSDを「理解」しようとしにきた、あるいは新しい分野の勉強をするために来たPC・家電系のジャーナリストまたはその卵のような感じだった。で、結局話は難しいし、大半は収穫なしに帰ったのではないかと思う。

オーディオは道楽だから、道楽の極みについて、「美しい音」あるいは「美味しい音」というのがある。音楽表現とセットなので難しいが、「ああこのヴァイオリンの泣きの音、このフリューゲルホーンの悲しいくらいの柔らかな音、のなんと美味しい事か!」というような感慨が持てるかどうかだ。もちろんいい音はたくさんあるので、一つだけではない。
 それはこれまでの人生で五感をどれだけフルに使ってきたか、贅沢してきたか、ということの結果、つまりはほとんど経験値なのだ。こういう話が通じなくなってきているので、光学ドライブのことなど誰も真剣には考えないのだろう。

 ベコベコ・ドライブ、ブンブン・ドライブ。ベコベコな音、ブンブンな音。不味い音にはため息しか出ない。



2014年10月17日  悠々自適
●先日送った原稿について編集部からメールがあり、これで進行しますとのことで久しぶりの記事になりそうです。お客様が相次いでこられているので、音展など東京行きは見送りました。

●今年はTIASが年1回になった年だが、昨年くらいからオーディオ関係執筆者が書くPCオーディオ誌は結構減っており、仕事の場は狭まりつつある。かわりに無署名のおそらくはPC・家電系ライターがまとめたPCオーディオ入門MOOKが、あれこれ書店に溢れている。

●本来PCやネットワークのオーディオ的使いこなしを深めていこうとすれば、皮肉なことにPCやネットワークの知識やスキルを深め蓄えて、実際にそれで音を出して、再現性の高い事象を中心にオーディオ的観点から音質重視でそれを整理して行かなくてはいけない。ところがそういうことはおびただしく時間がかかり、かつ機材やお金を出してくれるメーカーなどは全くない。つまりその間は収入が途絶える。
 そこで勝手知ったる製品紹介記事に走るわけだ。そうすると、誌面全体はカタログ化して読み物記事はほとんどない、という状態になる。

●そういう誌面を見て「これなら俺たちにも書ける」とPC・家電系の出版社やライターが初心者向けMOOKに乗り出したわけでしょうね。先行例があるから安上がりにすぐできる。しかも「一生使えるオーディオ」とか、こちらも同様良いことしか書かない・書けない。で、音が良い理由は「ハイレゾだから」。
 まあどっちもどっちですが、こちらの方は現状追認型でオーディオ的観点は薄い。

●なので、PCオーディオ中級者やネットワークオーディオ中級者が欲しい使いこなし記事は、いつまでたっても出てこない。将来への展望のような、読者にとって指針となる記事も期待できない。
 かくてPC/ネットワークオーディオ・ジャーナリズムの「コモディティ化」は一足先に急速に進行して、それがメディアが減っていく引き金にもなっている。

●一方でデジタルオーディオは事の善し悪しに関係なくIT化の波に飲み込まれてしまっているので、世界的には大きなうねりがいくつも進行しつつある。
 これは「変化」といううねりの波なので、ずっと対応し続けなければしょうがない、という厄介な代物だ。対応の方策は一応あるけれども、問題はそのためのスキルと態勢を当該のメーカーさんなりが備えているかどうかで、このあたりで差がつきそうです。

●面白いことにNYタイムスが「訳分からん」と書いたくらい、日本は音楽メディア的には世界的に見ても特異な国なので、それが幸いするかもしれない。もちろん音楽産業は世界的に見ても劣化しつつあるので、流通するメディアは玉石混交だが、まだ選択の余地があるというのは良いことだ。

●先の話は想定したところで展開はきっちり読めないので、ユーザーは(できるだけ)右往左往せずに、自分がなにを聴きたいのか、自分のスタイルを見据えて、耳で聞いた経験知を着実に蓄えて行くしかないと思います。つまりオーディオの王道に戻ることです。ただネットワークについては勉強しておいた方が良い。

 理屈?スペック?お次はDSD256やDSD512でっせ。あるいは384KHzどころか768KHzでっせ。新しいものを褒めあげるしかネタがないのは一緒やさかい、ご苦労さんですなあ。んなもん、ころころ変わっていくのに、そんなもんを支えにしていたらいずれ転けますがな。

 僕?もうばっちり態勢はできあがってるし、遊びのネタは死ぬまでほぼ不自由せんやろうね。悠々自適です。後は、将来につながると思える大事なものにフォーカスを当てたい。



2014年10月14日  けもの道
●クロックジェネレーターというのは本来は業務用機器で、録音現場のプロつまり分かった人に売る商材である。
 だから美々しいパンフレットはないし、プロはこれまでの経験と、展示会や仲間内の口コミ情報を頼りに機種を決める。パッケージも簡素で、手取り足取りの取説もなく使い始める。

●そういうマーケットが主力なので、コンシュマー向けの製品は至って少なく、あってもかなり独占的で、秘密めかした最後の「奥義」みたいに扱ったりする。そして訳の分からないお金持ちに、いわばブランド名を信頼してどっとお金をつぎ込ませると言う商法だ。
 まともな説明は、SFORZATOからはじめて聴いたような気さえする。

●なので、文句を言っても何にもならない。もちろんコンシュマーでも例えばOCXなどはかなりの人が使っているので、そういうひとはオーディオは音を聞いてみなくちゃ分からないし、まずは使って見ました、と言う人たちだ。
 そういうふうに自分で出かけて行って音も聴いて、情報を様々なルートで集め、リスクを乗り越えて自力更生でやっていく意思の持てない方は、おやめになったほうが良いというのが正直なところだ。道楽だし。

●ほとんどのUSB DACにはクロック入力端子がない、と文句を言われるなら、大半が業務用だがFirewireオーディオインターフェースを使えば、クロック入力端子かデジタル入力端子への同期機能がついている。
 WindowsならPCIeを使えば良いし、Macならサンダーボルト経由でFirewireが使えるし、第一USBよりもよほど音質は良い。僕も個人的にはUSBはHDDくらいにしか使っていない。

●大体が僕のやっていることの大半は、クロックにせよ電源にせよPCやLAN対策にせよ、あまり、あるいはほとんど人がオーディオ的に本格的に取り組んでいない分野だ。それもかなり高い線を狙っているから、こういうのはいわゆる「けもの道」で至ってわかりにくく、自腹で買って試して聴いて、駄目なものは捨てるか人にあげたりして、そのうえで役に立ちそうな基本情報だけを今後のために流しておく、と言うことになる。
 全部は書けないし、第一手を動かして・実際に聴かなければ・分からないことばかりなので、そういうノウハウの大半は墓場に持っていくことになるし、それで良いと思っている。

●世の中は全てが至れり尽くせりに商品化されたり、道が開かれているわけではない。ネット上に全ての情報が転がっているわけでもない。第一言葉では分からないことが多いので、自腹で聴いて確認するしかないことも多い。お覚悟ありたい。



2014年10月13日  社会復帰しました。
●今年は変な天候で、おまけに加齢もあるようで季節の変わり目の喘息などで体調を崩して、この半月近く静かに生存していました。

●昨日は久しぶりにお客様を迎えて、なかなかいい1日だったので、気持ちの上でも少し緩やかになれたのがありがたい。
 来ないでもいい台風まで来てしまったのには参ったけれど。

雑誌で提唱してようやく5年目の喜ばしい知らせ
 「パイオニアがネットワークプレーヤー2機種を発表 DSD5.6MHz再生や外付けHDD対応」
 DSDなどはどちらでも良いので、音源ストレージの選択肢の増加、つまり外付けUSB HDDを使えるようになったことがで最大の朗報だ。上位機種も出たし、これが売り上げ増・ユーザー増につながってくれればと願ってやまない。

●あちこちからクロックがらみの相談が来ていて、メディアもショップも全く使いこなすための情報を持っていないのが丸わかりだ。普段使ってないし、何も知らないから、何も分からない。店を頼っておんぶにだっこで導入したいなら、クロックジェネレーターを使うのは永久にあきらめた方が良い。

●何度も言いますが、Antelope OCXなんて安いものです。これだけでも音質は改善する方向に行くのだから、メリットは十分にある。
 ただ電源オンしてからロック表示のLEDは比較的速く点灯するけれども、すぐには音は変わらないのでこの時点で「役に立たない。」と文句を言う人は、要するに水晶が温度変化に敏感なため、恒温槽に入れてオーブンで温めて安定状態に持っていくものだ、というクロックの基本を分かっていないのだ。最低でも1日は暖機してから、基本は3日以上暖機してから音質を評価すべきものだ。
 それと精緻さと安定感は高まるが、別世界のそよ風がどっと吹いてくるわけではないので、10万円あまりで劇的に変わると思い込むのは欲をかきすぎというものです。
 もちろん常時通電。電源の質には大変にクリティカル。第一、業務用機器ですから

●いずれにしてもこの程度をちゃんと使いこなせなければ、アトミックなど夢のまた夢で止めたほうがいい。
 なにを買うにもするにもリスクはあります。それはオーナーが負うべきリスクなので、道楽とはそういうものでしょう。これまで録音現場のエンジニア達も皆そうして来たので、ご自分の判断に基づいて飛び込んでみて下さい。
 念のため、責任とリスクはあなたにあります。自覚よろしく。判断つかなければさっさとおやめ下さい。



●現在これを暖機しつつ試聴しています。SFORZATOの10MHzマスタークロック「PMC-03」です。さてこれを一体型プレーヤー「DSP-05」と組み合わせるとどうなるか?Antelope OCXの10MHzのBNC入力に加えるとどうなるか?
  乞うご期待。



2014年10月1日  「澄明な秋」
「澄明な秋」  トラークル

強力にこうして年は終わる、
金いろの葡萄と園々の実りとともに。
まわりにつづく森の不思議な沈黙。
孤独な者はそれを友とする。

そのとき農夫は言う、すべてはよしと。
夕べの鐘はながく、かすかに
聴く者にはやはりよろこびをはなむけする。
旅をゆく鳥の一列が挨拶を置くって過ぎる。

これは愛の柔和な季節だ。
小舟に乗って青い流れを下れば
なんと美しく形象は形象につらなることか―――
それはやすらぎと沈黙のうちに沈んでゆく。


  (手塚富雄 訳)



2014年9月30日  「秋の日」
「秋の日」 R.M.リルケ

主よ、成就の時です。夏はまことに偉大でした。
あなたの影を日時計によこたえてください。
そして広野にゆたかな風を解き放ってください。

年の最後の果実達に満ちよと命じて下さい、
かれらになお二日の南国めく日をお与え下さい、
かれらを完成にうながし最後の甘やかさを
重い葡萄の実に加えてください。

いま家を持たない者はもはや家を建てることはありません。
いま独りぼっちでいる者はいつまでも独りぼっちのままでしょう、
夜は眠りをもたず 本を読み 長い手紙をかくでしょう、
そして並木大路を 落ち着きなく
往ったり来たりするでしょう、樹々の葉のとびちるなかを。


 (手塚富夫 訳)



2014年9月30日  デジタルデータの音質は実装回路のクロックの品質に絶対的に依存する
●Wve File Playerで有名なK'sさんが牛嶋としこさんの新しいCDアルバム 「My Favorite Shouwa Standard (副題:ジャズで聴く昭和歌謡) 」の録音を終えて、編集中だそうだ。
 以前筆者がGaudio-PC Audio fanサイトで「音楽が生まれる現場の“智慧”」として「(1)ジャズボーカル録音のSACD/CD化までを追う」「(2) 完成したSACDはライブを彷彿とさせるノリの良さ」の2回にわたってご紹介したのと、同じスタジオでほとんど同じミュージシャンによる、こんどはボーナスCD付き「幅広い再生装置でお聴きいただける音質に仕上げた【通常版】と、自然な佇まいのストレートな音を狙った【特別版】」だそうだ。
 追って詳報します。

●我が家のアトミック級クロックの電源回路は、秋月電子の「実験室用 精密級/定電圧安定化電源」をベースとしたもので、クラシックと言えばクラシックながら、よくよく見ればほぼ今時なディスクリート電源といえる構成だ。違うところと言えば、もちろんコンデンサや抵抗、ポテンショメーターなどパーツは最上級をおごっており、秋月のプリント基板は使わず、基板にポストを立てるなどしてハードワイアリングで仕上げていることと、そして定電圧ダイオードよりもー20dB程度ローノイズとなるLinear Technologyの「LM329 - 6.9V 高精度電圧リファレンス」を基準電圧に使っていることだ。
 こちらのクロックで使われているのを参考に導入したが、いやはや音質的な変化はすさまじい。-120~130dBというような近傍位相ノイズを問題にするくらいだから、電源は決定的に重要で、クロックというのは電源の音を聴いているようなものだからだ。

ブラッド・メルドー・トリオの「Art of Trio 2: Live at the Village Vanguard」の2曲目「Young and Foolish」では最初の数分間ブラッドのピアノのソロが左chで続く。だがライブでもあり、その間も右chからはグラスに氷を折れる音など会場ノイズや雰囲気はひしひしと出てくる。
 クロックの品位がぐんと上がると、会場の空気の動きもちゃんと出てくるのだ。

 諸君は包囲されている。逃げ道はない。データだけが音質を決定するわけではない。デジタルデータの音質はDA変換前にデジタル領域で同期させる実装回路のクロックの品質に絶対的に依存するのだ。これが分からんプラシーボ・エゴのアホどもは豆腐の角に頭ぶつけていてもうてんか。



2014年9月26日  取り急ぎクロック(この項終わり)
●先日のワイスMAN301の外部クロック同期の記事は結構インパクトがあったみたいで、何人かの人たちから相談が来たのですが、みなさんせっかちな人ばかりで、放っておくと事情も知らぬままにあらぬ方へ走りかないので、取り急ぎ書いています。
 301オーナーの方もいたのですが、301の場合はGolden DACボードへの交換は2014年内限定であるので、こちらが最優先です。30周年謝恩価格としか考えられないこなれた価格であり、これほどaddictiveに凄い音質のDACをこの価格では絶対に実現できないだろう、ということです。

●まあ道楽ですから何でもありですが、クロックが最終到達点だと聴きもせずに決め込むのはあまり健全とは言えないのではないでしょうか?
 将来アトミック10MHzを使うことも想定して、10MHz入力のあるリーズナブルな価格のワードクロック出力のジェネレーターなどお求めになって、まずは使って聴いてみて慣れて下さいというのが出発点だと思います。

 とりあえずは数も売れて価格もこなれているAntelope OCXあたりですか。ただし192KHzまでしか使えませんので、ご承知置きを。でも十分でしょ?

☆両者の関係は理解されてますね?僕がPCオーディオfanに書いて編集部がコンパクトにまとめた「ベーシックマニュアル」がGaudio +PCオーディオfanサイトにあるので、そちらをご参照下さい。


「07 クロックは何を選びどう使うか(オプション)」

●ちなみにアトミックやら何やらよう分からんので1台だけで、ということなら僕の聴いたことのある範囲で素晴らしかったのは、業務用機器ですが英Audio & Design Readingの「Synchro Genious HD+」です。残念ながらタイムロードの取り扱いは終了しましたが、これは澄み渡った美しい音のクロック・ジェネレーターです。

 そしてまだ聴いたことがないのですが、評判が高いGrim Audio CC1も気になるところで、機会があれば是非聴いてみたいですね。

●10MHzアトミックについては、試聴してみたい機器があるので、また結果をご報告できると思います。
 まずはワードクロックのジェネレーターから始められるのがよろしいかと。
 ご健闘を祈ります。お達者で。

(この項終わり)



2014年9月25日  静かに行く者は、遠くまで行く。
またあんたの話をしなければならないみたいだよ、マサやん。
 結局、あんたが目指した高品位なアトミック級クロック(水晶)をオーディオ製品に内蔵して最短距離で最高の音質を実現すると言うことも、クロックの普及そのものもほとんど実現していない。オーディオジャーナリズムの関係者で日常的にアトミック級も含めて使っているのは、相変わらず僕一人だけだ。
 だから情報も全然発信されないし、ショップは何も知らないし、ちゃんとした使いこなしの上でちゃんとした音を聞ける場所はほとんどないし、これから導入しようという人たちは業務用機器の情報を集めたり手探りで進むしかないような状況が依然続いている。きっと「しょうがねえなあ。」とあの世で笑ってるんだろうなあ。


もう10年以上前になるだろうか、当時は毎週開かれていたあるショップのイベントで僕は彼と出会った。当時話題になっていたCDプレーヤーの内蔵クロックをより高品位なものに換装するというサービスを展開していた彼は音質を確認して欲しかったのだろう、僕の家に足繁く来るようになり、深夜のイタ飯屋台で熱い議論を交わすようになり、僕らは友人になっていった。

●彼が言い続けていたことを、いま風の表現も加えて整理すると、

○デジタルオーディオのデータはクロック信号に同期して取り出されて、初めて実際の時間軸を持つ音楽信号データとしてCDプレーヤー内部で扱えるようになり、USB DACなどの内部でもDA変換できる状態になる。
 つまり本来のデジタル音楽信号の半分である振幅軸データしかCDなどのデータには含まれていないので、引き裂かれた残りの半身である時間軸データ、つまりクロックとどう出会えるかが、そのデータの音質を決定づける。
 (つまり実装機器によって与えられるクロックの質にデータの再生音質は決定的に依存するので、データだけで音質が決定づけられるわけではない。ちなみに、これはDA変換前なのでまだデジタル領域の話である。)

○ルビジウムは長期安定性あるいは長期精度、つまり発信周波数の安定性ではアトミック級水晶よりも性能は上だが、それは何万年に何秒しか狂わないとかいう「時計」や「測定器」として有用なスペックである。実際に音が鳴っていく瞬間瞬間にクロック信号がどれだけ安定しているかという短期安定性の方がオーディオの音質を決定づけるのにずっと重要だ。アトミック級水晶の方が短期安定性ではルビジウムより優れており、音質も落ち着いている。

○なので、長期安定性データの何ppmと言うものは音質面からは、あまり意味がない。ただ、長期安定性の品位が高いと、結果的に短期安定性も良いという強い相関関係があるので、結果オーライになっている。

○安定性ということは時間軸では要するに揺らぎである「ジッター」であり、それを周波数軸で表現すると「位相ノイズ」になる。位相ノイズという点ではルビジウムはレベルは低いけれども質の良くないノイズが出ており、ハイファイ的・オーディオ的な快感はあるにせよ、長時間落ち着いて聴くには適さない傾向がある。アトミック級水晶の方が位相ノイズ特性は優れており、音質的にもこちらの方が自然な音で、長期にわたるリスニングには向いている。

【注】このサイトをじっくりと読んで下さい。ようやく事実を明言される方が現れて、ほっとしました。

○外付けのクロック同期はケーブルや接点など余計な要素を抱え込むので、本来は機器を設計する当初から高品位クロックを内蔵して最短距離でクロック信号を供給する方が良い。電源やスペースにもよるが機器によっては後からでも組み込めるので、より高品位な音をユーザーに提供することが望ましい。

●アトミック級水晶の決定版として彼がそのとき見せてくれたのがStanfordのSC-10だった。それを楽しみにしているさなかに、彼はあっという間にガンで亡くなってしまった。僕は技術系でもないので、彼の志を継ぐなんてとてもできないが、それでもやはり彼の後を追うように僕はデジタルに深入りするようになった。

●まずはAntelope/OCXでオルフェウスにワードクロックを供給して鳴らしながら、ケーブルや電源周りなどを整えて、アトミック級水晶の導入を目指したが、ハイエンド・クロックのメーカーはスイスに2社、アメリカに1社あって、スイスの2社の国内代理店は研究機関などとしか取引せず、個人に売ってくれたのは米Stanfordだけだった。そしてその代理店の担当者とSC-10購入の話を始めると、僕は国内で2番目の購入者であり、実は亡き友人が日本国内で最初の購入者だった。担当者氏も僕も「え~。」と驚きながら彼の話をして随分と盛り上がってしまったのは、彼の結ぶ縁があったのだとそのとき強く感じたことを、今でもよく覚えている。

●そのあたりは先日お示しした過去ログに書いている。実はあれも主なものをひょいひょいと拾い出したけれども、取りこぼしもあるかも知れないし、その前史みたいなところも大事なので、まずはじっくりと読んでイメージを持っていただきたい。

クロックというのは導入してすぐに音が激変するようなモノでもなければ、ぽんと置いてそれだけで性能を発揮するような機器ではないのだ。
 結果を急ぐ人は、結局はいい音は得られないことが多い。
  実際に音質が時間とともにどのように変化していくか、クロック周りの使いこなしにはどのような事が必要なのか、これは落ち着いて勉強しながら経験を蓄積していただくほかはないと思うので、そういう意思を持った方にお勧めしたい。
 ひょっとしてクロックというのは、大人のための、ゆっくりと長く愉しめるオーディオ的なスロードラッグなのかも知れません。(笑)

 「静かに行く者は、遠くまで行く。」
                (ローマの古い格言)



2014年9月24日  「一輪の薔薇は全ての薔薇」
●昨日のMacBook Aireの記事を見て、昨夜は久しぶりに東京の友人が元気に電話してきてくれてとても嬉しかった。少し気になっていたSiCダイオードと出川式電源の比較試聴をやったそうで、これも面白そうな話だった。まあダチがいればネタは出てくるもんです。
 お互い元気で遊んでいられるのが何よりだ。

●音楽と詩の話。
 クラシック界でちょい渋めで格好良いおじさんのトップだと思っているのがフランスのヴィオラ奏者ジェラール・コセだ。
 第一楽器がヴィオラというのが渋いではないですか。ブリジット・アングレールとやっている仏Mirare盤の小品集「Works of Viola & Piano」では出だしのグラズノフ「エレジー」からして泣かせる。キム・カシュカシャンの名盤ともまた違う熱いひびきで素晴らしい。

●そしてバッハの「Suites de danses」2枚組。俳優ローラン・タルジェフがフランス語で朗読するリルケの詩の間にジェラールおじさんが無伴奏チェロをヴィオラで弾く。素晴らしい演奏。
 リルケの訳詩集は何冊かあるか、元がどれだか探すのが大変だ。「ドゥイノの悲歌」の第9の悲歌なんて読みもしていない。意味わかんないとTIASで頑張っている傅さんに怒られそうだ。まあ秋の夜長を過ごすネタとしては申し分ない。

 いずれもあるうちに確保よろしく。



2014年9月23日  速度と音質的バランス
●今日は原稿を一つ仕上げたので、その傍らこんな準備をしていました。



 写真は、普段の常用マシンの1つである MacBook Air/Huswellと Thunderbolt接続用の「AKiTiO THUNDER DOCK 」とSonnetなど各種Thunderbolt接続用アダプタやケーブル、ExpressCard34です。

 要はこれでWindowsファイルサーバ音源をLANから取り入れて、MacBook Air/Audirvana PlusからFirewireでPrismSound Orpheusに出力して聴こう、という訳です。
 MacBook AirのThunderboltポートは1つなので、こちらをFirewireにあてると、LANはUSB経由になりこれでもHiFi的な快感があって、非常に良いのですが、せっかくのGigabit LANをできれば活かしたい。
 そのため手持ちの BelkinのThunderbolt Express Docでだいぶん前に聴いてみたのですが、これだとどうもノイジーで落ち着いて聴けない。

 いずれにせよもう少し落ち着いた音にしたい。ところがBelkinはどうも分解するのが手強い。それでいろいろ調べてAKiTiO THUNDER DOCKにした訳です。これだと下側のパネルをネジ止めしてるので、はずしてEMI電磁波ノイズ防止シートを貼ることができるからです。熱的な逃げ道などや熱が出そうな電源周りは回避して、本体が熱くならないように「シートの張り込みに成功。ただしLANはAppleのThunderbolt-Gigabit LANアダプタに頼ります。

 またAKiTiO付属のThunderboltケーブルは細くて柔らかいのですが、Belkinで試すと体感的に明らかにインターネットなどの速度がApple純正ケーブルよりも速い。またAKiTiO自身も速い。

●とはいえあくまで経験的にですが、速度の速いインターフェースや機器はハイ上がりでテンションの高い音になる傾向があるように思います。AKiTiO用に12Vの高音質なスイッチングアダプタも用意したので、そのあたりをどうバランスを取るか、取ることができるか?
  (MacBook Airのリニア電源はできれば作らずに済ませたい。)

●で、まあこれだけの機器数でも組み合わせは相当な物になるので、どれが一番良いバランスの音か試してみようというわけです。まあとりあえず揃えて並べただけですが、ぼちぼちと。やれやれ。



20140年9月23日  この賑わいが続くように
●今日から東京IASなので、皆さんどっと繰り出しておられることでしょう。僕は体調もあって、遠出は控えているので行けませんが、この賑わいが続くようにと願います。

Nyw York Timesが取り上げたので、あちこちのメディアで論議が続いていますが、音楽メディアの流れを見ると日本はCDの売り上げが異常に高い特異な国のようです。でもこの記事でも全体の減少傾向は否めないし、一方でストリーミングやダウンロードが伸びるとも言えない。

 ひとつ確かなのは、これだけ世界的にCDや音楽産業全体の売り上げが減っているのを見ると、CDや音楽生産に関わる人的・物理的な資産も減少しているわけですから、再発CDの音質劣化は何も不思議ではないと言う気がすることです。
 日本が世界からCDを集めている状況なら、その中から音質の良いモノをいいとこ取りするのは非常に賢いのかも知れません。アベノミクスのメッキが剥がれてまさに「アベノリスク」と化して、円安が急速に進行していく可能性も高い ので、どっちにしろ今のうちでしょうね。

「CD-Loving Japan Resists Move to Online Music」(Nyw York Times SEPT. 16, 2014)

 「While CD sales are falling worldwide, including in Japan, they still account for about 85 percent of sales here, compared with as little as 20 percent in some countries, like Sweden, where online streaming is dominant.」
 「Despite its robust CD market, sales in Japan — the world’s second-largest music market, after the United States — have been sliding for a decade, and last year they dropped 17 percent, dragging worldwide results down 3.9 percent.」



2014年9月18日  終端器(ターミネーター)
●ワイスMAN301の外部クロック同期は順調ながら音を聞いていてどうも落ち着かないところがあり、「??」と首をひねっていて、「あれだ!」と仕上げの一筆を思い出した。
 外部クロックのBNC端子はINとOUTがあり、このOUTに75オームの終端器(ターミネーター)を接続しておかないと、リターンロスが発生するから、これは音質にも影響する。
 クロックというのは要するに高周波アナログ信号であり、電波をアンテナで飛ばすのと同じように電力がちゃんと受け渡しされねばならず、そのためにはインピーダンスマッチングは不可欠だからだ。終端器は一山なんぼの安いモノからいろいろあるが、そう高価なものではないのでせめてこれくらいは使いたい。

●オーディオ界で「ターミネーター」と言っても「シュワちゃん?」という反応が還ってくるくらいだろう。何せ使ってないし、分かってないし。

●で、過去ログです。
オーディオ音楽日記2007年」から
('07.12.23)【クロックこぼれ話(2)】、('07.12.16)【クロックこぼれ話(1)】
('07.12.12)ルビと水晶の日々(データ編)、
('07.12.11)ルビと水晶の日々(4)12.6GHzセミフレキシブルケーブル
('07.12.9)ルビと水晶の日々(3)
('07.12.7)ルビと水晶の日々(2)
('07.12.6)ルビと水晶の日々(1)

「オーディオ音楽日記2008年」から
('08.10.18) 50・75オームリターンロス
('08.8.12)ノイズ源であるクロックの実装法
('08.8.11)「デジタルの源はアナログ回路だった」
 →「京セラ株式会社に聞く!水晶振動子編」
('08.2.12)~('08.2.2)、('08.1.24)、('08.1.22)10KHzアトミッククロック

●うちのタイムリファレンスつまり10KHzアトミッククロックは、上記過去ログにあるようにStanford Research Systems SC-10 ユニットを自作筐体・電源に組み込んでいますが、しかるべきところで半月ほどランニングテスト測定をしてもらって、時間標準機としての所定性能を満たしていることを確認してもらってます。
 誰かが「自作?」と鼻を鳴らしていたそうなので、念のため。ちゃんと鼻かめよな。
 ちなみに10MHz正弦波出力です。アナログね。

p.s.いよいよスコットランド独立の投票が明日になった。それにしても基本的にケルト族という人種文化の違いが基本にあることに何で日本の報道機関はこうも鈍感なのだろう?



2014年9月15日  念のため
●さて、例によって念のための話ですが、僕はストリーミングになれば良いとか、グローバル化が進むことが良いとかそういうことを言っているのではありません。またすぐにもそういう状態になるとか、なれば良いとか考えているわけでもありません。

●もうお分かりのようにオーディオもIT化の大きな波の中に既にとらわれており、そのボラティリティの大きさに今後とも振り回されることは明らかです。iTunesのビジネスモデルにすら陰りが見られる中で、今後の音楽・音源の世界はどうなっていくのか?
 例えば「音楽チャート、口コミで進化 デジタル時代の分析議論」

 できることをやりつつ、先を見据えて考え手を打つ、ということが必要なのではないでしょうか?ありふれてますが、やはり 「Think Global, Act Local.」でしょう。

●現状のバベルはそういう努力の中でしか、コミュニケートしていけないと思うのですが。



2014年9月14日  大事なのは音源の確保かも
●先週末はWave File Playerで有名なK'sさんが仕事で大阪に来られていて、空いている時間があるということで、心斎橋でお会いして久しぶりにあれこれお話をさせていただいた。
 もちろん彼はソフトウェアやコンピュータの専門家であり、様々な音楽を知っておられる上にジャズヴォーカリストであり、何枚ものSACD/CDのプロデューサーでもあるので、いろいろ教えていただくことばかりだ。特に最新のCore i 7モデルの話、マザボ搭載のオーディオ・デバイスの音の良さの話は大変面白く勉強になりました。

●でも面白いのはお互いに高いところを目指しパイロット的にに取り組みをしているのだけれど、視点が違うので随分と異なった見方をするのが凄く参考になると言うことだ。例えばHDDで音質に違いがあるのはお互い理解していても、彼はその違いをできるだけなくして行くには「本当に」メモリにデータをあげてメモリから再生していくのが一番良い、と言われる。ちなみに、メモリープレーヤーと称していても経由するだけのようなソフトも多々あるのだそうです。
 僕も確かにそうだと思うけれども、ノイズという点だけでもメモリの音質的影響は大きいので、やはりアナログ部品としてのHDDを勉強しつつ良い音のHDDを選別していく努力は必要だと思う、という意見。実はどちらも全体プロセスの中にあるわけで、HDDへの記録・再生というだけでも膨大なソフト・ハードの動作が絡んでいるわけです。

●アナログ/LP再生の話も出たのですが、メンテなどの事も考えていくと機構部品は大変で、おいそれと踏み切れない部分はあります。
 僕の場合はここ3ヶ月ぐらいで必要なCDを300枚くらい集めて、片っ端からリッピングしながら聴いていますが、音楽産業の衰退劣化もあってCDの音質の劣化はかなり進行が速く(特にADD)、もうCDでは出ていない盤や、もうこのレーベルのCDの音は駄目だなあ聴けないなあ、というのも多々あって、盤によっては苦労してCD探すよりこれは手持ちのLPでいく、という判断をすべきだなと痛感したこともLP再生の本格的な再開につながっています。

 いま一番有効なのは、方式論やくだらない理屈ではなく、良質な音源の確保でしょう。

●日本の各界の情報収集分析は劣っているというのは定評(?!)のあるところです。
 で、例えばアップルがBeatsを買収したことの意味をどれだけのひとが評価しておられるのか?アップルは別にヘッドフォンが欲しかったわけではなく、Beatsが持つストリーミングサービス事業が欲しかったわけです。
 なぜか?それはiTunesのダウンロードビジネスモデルが曲がり角に来ていて、将来性を問われているからです。

●仏Qobusを日本で利用できるようになって、落ち着いたらDLしようかと思っていたらChapter 11 Protectionの話で気勢をそがれていたところへ、"TIDAL Lossless CD-Quality Streaming Coming to the US and UK"なんて話も飛び込んでくる。

 何年先のことかはともかく、おそらくはまずはストリーミングがポータルサイトとしてあり、そこに副業的にダウンロード・ビジネスがくっついている格好になるのではなかろうか?でも、プレイリストに載せておいていつでも聞けるモノを、余計なお金を払ってどれだけの人がダウンロードしてくれるだろうか?というのが、その場合のビジネスモデル的問題でしょう?

●つまり余計なお金を払ってもらうには、それだけの魅力がなければ行けない。いい音質で聞くことができる、ということがその第一だろうが、利便性も当然必要です。ではストリーミングを聞けて、それをダウンロードして、もちろんこれまでに蓄積した各種音源ファイルも含めて聞くこともできる使いやすいプラットフォームはどうするのか?ハイスキルな人以外は汎用PCでは駄目ですが、PC系または組み込み系であることは必須でしょう。
 でも、放っておくとPC系メーカーに持って行かれちまうんじゃないか?

●ネットワーク関係会社にいる沖縄の友人のところでは、毎年新入社員にLANケーブルを自作させるのだそうです。そしてその場ですぐにそれを測定して発表する。ネットワークの「品質」について誰もが認識を新たにするそうです。

●不安な点。ネットワーク/LANでの音質問題を誰が認識して努力しているだろう、するのだろう? 
 基礎の基礎としてまずはこちらとか。

 どうせデータは同じだから大丈夫、とかいうアホな話がまた出てくるのは間違いないし。僕はその頃にまだ生きているかどうかさえも分からないんだから、まあ、誰か頑張ってよね、ってことですが。



2014年9月10日  やわらかな風が吹くこの場所で
 やわらかな風が吹くこの場所で
 いま2人ゆっくりと歩き出す

  (GLAY「HOWEVER」)

●音の緻密さが高まるのは素晴らしいことだけれど、潤いが、空気が欲しくなる。
 デジタルの場合、それはクロックの品位だ。
 高品位クロックにより空気が綺麗になり、遠くまで見渡せるようになる。
 (これは既にアナログの似姿ではなく、デジタル独自の世界に近い。)

ワイスMAN301DSDが外部クロック同期に対応した。内蔵クロックの質もかなりのものだが、高品位な外部クロック、特にアトミック級との同期は一つの到達点だ。
 Kentがブログ中文PDFをダウンロードできるようにしてくれており、既に使っている人なら十分これで分かると思う。追って英文も出る。
 残念ながらSFORZATOのように10MHzを外部入力として、音源に合わせて自動追従というわけにはいかないが、外部クロックさえ切り替えればMAN301DSDではさほどの操作も必要ない。



 上の写真の最下段はStanford System Researchのアトミック級10MHz水晶SC-10を使った自作タイムリファレンス。その上で44.1と表示されているのがAntelope OCX(改)。
 手順としては
①このOCXの液晶左横のボタンで周波数を選択し、
②MAN301のクロックソースを選択(外部BNC端子を選択すれば次回からは操作不要)、

③周波数選択、となる。
 一度外部BNCを選択しておけば、実質的には2回ほどの操作だ。

●10MHzアトミッククロック同期とともに、やわらかな風がそよぎ始め、演奏者のタッチが音の表現として見え始める。一つ一つの音が大切に磨かれて空間の中の具体的な大きさの音像となって前後左右に位置し、音場空間が広がっていく。
 音楽が、音楽だけが染み通ってくる。ようやくここまで来た。長かった。

A something in a summer's noon—
A depth—an Azure—a perfume—
Transcending ecstasy.

 (Emily Dickinson
    "A something in a summer's Day")


夏の日の真昼に潜む何か
それは深さ それは空の青 それは香り
天にも昇る至福
 (拙訳)



2014年9月7日  「音楽は、こんなにも自由だ。」
「パイオニアがDJ機器事業も売却へ、600億円規模」
 圧倒的なブランド力を保っているDJも手放す。ドライブ事業、それも何とかBDR-XU02Jだけは残って欲しいものだ。音楽CDは本来「等倍」再生メディアなのだ
 しかしPCの世界ではCD-ROMは30年ほど前の、レガシーメディアでしかない。だから40倍速などで平気でぶんぶんぶん回す。本気で音楽のことを考えて静音設計で作っている会社は世界で同社1社だけだ。だから世の人たちは本来のCD再生の音を知らない。リッピングも無問題だと思い込んでいる。バベル。
 まあ、お笑いワールドでおおらかに生きましょう。
でもお持ちでない方はこの機会に。

カイ・イチノセがショパン・コンクールで優勝を果たした。この息の長い熱い物語に、エールを送ろう。
 「音楽は、こんなにも自由だ。」(一色まこと「ピアノの森」第232話、モーニングコミック)



2014年9月2日  10BASE-TのLAN環境でハイレゾ音源を再生できるか?
●ネットワークオーディオについてちょうど良い記事が出た。amazonなどで扱っておらず直接購読になる「日経NETWORK」2014年9月号だ。
 題して「10BASE-Tのリピーターハブで ハイレゾ音源を再生できるか? 」
 10BASEは、現在のツイストペアのLANケーブルではなく同軸ケーブルを使って1本の伝送路を上り・下りのどちらかで切り替えて使う「半二重(Half Duplex)」の10Mbit/秒のLAN環境で、少し前まで残っていたので懐かしく思うユーザーも多いだろう。
 「コリジョン(衝突)」と言って信号同士が衝突してしまい、コリジョンが検出されると送り出しサーバ側は一定回数までデータを「再送」し続けるので回線の混雑がひどくなってしまう。コリジョンを減らすにはと言うようなテクが必要とされた時代だ。

●この記事では10BASE-Tのリピーターハブを使って10BASE-T相当の環境を用意して、音を聞きながらNASからネットワーク・プレーヤーへの伝送状況をPCソフト(Wireshark)でトラフィックを測定している。

 ○必要な伝送量(ステレオ2ch)
   24/96 →
     96K×24bit×2 = 4,608Kbps
      + ヘッダー(TCP,IP,MAC)数10KB
   24/192→
     192K×24bit×2 = 9,216Kbps
      + ヘッダー(TCP,IP,MAC)数10KB
○DLNA伝送
   既存のHTTPやTCP/IPを組み合わせて動作するので、NASからはHTTPで伝送される。


●結果はどうかとうかというと、

(1)24/96の場合、リピーターハブのコリジョンランプは点滅するが、多少高めながら測定トラフィック量は正常で、音にも問題がない。

(2)24/192の場合、リピーターハブのコリジョンランプは点灯しっぱなしで、測定トラフィック量は7~8Mbpsと0BASE-Tのほぼ限界に達している。キャプチャーデータではエラーやワーニングが山盛りとなり、勿論音は途切れ後切れになる。

 つまり24/192を想定した場合10BASE-Tではスループット不足で対応できない。では100BASE-TX以上なら大丈夫かといえるが、機器の設定によっては「半二重(Half Duplex)」になる場合もあるので留意しておいた方が良い、という結論だ。

●これを別の観点から見ると、いろんな経路を通るのでコリジョンだけでなくパケットの断片化による再送など、ネットワークではミクロではいろんなことが生じている可能性がある、と言うことだ。
 ギガビットLANでは非常にマージンが高いので結果的にはスムースにみえているが、ミクロではいろんなことが生じて再送など様々な動作が行われている可能性がある、と言うことを忘れないようにしたい。

●ついでにいうと実際の記事だと上側に細かい用語説明があるので、情報量はかなり高い雑誌だといえる。



2014年9月1日  笑って許して
●時々、以前の発刊の雑誌を見たりして思わぬ発見をすることがある。今回はあるセンセのネットワークオーディオでのDSD再生に関する昨年秋の記事で、要するに「DSDは1秒を2822400に分割したタイミングで0か1かの1桁の2進法で表している。」ので、アナログライクだという訳だ。

 PDM(おまけでPWM)もΔΣ変調も、ノイズシェイピングも全部すっ飛ばして、いきなり2.8MHzPCMのように大根を超薄切りにせよ、とおっしゃる。いやあ何というダイナミックな発想だろう。
 そんな超高速デバイスあるんすか?、とか無粋な発言は差し控えよう。ここまで突き抜けていると、関西人の一人としては、もうこれは大笑いするしかしかないじゃないですか。

●そう、お笑いワールドの一角と思えばこれまた一服の清涼剤です。
 大勢に影響ないですし、お気楽にまいりましょう。



2014年8月31日  『誰も知らない素顔の八代亜紀』
嘉門達夫の替え歌メドレーから「きっと君は関西人、間違いなく関西人、さいでんなー、うおーおおー、ほうでんなー・・・」(←山下達郎「クリスマスイブ」)



●え~僕は関西人であってほんまに良かったと心底思っている。引用した「クリスマスイブ」の替え歌は「やっとられんなあ、もおお~」という気分の時に口ずさむことが多い。自分でも笑ってしまうので、気分転換にもってこいだ。

●最近、「オーディオやーめた。」という人が周囲にちらほら出始めている。大体が「将来デジタルの音はどんどん悪くなってくだろうし、やっとられん。」という感じですが、そら将来はストリーミングとYouChubeにすっかり駄目にされてるような気もするし、実は僕がここ3ヶ月ほど月100枚近くCDを買い続けているのも危機感を感じているからだ。
 おかげで必要なものは大体は確保できつつあるし、現状の音はデジタル/アナログともに十分だと思っている。まあほとんど書かないがギョーカイ的には山ほど不満はあっても、僕個人はできることをこつこつとやれば良いだけのことで、今63歳だからあと10年あまりなら現在のシステムや音源で軽く逃げ切れるだろう。

●替え歌メドレーのトップの『誰も知らない素顔の八代亜紀』(←井上陽水「リバーサイドホテル」)のように先のことは分からないので、分からん心配はする必要ないと思う。大事なのはいま現在で、ま、それが楽しくないなら止めれば良いわけだし。



2014年8月29日  あれこれ
The Hi-End Show TOKYO 2014が、10月17日(金)~19日(日)に青海フロンティアビルで「音展」との同時日程で開催されます。若干規模縮小とのことですが、これは行きたいですね。

●香港のKentの情報によると、7月のリリース以来、各国でワイスMAN301のDACボード交換をしたのは既に40人を超えるそうで、非常に良い反応が還ってきているそうだ。

Audio Streamによると従来のダウンロードに加えてストリーミングを開始した仏Qubozが「chapter 11 protection」に入っており、どうやら現在はデフォルト(債務不履行)状態ではなく、支払い能力はあるようだが、4ヶ月以内の資金確保が必要らしい。
 元Talking Headsのデヴィッド・バーン(David Byrne)が「Spotifyがミュージシャンにとって不利益になる」と批判したことなどを含め、ストリーミングサービスはあれこれ波瀾万丈だ。

●僕は記事を書いて生活しているのではないので、基礎調査にはできるだけ十分な時間をかけるように努めている。例えば先日 英CHORD Hugo について書いたけれども、米Antelope AudioがZodiac GoldでUSBレシーバーにFPGAを使用した音を聞いて以来、すぐには書かないもののこの分野には強い関心を持って調べてきた。そういう点はご理解をお願いしたいと思う。

 専門家によるとFPGAはユニバーサルなデバイスではあるけれども、音質も含め様々な固有の癖がありオーディオを分かった人が使いこなさないと、単にソースコードを欠けると言うだけ駄目なのだそうだ。
 CHORDのRobert Wattsがずっとザイリンクスを使い続けているのも、そういう要素を手の内に納めているからだと思われる。
 また、日本にもSFORZATOの小俣さんとか、DPAT Technology/OJI Special西出晃さんとか気鋭のエンジニアがおられるので、様々な可能性があると感じている。

●SFORZATOの小俣さんが出ておられるというので、久しぶりに「Stereo 9月号」を買ってみた。ハイレゾ特集のうち「知っておきたい! ハイレゾをよりよい音質で楽しむための攻めドコロ(鈴木 裕)」p.63からの「ネットワーク・プレーヤー再生編」に立ち会っておられるからだ。
 こういう実地のオーディオでの試聴やテストはこれまでほとんど具体的な発表例がない。そういう点ではとても前向きな記事だと思う。

 ただ、共同通信「大人のためのはじめてのネットワークオーディオ」(2013年11月5日発売)で専門メーカーさんを取材させていただいたり、その後のリサーチでも分かってきたことだが、ネットワーク/LANの技術的基礎から立ち上げたオーディオ向け解説記事が集約した4ページだけとはいえ「大人のためのはじめてのネットワークオーディオ」以外にはまだないわけで、このあたりはより詳しく何か書いていかなければと、先日のオフ会の皆さんの反応を見ても思います。
 共同通信のGaudio+PC Audio fanサイトには長い間書いていないけれども連載欄もあるので、そろそろお願いしてみるか、などと考えております。



2014年8月26日  過去30年の米音楽産業の変化
●土曜日には久々のオフ会。いろいろな音楽を聴いてもらった。
 質問も数々あり、やはり中級者以上の使いこなし情報は極端に不足しているようだ。ちと考えねばならないようです。

●オフ会でも少し聴いてもらいましたが、LP再生の方はZYX 4Dのブレイクインも順調で、もう少しこなれてきたら、Eminent model2.5トーンアームのトラッキングアングル調整機構を使って、針先の角度の微調整をしなければなりません。これが指の皮数枚の感覚で音を判断していかなければならず、面倒でもスリリングな瞬間がもうすぐやってきます。



米Digital Music Newsに「過去30年の音楽産業の変化」という興味深いページがあったので、そこから4年間隔でグラフを抜き出して僕なりの注釈をつけ、変遷を資料化してみました。


 またいつも御世話になっているAll Digital Musicに、「レコード・ストア・デイ・ジャパンから見える日本でのアナログレコード再人気の兆し」という記事があり、そこに「The LP is Back」という「1993年からのアメリカでのアナログレコード売上を示したチャート(Source:Nielsen SoundScan)」が掲載されており、対比のため2ページにわたってPDFファイルにまとめました。

30_Years_of_Music_Industry_Change_USA.pdf へのリンク

●大変に興味深く、いろいろと考えさせられます。LPが今後の主流に加わるかどうかという点では、筆者注として資料内にも書きましたが、米国でのVinyl売上高の「伸び率」は凄いけれども、Digital Music News資料の構成比率で見る限り3%程度であり、米国はともかく日本では工場は1カ所しかなく、製造設備や人的ノウハウの承継などから見て、少なくとも日本では今後主流の一翼を形成する可能性は低いと思われる、というのが正直なところではないかと思います。
 アメリカでは若者のLP購入が多いと聞きますが、この点も日本とかなりの違いがあるようです。これら資料は米国の状況であり、日本とは相当に事情の違いがありうると理解しておくべきでしょう。

●またこの資料には出ていませんが、YouChubeの存在も大きいと思われます。

●そしてストリーミングの今後の推移。Quboz、Spotify、そしてAppleが買収したBeatsのストリーミングサービスの展開などなど。目と耳を開いておく必要ありです。



2014年8月18日  CHORD Hugoは素晴らしいです!
●TimeLordさんとアサヒステレオさんのご厚意で人気沸騰中のChord Hugoを1週間近く借りて聴くことができました。いやあこれは素晴らしいUSBオーディオインターフェースです。20万円余りという価格帯ではダントツにベストですね。この値段でこれだけ鳴ってしまわれたらちょっと立場が......という感じすらします。



●なぜHugoに着目したか?
 まず筆者は時代的にキーワードはDiscrete、そしてSoftwareだと考えております。そもそもはAntelope Zodiac GoldというUSBをFPGAで受けているオーディオインターフェースの音質に感銘を受けたことや、ワイスMAN301SFORZATOなどのLinuxネットワーク・プレーヤーにも感動を覚え、最近の製品ではPS AudioのDirect Stream DACがFPGA構成のDACだということなどに触発されていろいろ調べていたら設計者のRobert Watsが寄稿しているHead-Fiの掲示板があって、そこに掲載されていたFFTのグラフに感動してしまったわけです。
 30年の研究成果の全てを投入して得た実績。



 HugoのDA変換後のアナログ出力(~32KHz)のFFT測定で、-40dBFS(フルスケール)のノイズフロアが何と-155dB。歪みやノイズフロアの混変調も全くなし。
 デジタルデータの理論値が最大24bit整数(Integer)で、その場合の分解能が-146dBですから、何と恐ろしい数字ではありませんか?

●HugoではDACチップ(chipが正しい綴りです。以前半分皮肉でTipと書いたことがあります)を使わず、デジタル部分はFPGA(ザイリンクスSpartan 6)で、それ以外の部分はディスクリートで組んでいるという訳です。

 The Pro Audio Web Blogでのインタビューによると、以前のFPGA(ザイリンクスSpartan 3)で実現しつつあったReference DACのソフトウェアなどの設計を、ほぼそのまま新しくて性能の良いSpartan 6に投入したそうで、この音質上の改善効果は本人にとっても驚くべきものであったそうです。
 「その音質を一言で言えば?」と問われて唸ったあげく彼は「蝶」と答えていたのが印象的です。

 他にも彼がノイズシェイピングという点でDSD64やDSD128に対してあまり評価していない点(D.ワイスとほぼ同意見)や、「究極なんてまだ実現してもいないんだから分からないよ!」という謙虚でシビアな答えなど読みどころ満載です。

 前者については『 My problem with DSD extends from the work I do on noise shapers, and DSD64 and DSD128 is technically severely limited. The format is stuck with an innately limited performance, but DXD standard, for example, has no format restrictions - its limited by the ADC and DAC implementation, not the format. To some extent, this is true with red-book - red-book is more limited by implementation - I am sure that red-book, properly implemented, will out perform DSD. 』

●これらからするとHugoの10倍のキャパを保つFPGAが投入される、次のQBD相当の機種が注目株です。Rob WattsのReference DACがこれになると思われますが、いろいろと含みもあるようで楽しみです。

 Hugoのクリーンでしかも解像度も情報量も高い音は素晴らしいのですが、あえて注文をつけるとすれば厚みや豊かなコク、彫りの深い表情の濃さなどがあればさらに素晴らしいと思いますし、出力ケーブルのRCA端子が後述の「オーディオ休火山」さんのレポートにあるように改善されているとは言え、使えるケーブルが限定されてくるのは何とかして欲しいと思いますが、それらが次の製品では実現していくのだと期待されます。

●なお、今回いろいろと調べている内にPhile Webで「オーディオ休火山」さんがこれらの和訳も含む丁寧なレポートを直近では13回まで掲載しておられたので、参考にさせていただきました。皆様も是非ご覧下さい。
 こういうスキルフルで熱心なユーザーがおられるのは誠に心強い限りです。



2014年8月17日  PCやデジタル機器の中を「ゼロイチ・データ」だけが流れる、というのは不可能だ。
●書き忘れていたが、少し前からLPもぼちぼちと再開している。以前使っていたZYX Cryoのカンチレバーが曲がってしまったので、秘蔵のZYX 4Dを使いはじめたのだが、長い間の放置プレイ後でまだブレイクインの途中だ。Eminent Technology 2.5のリニアトラッキングアームとSOTA Saphireのコンビは至極スムースに実在感溢れる音を出している。

 今日は久しぶりの東京の友人からも電話をもらって嬉しかったので、ハノイ・ロックス・ベストなどを気分良く聴いた。友人が送ってくれたLevel42が午後に届いたので、これはリッピングして明日にでも気合いを入れて聴こう。

●友人とも話していたのだが、最近のかなりのオーディオファンがそう思っているらしいが、PCやデジタル機器の中を「ゼロイチ・データ」だけが流れる、というのは不可能だ。

●何度も言うが、データはゼロイチの「デジタル情報」として、音楽データならrawPCMあるいはrawDSDというフォーマットで伝送されているが、これらは超高周波あるいは超広帯域アナログ回路の上で、閾値という電圧値より信号が高いか低いかで2値判別して、デジタル情報として処理されている。つまり電圧の高or低でデジタル情報を処理しているのだ。
(例えば下記の写真のクロック信号で言えば、中心の水平線を閾値と考えればわかりやすい。)

 理論的モデルでは立ち上がり・立ち下がり時間ゼロの真四角な「理想パルス」が「ゼロイチ・データ」の2値判別に使われるが、ゼロ時間で立ち上がり立ち下がるようなデバイスは現実の世界ではありえない。



 写真はデンマーク製DClock 24.5760MHzの波形をUSBオシロ SDS200で実際にキャプチャーしたものだが、実装回路で使えるのはこのような「連続量」としての矩形波もどきのヘロヘロな波形のアナログ信号であるクロック信号だ。(これにしてもかなり綺麗な波形である。)
 これらのクロック信号をいわばキャリア(搬送波)としてそこにデジタル情報を載せる、ラジオのようなイメージと言いかえればわかりやすいだろうか。

 そしてクロックはアナログ信号であるから、時間的揺らぎに由来するアナログ量である「ジッター」が発生し、これらは量子化雑音・誤差・歪みのような演算時の雑音・誤差・歪みとともに回路の中に伝わってゆく。

これらは既にエンジニアリングの世界の中で、明確に認識され実装回路設計のファクターとして織り込まれているものだ。
 すなわち
PCやデジタル機器の中を「理論通りのゼロイチ・データ」だけが流れる、と考えるのは、このような電子回路に無知な人たちである。

 彼らは実際に音を出す実装回路について知らないし、知ろうもしない。知ってしまえば自分たちが威張れる世界、つまりは「根拠なき全能感」を支えるためのプラシーボ(偽薬)を失ってしまうからである。だから、何も考えず何も知らずに、極々狭い自分の世界を守ろうとして、他罰的に人を中傷攻撃する。

 例えば1+1は2しかない、とか言う意見は理論モデルがそのまま現実世界で適用できると思い込んでいる視野の狭さを示しているだけだ。

 まあ装置の質は高くないし、実際の音を聴いた経験もほとんど無いし、プラシーボの思い込みもあるのであれば、出てくる音はへろへろで音の違いなど分からないでしょう。
 頭を閉じて、耳もふさいで、実装回路の知識も無いまま何も考えず、それでオーディオなどとほざくのはあまりにおこがましいではないか。



2014年8月15日  紙よりも薄っぺらなプラシーボエゴ
HDDで音は変わらない、という実に低脳・無脳な記事がネット中に溢れているようだ。これは単にデジタルはゼロイチだから、という幼稚園もとい保育園クラスの理論だけを根拠にした、恐ろしく幼稚な内容に過ぎない。立ち上がり・立ち下がり時間ゼロの理想パルスや離散値としてのデジタル量は人間の頭の中にしか存在しない理論・モデルの世界だ。それに対して実際の機器があるわけだが、彼らは実装回路など何一つ知らないし考えない。
 「おれは賢い。」「俺は凄い。」という「根拠なき全能感」に基づいて主張しているわけだが、「おれは賢い。」「俺は凄い。」という「根拠なき全能感」それ自体がプラシーボ(偽薬)に過ぎない。偽薬に基づくだけの、紙よりも薄っぺらなプラシーボエゴ。ひらひら、へらへら。
 2chのオーディオ板などであまりにも低レベルではじかれてしまうような保育園クラスの連中が書いているようだが、さもありなむ。

●だがこういう連中が気づいていないのはHDDは実装機器であり具体的な製品だと言うことだ。つまり理屈ではなく、実際の作りが物を言う世界なのだ
 「データが同じなら音は同じ」というのは具体性とつかみ所が全く無い表現でなので、いまだにのさばっているが、実装機器ではそうはいかない。実際に音も聞き比べない怠慢さが明白だし、レコーディングエンジニアが音質の良いHDDを選び確保しているなどという知識もないわけで、低脳さが浮かび上がる。 

 ご丁寧なことにいい格好したさにこんな風に書き込むburaikan氏や、こちらのかなりの部分のコメントを書くようなアホな方たちもいる。で、buraikan氏など気の利いたことをしつこく書いているつもりで、実際には盛大に墓穴を掘っているわけだ。ナイス墓穴!
 こういう書き込みは消去しないように頼んでいるので、アホの記念碑は永遠に晒されるわけだ。

 そのうちに単独のページでも設けて、徹底的に死体解剖記事を書いてやろうかねえ。
 大人の仕事に幼稚なちょっかいをかけるとどんな目に遭うのか、まあ覚悟していただこうか。震えて眠れプラシーボエゴ達。 



2014年8月13日  PC/Linuxベースのネットワーク・プレーヤーとストレージ(NASなど)
●ワイスMAN301はDLNA対応ではない。しかしDLNAのベースとなっている一般的なファイル共有の仕組み、具体的にはSMB/cifsnfsで読み込むので、ほとんどのDLNAには対応している。
 ならば一番良いのはDLNAをすっ飛ばしてファイルサーバで読み込むことだ

●またSFORZATOはDLNA対応だが、当然SMB/cifsなどで円滑に動作する。

●僕の周囲にはネットワーク・プレーヤーの機種入れ替えに伴って、過去NASに収録していたデータが見えるのみえないのでいろいろと頑張っている方が何人かおられる。
 一番基本的なのはメタデータ、ジャケ画と文字情報の管理方法だ。

AIFFやFLACには「チャンク」というかなりの収納量がある「おまけ入れ袋」があり、ここにメターデータエディターがいろいろとぶち込まれていくわけだ。それも自社DLNAの使いやすいような形で、場合によってはLocaleと呼ばれる位置情報までしっかり書き込む。で、「おまけ入れ袋」はぱんぱん膨らむにというわけです。
 幸いWaveにはわずかなデータ量のチャンクしかないので、文字コード以外にまず問題は生じにくいという実質的に大きな利点があります。

ファイルはデータとして共有できても、それを表現する「文字コード」は全てが使えるというわけではない。LinuxやMacOS Xを含むUNIXはユニコード(UTF)が基本であり、できるだけ他のOSの文字に対応するよう努めているとは言え、全てを受け入れられる訳ではない。
 つまりWindowsで1社のみの機器、1種だけのメターデータエディターに合わせて作成したNASのデータは、DLNAベースであれ、PCベースであれ、異なるネットワーク・プレーヤーに変更するとうまく動作しないことが多い。

●いささかややこしいけれどもお我が家の場合を例に取りますと、
○ネットワーク・プレーヤー ワイスMAN301
           または Linux/Windows/Mac
○ストレージ  Windowsファイルサーバ
     (Microsoft Windows Home Server 2011:販売終了)
     音源HDDのファイルシステムはNTFS

 ここではファイルサーバのNTFS上のデータはWindowsファイルサーバからLAN経由で送り出されるので、フロントエンドがLinuxであるワイスMAN301も問題なくcifs/nfsで認識します。

●問題はリッピングしたときなどに、入力の不手際などで、違うフォルダにファイル群が分割かつされてしまったり、ワイスMAN301のメターデータエディターの問題でフォルダを消去でき切れなかった場合などです。

 この場合はNTFSのファイルシステムとは言えWindowsファイルサーバ越しにワイスがLinuxでフォルダ・ファイル管理している一方、LinuxとWindowsはファイル共有できてもOSとしてのフォルダ・ファイル管理のやり方は微妙に違いがありますから、、ストレージに対してWindowsのメターデータエディターなど使ったら混乱の元です。ワイスMAN301の音源ストレージ管理はLinuxまたはUNIX(Macを含む)でするのが一番安全です。
 間違っても、Windowsのメタデータエディターをそのまま使い続けるなどと言うことは絶対にしないで下さい。

●僕の友人がワイスのストレージをWindowsであれこれ触った結果、Windowsファイルサーバが起動できなくなり、再インストールを余儀なくされています。
 そういうこともありワイスのストレージファイル管理用にUbuntuStudio13.10をIntel NUCにインストールしたので、今週末には友人宅でフォルダ、ファイルの整理をするつもりです。はてさてどうなりますやら。
 もちろんMacで管理しても良いのですが、Mac特有の隠しファイルが沢山できてしまうのが煩雑です。それに今回はWindowsファイルサーバの予備機をそのまま活用したわけです。

グーグルの日本代表が「いまどき5年以上PCまたは周辺機器を使うことは考えられない。よって、5年保つPC/周辺機器は『過剰品質』である。」と語ったことがあります。
 PCをオーディオで利用するためにはできるだけ質の高いtつまり過剰品質な機種を選んだ上で、予備機・予備パーツまたはバックアップの確保は必至です。準備しておかなければ確実に泣きを見る可能性が高いと思った方が良いでしょう。

●さらに言えば、何か特にやりたいことや、必要性がある以外はNASなど使わない方が無難です。上記のようなややこしいことも避けられますし、LAN/インターネットの大量ノイズとも距離を置けますし。
 ネットワークオーディオでノイズ吹き荒れるLANに各種機器を多数接続して音質的に良い環境を確保するのは結構難しいので、UDB HDDの良いのを選んでローカルにプレーヤーやPCにに直接挿す方が確実に一定以上の音質を確保できます。
 ネットワーク・プレーヤーにUSBメモリを挿せるのだからもう一息頑張ってUSB HDDを挿せるようにして欲しいと言っても頑固に実行しなかった頭の固い日本のネットワーク・プレーヤーメーカーは、結局NASの切れ目がユーザーの切れ目になって、ユーザー層が広がらないわけです。

●ワイスMAN301でもローカルの音質の良いHDDを使うと、こんなに簡単だったのかと納得していただけるでしょう。
 もちろんどのような音や機能を狙うかなどは皆さんのご判断ですが、はじめから一つだけに決め込まない方が良いと思います。つぶしも効きますし。



2014年8月12日 NASとそのHDDのファイルシステム、ファイルサーバとDLNAサーバ(メディアサーバ)
 NASについては使っている人は多いものの、その役割や特徴を理解して使うにはそれなりのコンピュータスキルを要する。

NASは「Linuxサーバ」である。
 単なるHDDではネットワークに出ることはできない。PC環境がインフラとしてなければ行けないので、製品としては当然それはLinuxしかない。
 つまり趣味で例えばMacファイルサーバーなどを運用するのはありですが、製品としてカスタマイズしていくような機器ではLinuxになる。

NASのHDDのファイルシステムについて
音源用内蔵HDDにLinuxシステムと音源データを同時に収納する場合
 QNAP TS-119のように1台のストレージに両方収録する場合は、ext4などのLinuxのファイルシステムしかない。ちなみに数年前のBaffaloさんの取材では、安定性を重視してxfsを採用しておられるとのことだった。

Linuxシステムと音源ストレージが別である場合
 音源HDDのファイルシステムはLinuxがネイティブに読めるものなら何でも良い。exFATやNTFSは何らかの追加ソフトを要する可能性が高いので、避けた方が良いでしょう。

ファイルサーバとDLNサーバ(メディアサーバ)について
①異なるコンピュータ同士のLANを介したファイル共有システムが全ての基本であり、「ファイルサーバ」が全ての基本になる。
 そのうえでDLNAの趣旨に沿ってAV機器を使いやすくするためにTwonky MediaMedia Tomのような「DLNAサーバ(メディアサーバ)」が動作する。

②DLNAサーバ(メディアサーバ)がAV機器同士をスムースに接続しようとする様を、ある口の悪い友人が「客引きサーバ」と呼んだことがある。歓楽街で「社長、ええ娘おりまっせ。」という例のやつである。最近では「案内所」なるものもできているようだが、筆者は寡聞にして良く知らない。(ことにしておこう。)
 ただしいくら有能な客引きであっても、それなりの店がなければ話にならない。この場合、DLNAサーバ(メディアサーバ)が客引きであり、ファイルサーバが店である。
 だから店を知っている客は直接店に行けばいいわけであり、店を知らない客は客引きや案内所に頼るというわけだ。

③上記②から分かるように、ファイルサーバ機能に屋上屋を架すのがDLNサーバ(メディアサーバ)なので、この性能が音質に大きな影響を与えたり、ボトルネックになることがある
 DSDファイルがLANを通れないと大騒ぎしていたのも、結局はTwonkyMediaなどDLNAサーバ(メディアサーバ)の制約だったわけで、ファイルサーバーはコンピュータの扱えるファイルなら全て送ることができるので、LANそのものには何の問題も無いわけだ。

④I/O DataのRockDisk Nextキットのようにソフトウェア的にDLNAサーバ(メディアサーバ)を停止してファイルサーバだけにできるようなカスタマイズができるNASで是非使い分けて音を聞いていただきたい。
 内蔵されているのは小さな両面基板だが、NASコントローラ(実質的にCPU)にDDR SD-RAM、ソフトを書き込むFPGAと言う構成でなかなかの充実ぶりである。またこのキットは5.5/2.5の標準的な電源DCプラグなので、電源の強化も簡単に実行できる。

NASで一番重要なのは、サーバとしての送り出し能力である。しっかりと構成された基板のLinux PCを確保すべきだ。
 電源の強化などはその次だ。
 



2014年8月7日  傑作(Master Piece)
●ここ1週間あまり、先日の裁判員裁判時にブリッ子陰険オバンから吹き込まれた毒を何とか体外に排出すべくあれこれじたばたしながら、ずっと「Golden DAC Module」を組み込んだワイスMAN301を聴いておりました。多分国内初。
 ブレイクインが進んでいく中での音質変化も面白く印象的で、ほぼブレイクインが終わった今、Kentが言うようにこれは「傑作(Master Piece)」だと確信しました。
 広大で深い音場の中に音像が稠密に詰まっていて好録音なら前後の奥行きも各楽器の位置関係もつぶさに分かる情報量の高さ。彫り深く陰影濃く音楽を表現し、オケのトゥッティなどの爆発的なエネルギーも軽々と表現します。
 これまで聞き慣れた音源でも「こんな音が入っていたのか?」と驚き、しばしば鳥肌が立ちました。どうやらMAN301のDACはオルフェウスを超えたようです。


 右側の青線で囲まれた部分が「Golden DAC Module」

●ワイスにはかつてMedea+というオペアンプ出力のFirewireオーディオインターフェースがありこれを聴いてから、個別素子で構成したディスクリート・オペアンプ OP1-BP(BP:バイポーラトランジスタ)を組み込んだMedea+ OP1-BP(現行の品名はMedea+ OP1-BP FW)を聴いたときには、その音質に歴然とした違いがあったので、MAN301でも予期していたもののここまで来るとは正直思っていませんでした。

 実は搭載されているGolden DACモジュールはフルバランスアナログ出力となっており、フラッグシップのMEDUS/MEDEA+で使われているシングルエンデッド出力の OP1-BP アンプモジュールとは構成が異なります。このためアップグレードしたMAN301ではGolden DAC Moduleがステレオで2系統使われており、コンパクトなDAC基板に納まっているわけです。

●実は以前Medea+ OP1-BP FWを聴いたときには、あまりの解像力の高さと情報量に圧倒され、もう少しおさえたテンションで鳴ってくれたら、という思いもありつつ、MAN301内蔵DACの質を考えると、最終的にはFirewireで出力したMedea+ OP1-BP FWという形になるのかなあ、と揺れておりましたが、もうこれで良いバランスに落ち着いてくれたと思います。
 真剣に聴くにも、ながら聴きをするにも使えるというのは、家で音楽を聴く時間が長い筆者としてはよてもありがたいことです。とはいえついつい音が気になってソファーのほうに座ってしまいがちですが。

 Alexis Kossenkoフルート・指揮、Arte Dei Suonatoriアンサンブルの「Vivaldi: Concert per il flauto traversier」つまりは木管の横笛フルート協奏曲です。
 鳴らし始めたとたん、ワンポイントならではの音場の広大さとエネルギー感に圧倒されること請け合いです。そのなかで木質感豊かなフルートが柔らかい音色で歌う好演名録音。

●そして特筆すべきは価格です。
 ①DAC内蔵バージョンのDACボード交換¥260,000(消費税別)、②DACを内蔵していない ServerバージョンへのDACボード増設は¥500,000(消費税別)との価格ですから、Golden DACボードの価格は¥500,000(消費税別)となります。
 高杉!とおっしゃる方もおられましょうが、今時の¥500,000(消費税別)のいかなるDACであれこのような音は絶対に出せないと思います。しかも単体DACに比べた場合、表示部分がなく、制御については基本的にMAN301のLinuxが担当するわけですから、余計な回路がなくて済み、ストレートな分だけ情報量は高まっているわけです。
 まさにKentが言うように「MAN301のプラットフォームがなければ実現不可能な価格」と言えるでしょう。
 代理店の方でボード交換とテストランをするので、日数が短くて済むのも良いことです。ただし30周年である今年限りの提供です。

●まだ外部クロックとの同期など音質に影響大なソフトウェア・アップデートがまだという段階でこの音質ですから、特にアトミッククロックを入れた場合の音質は、間違いなく天国的なものになるでしょう。
 金ぴかの外装は好みですから置くとして、MAN301ユーザーにおかれては可能な限りアップグレードされることをを推奨します。



2014年8月1日  人生そう悪いもんじゃありません。
●8月になってしまいました。
 7月上~中旬は裁判員に選任され、2週間半ほどの公判に拘束されました。住民基本台帳から無作為に30人ほどが呼び出され、その中から裁判員6名と裁判員に事故あったときの補充裁判員2名が選任される訳です。母の件はともかく、本人の体調もいろいろ問題あるのに逃げるのを潔しとしない性格で、まあ当たらないだろうとたかをくくっていたら、きっちり選任されてしまいました。
 裁判官3名と裁判員6名の計9名で投票して判決を決める訳です。裁判そのものは業務ですからともかく、裁判員間の人間関係には悩まされました。ブリッ子の陰険オバンがいてかき回したりするわけで、正論を言うとねちねちとチクチクと嫌がらせをされるわけです。審議に感情を交えさせるわけにはいかないので、最後まで耐えに耐えましたが、猛烈にストレスが溜まりました。

●その後すぐに沖縄に行き、久しぶりに友人達とゆっくりゆんたくしました。美味しい食べ物とうまい酒と楽しいおしゃべり。こういうのが一番安らぎます。
 壺川の居酒屋さんから外国人のお客さんが増えてきたので英訳してくれと言うメニューも無事届けることができたので、一段落です。
 最近の那覇は内地から移住してきた腕に覚えがある人が開いた特色ある安くてうまい店が増えてきてなかなかのものです。

●沖縄では時間があったので、いろいろ考えました。見方は人にもよると思いますが、僕から見ると少なくとも日本のオーディオの世界は再び閉塞感が漂うとともに、既に方向感覚を失っています。もう今となっては、自分のできることはやって伝えられる人には伝え、後は流れるに任せるしかありません。
 趣味であるショップのサポートも、できる範囲でやります。



●そこへ届いたDACのアップグレード完了済みのワイスMAN301 DSD。
 30周年記念バージョンのMAN301 DSD Goldと同等の「Golden DAC Module」DACボードへの交換、と言うわけです。具体的にはオペアンプを廃止して、表面実装で組んだディスクリートオペアンプを使ったDACボードですが、この音がまた凄い。
 いやあ、人生そう悪いもんじゃありません。



2014年7月15日  北村憲昭氏指揮/ワルシャワ・フィルのDSD/PCM録音(2)
北村憲昭指揮 / Warsaw Philharmonic Orchestra『ドビュッシー「海」、ラヴェル「ラ・ヴァルス」』(NKB-404)まずディスクの収録情報から。

Disc1(SACD/CD Hybrid Disc)
 CDとSACDのSTEREO / SACD 4.0サラウンド
 ・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
 ・ドビュッシー:3つの交響的スケッチ『海』
 ・ラヴェル:オーケストラのための舞踏詩『ラ・ヴァルス』
 ・ドリーブ:バレエ音楽『コッペリア』よりマズルカとワルツ

Disc2 (DVD-ROM Disc)
 FLAC data (24bit/192kHz STEREO)
 ・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
 ・ドビュッシー:3つの交響的スケッチ『海』
 ・ラヴェル:オーケストラのための舞踏詩『ラ・ヴァルス』
 ・ドリーブ:バレエ音楽『コッペリア』よりマズルカとワルツ

 DSF data (1bit/5.6MHz STEREO)
   (ワンポイントマイクによる収録)
 ・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

●村上氏の解説によると今回の録音は別々の2系統で同時に録音されている。
①DSD系(マルチトラックでのサラウンド録音用に同期したKORG MR-1000での1bitレコーディング)
②PCM系(ProToolsでマルチトラック収録したPCMデータ)

 PCM系は②から、DSD系は①から切り出されていくわけだが、問題はおきまりのDSD編集だ。KORGのDAWソフトClarityではまだ「あれができない、これができない。」という事が多く、精密な編集は困難を極めるので、専任のスタッフによるオペレーションが必要となるのだそうだ。そこで、まず②を使って村上氏がProToolsで編集を行い「できあがり図」を作っておき、それを目指して専任のスタッフがClarityで編集を行い最終的にDSDマスターとして出力していく、という流れになっている。


 ClarityはCPUネイティブに必要部分をマルチビットΔΣで演算して編集していくわけで、上に同社の資料「コルグにおける1bit研究の状況について」の1ページを引用させていただいたが、CPUネイティブな信号処理によりオリジナルなサンプリングレートのままで「余計な処理を極力省いて処理する」ことが可能になったわけである。

 これは相当な時間と手間がかかったそうで、村上氏は「僕の時給はマクド並みです。」とぼやいておられたが、さもありなむ、とぞ思ふ。

●つまりは本作のDSDデータはSACDもDSFデータも、一般的に行われているように一括的なファイル変換処理でサンプリングレートも落としてPCMに変換し、編集・再変換したものではなく、別系統のPCMマスターの編集内容を参考目標として、Clarity DAWという先進システムを駆使して、サンプリングレートの変更も行わずに余計な処理を極力省いてDSDベースの編集を行いDSDマスターを作ったたわけだ。さて音質はいかがなものか。

(注)今回PCMのFLACファイルは、はFLACの開発元SourceForgeの「official FLAC tools」からMac OS X用の「FLAC tools for OS X」を使ってWAVEに展開して聴いた。

●「牧神の午後への前奏曲」はフルートの独奏から始まり、管楽器を中心としたバックの演奏の上でフルートが動いていく。音量があまり大きくないので一聴わかりにくいかも知れないが、高品位な再生系ならたちまちフルートの音質が違うのが分かるだろう。PCMでは銀管らしく輝き、DSFでは木管的な中低域の柔らかさが十分に出て、バックでホルンや管楽器がカラフルに展開するところなど「おお、良いなあ。」と素直に喜ぶことができる。
 PCMがダイナミクスを主成分として音楽的高揚を作り出していくのに比べて、DSFでは個々の楽器のニュアンスも含めた多様な響きが様々なレイヤーで折り重なり溶け合い「トゥッティ」につまり全ての音の重なりとなっていく。

 前作の「火の鳥」も秀逸だが、本作は先進的システムを駆使した関係者の営々としたご努力が実を結び、さらにそれを上回る成果を上げていることを喜びたい。村上氏は、個人でClarityを使える状況になり、より使いやすいものになっていくことを要望しておられたが、全くその通りだと筆者も強く思った次第である。

 前回も述べたがフォーマットが音質を保証するのではなく、関係者のセンスとスキル、技術、それらを使いこなしていく努力が高音質をもたらすのであり、このような労作が理解され評価されることを筆者も願うものである。



2014年7月14日  This is our Music
●藤本健さんの「Digital Audio Laboratory」に「1ビット研究会」の手際よいレポートがあります。是非ご覧下さい。



●Charlie Hadenが亡くなった。地味系の、しかし静かに歌う味わい深いいいベーシストだったのに残念だ。オーネット・コールマンの「This is our Music」での背広姿は格好良かったなあ。こういう訃報に接するたびに、自分はあと何年だろうかといつも思う。日々を大切に、大事なことだけをやって行きたい。

●NKBレーベルの新譜のことは明日書きます。



2014年7月12日  北村憲昭氏指揮/ワルシャワ・フィルのDSD/PCM録音(1)
●さて引き続きDSD/PCMの優秀録音のご紹介。
 北村憲昭氏指揮/スロバキア・フィルのNKBレーベルのベト6とベト7については既にご存じの方も多い。
 今回はいずれもワルシャワ・フィルでのSACD Hybrid とデータ DVD-ROMの2枚組で、『ストラヴィンスキー 「火の鳥」、チャイコフスキー 「ロメオとジュリエット」、「ポロネーズ」』(NKB-403)と、『ドビュッシー「海」、ラヴェル「ラ・ヴァルス」』(NKB-404)の2枚を聴いた。

●まず前者(火の鳥)については両盤のSACDオーサリングを担当されたた(株)アイクオリアが2月に行った、8ch DSD対応USB接続オーディオインターフェイス I88A-U2 説明会で聴かせていただき、鮮度の高いサラウンドの印象もまだ生々しく記憶に残っている。

 hyper-resolution.comに、レコーディングをされた村上輝生(Mu- Murakami)氏のコメントがある。
 『またまたスロバキアまで録音に行き、第2弾のリリースにこぎつけた。第3弾となる今回はオケも変わってワルシャワ交響楽団!ホールも毎年ショパンコンクールでおなじみのワルシャワフィルハーモニックホールでの収録。出発前にネットで見ると外気温マイナス19度!!幸い渡欧時には気温も上がって零度前後。日本から飛行機を乗り継いで16時間、KORG 1bit Recorder MR1000とRME UCXを持参しての収録。編集とマスタリングを終えやっとリリースとなった。』

●2枚組の内DVD-ROMにはバレエ組曲「火の鳥」の24/192のPCM(Wav)データと、DSDデータとしては「火の鳥」「ロメオとジュリエット」前奏曲、「ポロネーズ (歌劇「エウゲニ・オネーギン」より)」の2.8Mhz WSDデータ、「ロメオとジュリエット」(1ポイント録音)と「ポロネーズ」2曲の5.6MHz WSDデータが納められている。
 WSDは1ビット研究会の前身、1ビットオーディオコンソ-シアムの推奨規格だ。我が家ではKORGのAudioGateでKROG MR-1000やDS-DAC10などのUSBオーディオインターフェースを使えばWSDのまま聴くことができるが、DSF/DSDIFFならばワイスMAN301で聴けるので、クオリティ的にこちらで聴きたいと思うのは当然だ。そのため同DVD-ROMに入っているAudioGate2.3での変換方法を参考に、AudioGate3でWSDから高品位(注)DSF(2.8MHzまたは5.6MHz)に変換を行って聞いた。 ファイル構造が大きく異なるPCMからの変換と異なり、WSD/DSF/DIFファイルは非常に類似したファイル構造なので、変換によるロスよりも、より高度な再生環境のメリットが大きいという判断です。



(注)今回追加されたエクスポート変換処理の"高品位"とはAudioGate 3で新設計された変換処理を”高品位”, AudioGate 2で使用されている変換処理を"低負荷"として選択できるようになったとの事で、今回は当然により音質が良い「高品位」を選択した。
 なおAudioGate3は所有するKORG製品を接続するか、ライセンスを新たに購入するか、で完全版にアクティベートでき、それまでは機能制限されたライト版でのみ使える形となった。


●音質的にはやはり5.6MHzのメリットが大きいが、2.8MHzDSDと24/192PCMを比較すると、これがどちらもいい音であり、まずは録り音の質の良さがよく分かる。細部を聴くとDSDの方が小音量領域での弦のトレモロや低弦のうねりのような微細な音の揺らぎのニュアンスがよりよく分かる。PCMだとどちらかと言えば音が立つ方向へのダイナミクスがコントラストとなって行く。
 つまりDSDだとより小さなディテイルに耳がゆき、PCMだと音の立ち上がりやダイナミクスをニュアンスとして濃く感じる、という違いである。勿論、非常に大まかな対比だが。
 それにしても気にかかるのはここまで微細に佳い音が、どれだけの人に求められ理解されるだろうか、と言うことだ。

 さすがワルシャワ・フィルで演奏には何の文句もない。高音質な「火の鳥」としてDSD/PCMともにお勧めできる録音だ。SACD盤の方はSACD/CD HybridのStereo録音だ。我が家にはフロントCenter, SunwooferをL/Rにアナログミックスダウンするサラウンドの再生環境があるので、改めてあの広大なサラウンドの音も聴きたいものだ。

●この盤での詳しい録音編集過程は「KORG 1bit Recorder MR1000とRME UCXを持参」したという他の細部は分かっていないが、『ドビュッシー「海」、ラヴェル「ラ・ヴァルス」』(NKB-404)については先日の「1ビット研究会」で村上氏本人から詳細な説明があったので、次回改めてご報告したい。



2014年7月10日  『Quiet conversations 静寂の語らい』
●台風8号が特に沖縄では被害甚大で、近畿の方は直撃は避けられそうなものの雨はこれからです。

●前回記事アップ以降に全く別の件で月水金と終日拘束される日程が入り、一挙に時間が厳しくなって更新が遅くなりました。
 「ファイル変換ソフトは、我々『聞き専』が日常的に使うのではなく、むしろ録音製作する人たちがそのセンスとスキルを発揮してふさわしい音楽表現を実現するために使う物だと考えた方がいい。」と書きました。

 「DSDソースが少ないからPCMから変換しても聴きたいのに。」というユーザーはおられましょうが、まずもって変換というのは演算を行うわけですから2進法での数値など演算誤差は必ず発生するので、何の副作用もなしにできるものではないことをご理解願いたい。
 その上でDSD<>PCM変換については元の前回の的場文平、中島千明両氏の「オーディオ愛好家が陥りやすい 1 ビットオーディオの誤解」にもあったように、簡単に可逆的に変換できる物ではないことも念頭に置いていただきたい。
 最新鋭のKORGのDAW編集システム「Crarity」の場合でも、DSD音源の編集の際にはCPUネイティブにマルチビットΔΣで演算というプロセスが伴うようで、Clarityもまだ実機は3台しかないとの事だ。
 そうなると、現段階ではDSDの編集には何らかの形でPCMへの変換が不可欠で「完全な」DSDネイティブというのは市販音源としてはほぼあり得ないと言うことになる。また変換の際にどのようなソフトウェア環境やそのソフトウェアの「設定」を用いるかも結果として変換ファイルの音質に大きな影響を与える。
 一方でPCMのDACでも実際にはほぼ完全にΔΣ変調方式のAD/DAコンバーターが用いられているわけで、ますます両者の違いは単純化した考え方ではとらえきれないことがお分かりいただけるだろう。

●なお改めて言っておくと「正しい音なら音は同じになるはずだ」というような幼稚きわまりない意見は一顧だにするに値しない。こういう単純きわまりない意見の持ち主達は、CDなど音源には「原音」がそのまま入っていると単純に思い込みんでいるようだが、そんなことは実装録音機器では不可能である。そもそも諸性能に限界があるマイクやレコ-ダーでは全ての音をとらえることなどできないのだ。録音という作業は、それらの機器やソフトウェアの限界を踏まえた上で、どのようにその音楽のエッセンスをとらえるかという録音家の感性とスキルのアーティスティックな産物であり、それゆえに機器やエンジニアによる音の違いは当然に起こりうるものである。

●そうすると録音時の具体的なDSD<>PCM変換についてはどのように考えれば良いだろうか?

 実はDSD/PCM両者ともに素晴らしく高音質でまとめられた音源の好例が、もうすぐ入手可能になる。ワオンレコードから明日発売予定の、『Quiet conversations 静寂の語らい C.P.E.バッハ作品集』【上尾直毅(クラヴィコード)】だ。

●録音データにあるように録音はDSD(DSDIFF)で行われている。
 《5.6448MHz DSD recording》
  Microphone:改良型金田式無指向性DCマイク 2013年 毛利忠晴製作
  Method:Stereo A-B
  Recorder:KORG MR-1000 (buttery)
  Monitor:Grace Design m902B + Sennheiser HD580/Clou Cable


 また《192kHz 24bit PCM editing》にあるようにPCMへの変換は
  DDC:Weiss Saracon-DSD 
というソフトウェア・コンバーターで編集されている。

 ここではDSD録音→PCM変換と編集という流れで考えよう。
 上述したように「DSD完全ネイティブでなければだめだ。」という考え方ならばPCMに変換して編集加工してDSDに戻す、というのもできないわけだが、現実にはどこまで高精度に音質に配慮して変換プロセスを実行できるかと言うことに重点が置かれるべきだろう。
 かつてのdCS724のようなハードウェア・エンコーダー・デコーダーの場合は「理論値24bit」が最大であり、演算も24bit整数(インテジャー)で行うしかない。
 ソフトウェア・デコーダーの場合はまず32bit Floating(浮動小数点)は間違いなく使えわけで、ワイスSaracon-DSDは64bit Floating(倍精度浮動小数点)を64bit OS環境(Windows、Mac OS X)で使うことができる。つまりは高精度なソフトウェアで時間をかけて高精度に演算することにより、高精度な変換が可能となるわけだ。ワイスの場合世界中の録音スタジオを交流を持ち、録音や音楽について知り抜いているので、変換時の設定方法も非常に効果的なのだそうだ。

●『Quiet conversations 静寂の語らい C.P.E.バッハ作品集』の場合はCD盤の録音セッションのこだわりにあるように高音質でマイクアンプ抜きでレコダーに入力できる高出力が可能な金田式マイクにより「録音レベルはDSDレコーダーの目一杯までとれて」いるわけで、そのようなマージンが十分に録れたDSD音源を、高精度なワイス Saracon-DSD というソフトウェアでPCMに変換しているわけだ。
 そしてPCM24/192で必要な編集、といってもワンポイントマイクで音場を広くとらえているので、マルチマイク録音よりははるかにシンプルな編集を行ってPCM24/192マスターを作成し、そこからCDマスターを作成するとともに、ワイス Saracon-DSDの10次のモデュレーターによって慎重にDSD128(5.6448MHz DSDIFF)に変換してDSDマスターを作った、というわけだ。

●さて実際に音楽を聴いてみよう。DSDマスター盤PCM24/192マスター盤を一足早く入手してじっくりと聞かせていただいた。
 わかりやすいところで、1曲目の「1. 幻想曲 イ長調 (識者と愛好家のための曲集 第4巻より)」と最後7曲目の「7. 幻想曲 嬰ヘ短調 Wq.67 (H.300)」の2つのファンタジアを取り上げよう。
 1曲目では大型クラヴィコードの「ズーン」とくる左手の低音の「強さと深さ」が印象的だ。ピアノと違い木製でしかも鉄線を金属片で打って鳴らす構造なので、ピアノほど大きな音にならないものの、特にPCM盤では音は立っていて、しかも音の浸透力のある強さと深さが飛び抜けて印象的である。もちろんDSD盤でも低弦の魅力は引けを取らないが、他のパッセージのニュアンスがこぼれるばかりにあるので、そのなかに優しく包まれてしまうと言った感がある。
 このあたりはいかにも一般的に言われる柔らかいDSDとソリッド名PCMというイメージにも近いものがあるが、第7曲ではかなり印象が変わる。嬰ヘ短調という調性から「嫋々たる寂寥感漂う柔らかさ」のようなイメージを期待するが、その点はむしろPCM盤の方にずっと強く表れる。DSD盤の方がむしろ音が立ってシャープな印象さえ受ける。

 このあたりは録り音を熟知するエンジニアが、Saraconの設定も細かくチェックしながらとりまとめたというスキルと経験のたまものであろう。高価ではあるができうるならばDSD盤/PCM盤の双方をじっくりと味わっていただきたい。

 それぞれに様々な制約をかかえた録音方式それ自体が音質を保障するのではなく、それらの特性を踏まえた上で使いこなし製作していくエンジニアのスキルと感性によって音楽的な成果がもたらされると言うことを、重ねてご想起ねがえればと思います。



2014年6月28日  「オーディオ愛好家が陥りやすい 1 ビットオーディオの誤解」
●今週初めは久しぶりに上京して友人達に会い、早稲田大学で第9回1ビット研究会に参加してきました。
 久しぶりの友人宅は浸透力の高い見通しの良い音で、普段余り聴かない音楽にも接することができて、何より気の置けない話がストレス解消に役立ってくれました。

●1ビット研究会は盛りだくさんな話題で、僕にとってはとても収穫が多いイベントでした。出席者は前回より増えているのですが、オーディオジャーナリズム関係者はむしろ減っているようで、熱しやすく冷めやすい状況そのままのようです。

収穫その1
 トップに的場文平、中島千明両氏によるSD Tran384+Sync-SDTにDACとNDKのダブルOCXO(!)などを組み込んだ試作機でのDSD256音源再生(前回不調で再生できず)が行われ、「オーディオ愛好家が陥りやすい 1 ビットオーディオの誤解に対する正しい理解と技術解説の提案」と題した発表がまさにDSDフィーバーへの具体的指摘となっており、大変興味深かった。
 後者の発表では難解なので説明がすっ飛ばされがちだが、ΔΣ変調の内容とその重要性をもっと明確に認識すべきだというのが一つのポイントかと思います。

「オーディオ愛好家が陥りやすい 1 ビットオーディオの誤解」について抜粋します。

「DSDはPDM(Pulse Density Modulation)である」とΔΣ変調抜きで、単純化して言う人が多い。
 
「スーパーテクニックを使えば、ΔΣ変調された1 ビットオーディオデータを、簡単な演算で編集可能だと思っている。」
 1ビットオーディオデータのままの汎用編集は不可能
 (たとえSonomaのようなリアルタイム編集機能を持ったプロ用機器でも、一度マルチレベルの表現にして演算を行ってから、再びΔΣ変調をかけて1 ビット信号を生成)


「DSDは1種類だと思っている。」
 ΔΣ変調器の構成・設定によって、多種多様の1 ビットオーディオ結果が存在しうる。


「PCMとの間で可逆的に変換できると思っている。」
 
PCM→1 ビット変換時:ΔΣ変調の方法
 1 ビット→PCM変換時:デシメーションの方法

 これらの変換方法が違うことによって、完全に元に戻ることはあり得ない。

『「PCM vs. 1ビットオーディオ」と極単に単純化して、音質の良否の議論をする。』

 さて耳が痛い人はいないでしょうか?

 いたずらに方式論に走るのは、勉強不足で自信がない分を埋め合わせて根拠ありげに見せるために自己正当化しているに過ぎません。

●雑誌などでよく見かける「何でもかんでもDSDにしたら良くなるので、PCMからどんどんDSDに変換しよう。」という俗説がどんなに危ういかがよく分かります。

 以前あるセンセイが「御田さん、CD音源でもDSDに変換するとらしくなるねえ。」と話しかけてこられました。僕は「遊びでやられるなら良いんですけど、CD音源をDSDに変換するのは問題が多いのでメインの音源となさることはしないで下さいね。」とお願いしました。

 また、ある友人が同一音源(CD)をPCMから何種類かの設定でDSDに変換したファイルを聞かせてもらいました。
 「で、どれが一番良いの?」と聴くと、「えっ!」と驚くわけです。「いやあ変換して音が変わるのが面白いから。」ということだったんですね。

 結局ベストを選び出すには元の音をよく知っていないといけないのですね。で、変換によって音質が変わる部分もあるので、トータルとして一番良いという設定を選択しなければならないわけです。

 つまりファイル変換ソフトは、我々「聞き専」が日常的に使うのではなく、むしろ録音製作する人たちがそのセンスとスキルを発揮してふさわしい音楽表現を実現するために使う物だと考えた方がいいと、僕は思います。



2014年6月11日  エンリコ・オノフリのバロックの正体
●傅信幸さんのFaceBook関連で見た「エンリコ・オノフリのバロックの正体」がとても面白く考えさせられます。
 日本人は「一」が大好きでこれ1本、とか一筋の方向にすぐ寄ってしまいがちですが、多様性の中で耐える、あるいはできるならば多様性を愉しむということも大切だと思います。

●中世のスコラ哲学での「音楽学」はじつは完璧なハーモニーの探求により、神の作りたもうた世界の完璧さを証明することが主目的だったようですが、実際に12の全ての音を調和させる音律は存在せず、純正調といえどもいろいろあり得る訳です。僕が担当させていただいた「調律講座」の講師によると、不調和な部分をゴミと考えれば、「いわばゴミの量は一定でそれを掃除の際に丸く掃くか、四角く掃くか、あるいは部屋全体に均等に散らすか」というのが調律のイメージなのだそうです。彼女はフランス在住なのですが、「フランス語の発音が分からないとクープランやラモーは弾けない。」というのは厳しいなあと思いつつ、実際にチェンバロの制作者や調律師さんによるとそういうフランス語的な「曖昧さ」を残しておかないとフランス音楽には使えないのだそうです。

●ワオンレコードのハイレゾ、特にDSDがよく出ているそうで、音や内容の良さと信頼性の高さが評価されているのだと思います。
 ここではベルギーで収録された三和睦子さんの「ラモー:クラヴサン曲集」の176.4kHz 24bitを。フランス人の弾くラモーでは時として繊細さやディテイルに余りにこだわったりする傾向がありますが、三和さんのは背筋がまっすぐに伸びた王道的な演奏で、まことに堂々として清々しい広がりを感じます。最近のヘビロテの一つです。



2014年6月9日  ぼちぼちと
●先週末阪神間の友人宅を訪れていろいろと遊んだのですが、FaceBookに夕食の風景などの写真とオーディオ関係のコメントも載って、知人から聞かれたりしたこともあり、この間の取り組みについてぼちぼちとHPには書くつもりです。
 ただ手っ取り早く結果だけ、ということになると肝腎のところが混乱して分からなくなったりするので、迂遠なようでも基本から整理しようと思ってます。急がば回れ。

●まずは基礎知識が普及していないと文句ばかり言っても仕方が無いので、「デジタルオーディオ/PCオーディオ事始め」ですかな。
 「事始め」としたのは「デジタルとはなんぞや?」とか、相当基本のところからの立ち上げという感じです。そこから解きほぐさないと、現状はワカメかスパゲティですからね。ちゃんと調理すればホントはどっちも美味しいのに......。

 なにせネットワークは基本的にPC間通信だと言うことや、LANの基本をほったらかしのままでオーディオ利用しようとするので、あまり良い結果が出ないのも当然だという現況をふまえると、併行して「ネットワークオーディオ事始め」ですね。

 まあ合間を見ながらぼちぼちとです。

●僕はFaceBookではほとんど活動していないのですが、知人とのコンタクトなどにはたまさか見ますので、懐かしい顔を拝見したりで役に立ってます。

●あ、ネットワークプロトコルにはオーディオ的に何の支障もないですよ。支障があるのは、DLNAサーバやメディアサーバなどオーディオ側のアプリケーションですから、お間違えの無いように。
 PCで扱えるデータは全て送れますからね。



2014年6月6日  SFORZATOがまたまた快挙!
●以前はSFORZATOあるいはスフォルツァートとググっても音楽記号がトップに出てきていたのが、いまやオーディオがトップに出てくる今日この頃。
 そのSFORZATOから電源一体型ネットワーク・プレーヤー「DSP-05」についで、なんとアトミック級クロック「PMC-03」が30万円を切る予定価格というきわめてリーズナブルな価格でリリースされます。
 両方合わせて、上位機種の別電源ネットワーク・プレーヤー「DSP-03」単体とほぼ同価格なのですが、クロックとのセットをとるか、DAC部分の強化をとるか、嬉しく悩ましい選択になるでしょうね。
 現段階でコンプリートな世界をまとめたいならば、これはもうクロックとのセットが一押しになるでしょう。うう、早く聴いてみたい。

 はっきりと言っておくと、オーディオ的に音質的に一番重要なのは、長期安定性(ppm、ppb)ではない。それは何万年に一秒とかの時計や測定器での最重要指標であるだけだ。
 オーディオ的に音質的に一番重要な瞬間瞬間の短期安定性や近傍位相ノイズはアトミック級の超高精度水晶の方が優れているのだ。

 諸卿よ、目を覚ませ!

●TIからARMベースのLinuxオーディオ汎用キット(ハード&ソフト)が発売された数年前から期待していましたが、結局はコンピュータ技術だけではだめで、クロックを含むオーディオグレードの確保には、SFORZATOの小俣さんのようなコンピュータとオーディオ、ハードとソフト、この両方を極めうる人材が必要だったわけです。
 デジタルオーディオとコンピュータはやはり別物です。オーディオ界の問題は結局は人材です。また、こういう商品を販売、サポートできるショップがユーザー的には第1に重要です。

 そして最高のPCオーディオというのは、PCもオーディオも分かったプロフェッショナルが、音楽再生専用に作り込んだソフト&ハードウェア環境のプレーヤーだと言うことです。

 ルータとLAN環境をちゃんと設定してIPアドレスを固定してやれば、ハブと音源ストレージ(NASまたはサーバ)と無線アクセスポイントさえあれば、SFORZATOでクローズドな再生環境を実現できます。ノイズまみれのLAN環境でインターネット/ルータからのノイズが来ないだけでも清々しいのです。分かりますか?

●ついでにオーディオ用として組んだとしても、さほどの作り込みもないコンピュータ単体を売るのは難しいという例を一つ。


 数年前に発表された英ChordのChordetteシリーズから今は消えた「Mogul」というオーディオ用PC。中身はWindows7をそのまま搭載した当時のNetBookクラスのPCで、特にソフトウェア環境の作り込みはなし。で、もし輸入したら約30万円という価格で、なんでかというとアルミ削り出しのケースがとても高価だというお話。何が「High Definition Micro PC」なのでしょうか?外付け電源ですかね?
 さすがにタイムロードも輸入しなかったのは当然だと思います。

 ある程度以上のスキルのある人でないと、結局はPC環境は使いこなせず、またそういう人ならIntelNUCあたりをはじめとしていくらでも素材があるので、自分で組んでしまうでしょう。
 結局は相当のサポートをつけるなどしないと、オーディオ用に組んだとしてもさほどの作り込みもないコンピュータそのものをオーディオ製品的な高い価格で売るのは難しいと言うことです。

●結局コンピュータのことを知っているだけでは、PCスキルだけでは、オーディオでは役に立たないんですよ。



2014年6月1日  ワイスMAN301の30周年記念モデル、384KHz/354.8KHzデータの再生機能の全モデル追加
●いま鳴っている音は我が家史上最高のものだと思う。音源環境を選べば地を這う低音が来て、空気感と音像密度の高いボーカルやピアノを聴くことができ、いまそこで演奏されているという強烈な実在感がある。
 ワイスMAN301は高品位なオーディオグレードクロック内蔵とは言え、まだ外部クロックとの同期機能アップデートは来ていないので、それが実現してアトミッククラスのクロックを注入すれば向かうところ敵なしになるだろう。

●今年はワイス・エンジニアリングの30周年でGolden MANという記念モデルが発売される。それにはディスクリートオペアンプ「OP1-BP」(BPはバイポーラトランジスタ)化した新DACボード基板を搭載しており、従来モデルでも希望者には新基板と交換するという強力な有償アップグレードが用意されている。ただし2014中に申し込んで予約を取り付けておく必要がある。

 以前、Firewireインターフェース「MEDEA Plus」と、ディスクリートオペアンプ化した「MEDEA Plus OP1-BP」を続けて聴いたので、その高性能さと高音質差は身にしみて知っている。ただあまりにも凝縮力の高い高密度な音だったので、カジュアルに愉しむには少しヘヴィかなとも思えたので、301クラスの小型ボードへの搭載はバランス良くさらなる高音質化を期待できそうだ。

●今回30周年記念モデルで時間を取ったので、外部クロックとの同期機能アップデートは次回になるそうだ。そして384KHzや352.4KHzのデータ再生機能が追加されるようだ。一般的に言われている384KHzや352.4KHz再生はゼロデータを打ち込んで単に見かけ上サンプリングレートを上げるだけで、音源データそのものは全く変わらないのだが、ワイスのそれは初めから384KHzや352.4KHzで録音されたデータをストレートに再生できるという機能なので、いわばホンマモンのDXDデータ対応だ。もちろんアップデートなので、これは全モデルに適用される。

 384KHzや352.4KHzデータ配信はまだ数は少ないが、ヨーロッパを中心にPyramix/Mergingがかなり普及しているので、DXDデータそのものは相当にストックがあるはずだ。
 もっともホンマモンのHiResであれば何でも良いというわけではなく、やはり良い録音演奏を選択すべきだし、日常的に聴くならぼくは経験的に24/96あたりがカジュアルで良いと思っている。192や176.4にはやはり高品位なクロックなどが望ましく、その音質をフルに発揮できる環境作りにはそれなりに気合いとコストもかかるので、言ってみれば可能性を確かめに行くような感覚で聴き始めるのが良いと思う。
 スペックはあくまで器としての可能性だけなので、スペック高ければ音良し、などという法則はない。

●ネットでは低レベルのくだらない雑音が多すぎる。実装機器の実装内容を知らず考えずして、音を聞かずして、何のオーディオか、あきれ果てる無脳さだ。ワシらはそんなものは無視して、できることを積み重ねて真剣に耳を傾け、より高みにある音が出てくれば恬淡と音楽を聴き愉しめば良い。

 Well Listening is perfect revenge.

 くだらない雑音にいちいち反論するより、いい音で音楽を日々愉しむ方がよほど残りの人生充実した日を送れるだろう。

 ただしちょっかい出し続けるなら、いずれ永久に晒される死体解剖記事を誰かに書かれても知らんぞ。



2014年5月28日  変化の風が吹きはじめたのかも
●友人から2chのLinux談話室で、音が変わるとしてもその理由をあまり細かく追求しない方が良い、というような記述があると聞いた。過去数回しか見たことがないけれども、そのときも少数ながら結構まっとうな意見もあったので、変化の風が吹きはじめたのかも、と一応のぞいてみた。
 もとよりバラバラな世界だが、確かにそういう論調はあった。実装回路を知っている人の方にそういう感覚が強かったように思うのは、こちらの欲目だろうか。

 あくまで基本的にだが、僕もその方向には賛成だ。

 実装回路にはあまりにも多数のファクターがあり、そのような多変数、多変量、多パラメーターの相互に影響する系をモデル化して解析する手段が現実的にはなく、どうしてもどこかを単純化した前提で議論しなければならなかったり、誤解を招きやすく不十分な物でしかあり得ないからだ。

 ならば再現性の高い音質変化については完全に解明できなくても、プロオーディオの人たちがしているように、経験的な整理して行った方が現実的だと思う。
 いい音を求めるならば。それで音楽を聴きたいと思うならば。

●だが、これらの掲示板から生み出された副産物や派生物は今やあちこちではびこっており、うんざりするような事態が相も変わらずネット上に展開されている。だからユーザーの混乱は続く。



2014年5月26日  オーディオ的名盤とはどんなものだろう?
●オーディオ的名盤とはどんなものだろう。思いつくところでは、Brian Bromberg"WOOD"あたりか。良く鳴ってくれて、チェック用にも使える。
 その点では「ケルン・コンサート」は僕にはオーディオ的名盤ではない。

●初期のECMにはやたら深いリバーブがかかっていて、どうやらあれは周波数特性を持たせたエコーらしい。またキースのピアノは左右に大きく広がった「お化けピアノ」であれも好きではない。
 ただ音楽的には素晴らしいものがある。そのライブネスというか高揚感がちゃんと伝わってくるときにはこちらの気持ちもバウンスする。聴くならやはりそういう音で聴きたいということです。

 マイルスの一連の録音がテオ・マセロの「はさみ」による物であることはよく知られているが、それでも音楽的な凄さはちゃんと備わっているのと似ているかもしれない。

●あと特に開始時点の会場のアンビエントノイズは女性のやや高い笑い声が入っていたり、どのように細部まで聞こえるかが結構面白い。これがちゃんと聞こえないシステムは結構多い。
 雰囲気感もあるが、こういう細部がちゃんと聞こえるかどうかは、システム全体のSN比や解像力、特に広い帯域に渡る音場感情報を音楽の一部として聴くことができるかどうかにかかっている。もちろんトランジスタラジオやPCディスプレイ付属モニターSPで聴けるものではない。



2014年5月23日  静かに苦吟しております
●秋葉館情報では、Appleが過去最高の買収額でヘッドホンメーカー『Beats』を買収するのではないか、と言うのが現実味を帯びてきた、と言うかほぼ確定だそうです。

ASRock 9シリーズ
 Macでも話題になったPCIeのSSD搭載可能で、ドスパラ情報によると「転送速度は PCIe Gen2 x2 で 10Gb/s!」だそうですが、こちらはこれからASRock 8シリーズ(Z87E-ITX)のHuswellの音質確認に入るところで追いつきませんなあ。
 もしZ87の結果が良かったら今のうちの確保しておかなければならないかも。うう、また物置がふさがってしまう......。

●メディアもPCやDSDだけではネタ切れで今年は出版もめっきり減り、イベントも減っています。本来は音を良くするための使いこなしなど深めていくべき事などネタは山ほどあり、また今しかできないこともあるのですが、①自分で考えて手を動かして、②自分の耳で音を聞いて、③自分で考えて方法論を練る、などということをなさらないような底の浅さでは、そこまで手も耳も回らないのでしょう。

●当方にはネットワークオーディオを含め中身と音質改善の実効ある企画やネタはたくさんあります。しかし仕事の減った皆様のお邪魔をする気はさらさらないのであえて出張る気も無く、静かに過ごしております。

 本(書籍)というのは書店に置いてもらえる期間が長いので、書く内容も変化に耐えるものでなくてはならず、そうなると基礎的な内容にならざるを得ないわけで、旬の話題でつなぐ雑誌とは自ずと違ってきます。基本がまだ確立も共有もされていない中で、また力業をやらなければいけないのかと苦吟中です。



2014年5月15日  買っておかれるなら市場にあるうちですぞ、おのおの方。
日経ニュースによると
パイオニア、AV事業売却へ 船井電機などと交渉

 同社のドライブ事業はAVとは別事業部とはいえ大赤字なので、報道内容から見ても今後売却対象となっていく可能性ありと見られます。とすると静音設定、PureRead2や3+というオーディオ用設定よりも、主力の映像用に低価格高性能が優先されていく可能性もあるかもしれません。
 せっかく片面256GBのデータアーカイブ用の次世代大容量光ディスクを共同開発したばっかりだというのに、トホホ。

 いずれにしてもこれこれを買っておかれるなら、間違いなく市場にあるうちですぞ、おのおの方。

(参考記事)
パイオニア、DJの聖地イビサで始まる反攻

リッピングでもダイレクト再生でもより安心のよい音



2014年5月14日  For All We Know
●消費税に関係ないAmazon.comやAmazon.deからCDがどっと届いており、同じ録音のCDでもリマスタリングなども含めて音はかなり違うので、老人仕様の身体ではありますが、合間合間に寝ながら夜更かしして頑張っていろいろと選別中です。あ、ヘッドフォンはゼンハイザーHD-580愛用です。
 最近気になるのは、話題になったボックスセットも含めて「AAD」のCDでとみに音質が冴えないものが増えていることです。アナログレベルでの音質維持ができなくなっているのかもしれません。スタジオもレコード会社もエンジニアの質は低下傾向のようで、こちらで選別するしか方策はないようです。CDの廃盤の速度は凄いので、いまのうちに古き良きCDを集めておかなくては入手不可になるのは必至でしょう。
 アメリカではLPがそこそこ売れていて復刻盤も元気な様子で、彼我の差にため息が出ます。

●Windowsファイルサーバは順調で、譲っていただいたDVDドライブも快調でストレージ作りに励んでいます。CDリッピングはLinux/UbuntuベースのワイスMAN301DSDでしているので、メタデータはWindowsから修正するとうまく行かないケースが多く、もっぱらUbuntu Studioから修正していますが、こちらはきっちりと見えてドンピシャにうまく行って結構幸せな気分にさせてくれます。
 GraceNoteもかなりジャケ画の漏れが多く、これからのようですが、何せメタデータから音は出ないので気持ちをおおらかに持つようにしています。
 「男は黙ってサッポロビール。アプリは黙って音楽再生。」の昔気質の人間なので、ケバいのは人間もアプリも好きになれません。

●そういえばUbuntu Studio 14.04 LTSのインストールもしなくっちゃ。かなり期待が持てそうで、楽しみです。
 LPも聴きますよお。

●ヘッドフォン祭りは行列もできる大盛況で、一方5月なのに今年はオーディオショウの声一つ無く、寂しい限りです。
 さすがにネタ切れのようでメディアも今年はめっきり減って、ジャーナリズムは仕事も減って大変そうです。他にもいろいろと寂しい内容の情報が続いているので、今年は「終わりの始まり」あるいは「始まりの終わり」の年なのかもしれません。一期は夢なのでしょうか?

●ホセ・ジェイムスの声の表現力は驚くばかりで、彼の周りの空気さえ感じることができます。ベルギー出身のジェフ・ニーヴのピアノも素晴らしく、ブロックコードをあまり使わず、美しく少ない音数で音楽を深く紡いでいく様には聞き惚れます。
 彼ら2人が共演した「For All We Know」では、「伴奏」という雰囲気が希少なので「それぞれに演奏している」という受け止め方もあるようですが、聴くと2人がいかに深く音楽を感じ合って表現しようとしているか、ひしひしと分かります。
 こういうのをしみじみ聴いていると、切なさと幸福感が同時にやってきます。

For All We Know (1934)
  Words : Sam M.Lewis // Music : J.Fred Coots

For all we know
We may never meet again
Before you go
Make this moment sweet again
We won't say "Good night" until the last minute
I'll hold out my hand and my heart will be in it

For all we know
this may only be a dream
We come and go
like a ripple on a stream
So love me tonight;
Tomorrow was made for some
Tomorrow may never come
For all we know



2014年5月7日  光学ドライブは仙界の話題か
Plextor PX-760Aは昨日到着して、順調に稼働中です。
 身体はガタピシでも、機器がうまく動けば心は軽いし、嬉しい。

●なんで嬉しいかというと、静音設定できて音が良いからです。
 まあ、こういう精妙な光学ドライブの話は物がもうないだけに、仙人どうしで清談するしかないですかねえ。



2014年5月6日  なさきどぅ宝よ。
●先日の記事にPlextor PX-760Aご臨終のことを書いたら、ずっと以前に交遊のあったかたから手持ちのPX-760Aを譲っても良いとメールをいただいた。
 十何年になるだろうか、その間ずっと拙サイトを読んでいてくださって、速攻メールをくださったわけだ。PX-760Aもありがたいが、この変わらぬご厚情と交遊の復活が何よりも嬉しい。深謝。

●島んちゅ曰く「なさきどぅ宝よ。」(人の情けが宝物だ。)



2014年5月1日  DVDドライブPlextor PX-760Aが故障してしまった
●DVDドライブPlextor PX-760Aが故障してしまった。
 Firewire400アダプタをつけて、そのクロックをD-Clockに換装して、長い間活躍してくれたのだけれども、修理もできず致し方ない。全国のベテラン達はみなこうした思いで、古いが優秀な機器達の最期を惜しむのだろう。
 後継はサブで使っていたPioneer BDR-S05J。僕はPCで映像は見ないし、HiResデータの収録用だけなのだが、音源用にはやはりしっかりしたドライブを使いたい。

●WindowsファイルサーバのIntel NUC(試作3号機)の電源などのチューニングがようやくまとまった。PC内部パーツは先に固めて、後は主として電源サイドだがこれがなかなかバランスが難しい。コンデンサなどに良い物が少なくなっていて少し決め手に欠けるが、虎の子も放出して実に良い感じに仕上がった。
 先日AC2の熊代さんが来られたときには先にASRock(試作4号機)が調整完了していたので、それで鳴らしただけのことで、この2つのWindowsファイルサーバ機ではそれぞれの特質を活かして僕なりに音質傾向をまとめ、広大な音場を得意とするASRockは主にHiRes用に、まとまり感のあって陰影が深く濃い音を出せるIntel NUCはCDリッピング用に使っている。どちらも旧のCore i 3だが、このあたりに再生用PCのバランスポイントがあるように思う。

 とにかくこれで、どんどんリッピングしてストレージ環境をまとめていけるので、とても楽しい。


【写真】Intel NUC(試作3号機)のWindowsファイルサーバ
 右側は外付けUSB3.0 HDDケース(Ratoc の新型ホワイトシルバーのRS-EC32-U3RWSをシングルモードで使用)

(注)以前にも書きましたが、マイクロソフトはWindows Home Server 2011を2013年末で販売終了しており、後継ソフトもないようです。もっと先があれば、いろいろと普及も考えることができたのですが残念なことです。しかし、個人的にはネットワークオーディオの問題点と可能性についていろいろと勉強させてもらいました。

●リッピングと言えばワイスMAN301DSDはCDによってかなり回転速度などを変化させながら、柔軟に対応しているようだ。
 こういう事ができるのも、ハードウェアとしてのドライブやSSDとLinux PCのソフトウェアを一体的に設計できているからだ。以前は沢山のドライブがあり、それに様々なソフトがバンドルされていて、ソフトウェアがドライブをちゃんと管理していたわけだ。今は回りっぱなしのリップしっぱなしに近い世界のようで、おまけにCDの仕組みも知らずにそれをいじくり回すならば、そりゃあ音も良くならないだろう。
 ドライブの切れ目がせっかくここまで来たPCオーディオの切れ目とならないためには、どうすれば良いのだろうか?

●そういえば、先日熊代さんに「理詰めな仙人」と呼ばれてしまった。まあ僕は営業はしないし、日々音楽とアートのことを考えているので、浮き世離れしていると言えばそうなのだが、理詰めに見えるのは理屈の限界を知ろうとしているだけのことで、理詰めで音作りがまとまれば苦労はしない。
 あれこれ手を動かして、耳で聞いて、考えて、調べて、また手を動かす。耳を使い汗をかかなければ、唾を飛ばすだけではいい音など出せない。



2014年4月29日  CDに記録されたり、音楽再生時にPCの中を流れているデータには実際の音楽信号の半分くらいしか保存できていない。
●知人に宛てたメールから
 『そうなんですよね。
ネットワークオーディオって途中にかむ役者が沢山いて、そこで信号がノイズの中をいろいろロスしつつ、ノイズを引き連れて流れて来るわけです。
 パソコンではそれで良いとしても、オーディオではあれこれ対策しなけりゃ音質が上がらないわけです。
 なので、僕は「なにが悲しゅうてLANに音楽データを流さなあかんねん。しかもLAN上で音源に使えるろくなストレージがないし。」と全然やる気なかったんですね。
 ところがWindowsサーバという強力な音源にぶちあたったので、ようやく腰を上げた訳です。』


●いろんな方とお話しする機会があるが、過去のことはできるだけ話さないようにしている。過去は変えようがないが、これからのことは何とかできるかもしれない。
 だから大事なことは、「少しでも良い音で音楽を聴ける環境を、今からでも工夫して、どのようにして作ることができるか」だと思う。

●最近ことあるごとに初心者の方には、「CDに記録されたり、音楽再生時にPCの中を流れているデータには実際の音楽信号の半分くらいしか保存できていないんだよ。」とはっきりと言うことにしている。
 保存できている半分とは何か?一言で言ってそれは「振幅軸データ」だ。つまり、ゼロイチのバイナリ表現で何ビットかは保存されている。しかし、「時間軸データ」は保存されていない。「時間軸データ」とは刻々のクロック信号のことだ。もちろんサンプリングレートが例えば44.1KHzとか時間属性の情報は当然にあるが、CDに記録されたり、音楽再生時にPCの中を流れているデータ刻々のクロック信号は含まれていない。
 つまり「後ほど、実装機器の中で適切なクロック信号が与えられるだろう」という前提で刻々のクロック信号はデータの中に含まれていないのだ。
 これがどれくいらい重要な基本的事実であるかは、分かる人にはすぐに分かるだろう。(続く.....)



2014年4月25日  季候が良くなってきてありがたい
●季節の変わり目で風邪を引いたり体調が狂い気味だったが、季候が良くなってきたのが本当にありがたい。寒さを気にせず身体をグンと伸ばせるし、続けて眠れるようになってきた。疲れが溜まっているので、泥のような眠りだが、それでも少しずつ楽になっている。お風呂に入るのが楽しい。

●冬は寒いし、大阪には日頃行き来するような友達が近くにいないので、このままではほんまに孤独死しても分からんだろうなあと思うし、これはやっぱり南の島だなあ、とつくづく思う。
 近くに気楽に食べたり飲んだりできる美味しい店などあれば良いのだが、大阪市内と違って郊外は至ってそういうのがなく、自分で作るのもしんどい厳寒の季節にはええい1食抜いて寝てよう、などとなってしまうが、冬眠できるわけでもないしね。

●もう楽なのがゆっくりが良いです。
 明日は母の顔を見に行こう。



2014年4月24日  一期一会的ななにか
●この本については書いておきたい。結構ハードな内容で、実は読むのを何度も止めた。で、結局何回か読み直し始めたら読んでしまった。
 ジェイムズ・トンプソン「凍氷」(集英社文庫)。フィンランドを舞台にした刑事小説で、前作「極夜(カーモス)」(同上)の続編に当たる。
 著者はアメリカ人でフィンランド女性と結婚して、ヘルシンキ在住。小説ではその逆の設定で、主人公の刑事がアメリカ人女性と結婚している。

●たまたまフィンランドに行った経験があるので、何となくだが土地勘があるので、例えば「寒さ」というのが途方もないものだろうくらいは想像がつく。そして長い冬。気候的にはもちろんだが、独立して100年も経っていない国で、他国に支配され続けて政治的に長い長い冬を越えてきたのだ。第2次世界大戦ではナチスドイツと同盟した。ソ連よりはましだという不毛の選択だと思っていたが、「凍氷」を読むとなにやら微妙なところもあるようだ。政治というのもクソだ。

●ヨーロッパのしたたかさや何とも言えないしぶとさのようなものも感じる。

 「この件について、アメリカとヨーロッパのあいだには文化的に大きな溝が存在する。アメリカは絶えず変動し続けてきた。そして建国以来ほぼずっと戦争状態にある。俺たちヨーロッパの人間は何世紀もかけて、変化と転換は戦争や貧困や混乱をもたらすと学んだ。そしてそれをおそれる。だから俺たちは、億万長者になれる可能性より、中流の暮らしを選ぶ」[「凍氷」(集英社文庫)]

 じゃあどこか不安がつきまといながら転がり続ける日本って何だ?

●ダークな苦い何かがつきまとうけれども、最後に彼ら夫婦に娘が誕生して一応ハッピーな雰囲気となる。どうやら一本気な主人公は祖父の親友のおかげもあって犠牲にされずに、しかし生き残る可能性はあるものの病気も見つがり、とにかく次作にはつながるようだ。めでたくはないが、一息はつける。
 人生というのは苦い。

●昨日の記事でケルンコンサートが凄い音で鳴ったという話は掛け値なしの話だ。僕も熊代さんもこういうことを軽々に言ったり書いたりする人間ではない。
 あの時はお互いに工夫していたいくつかの事が重なって、一期一会的な音が鳴ってしまったのかもしれない。そういう時もあるのだと思う。ならば、大事にしなければならないだろう。



2014年4月23日  リスニングルーム近景写真
●岡山AC2の熊代社長が我が家に来られたときのリスニングルームの近景写真が同社サイトにアップされています。
 「Hi-End NetWork Audio System」「Top-End オーディオファイル」というのはいささか面はゆいのですが、カタツムリたちに免じてご容赦下さい。

●このときにWindowsファイルサーバ(試作4号機ASRock)、ワイスMAN301、AC2の秘密兵器で出ていたキース・ジャレット「ケルンコンサートPart1」(24/96 HD Tracks、FLAC→WAVE)の音は確かに凄かったです。音についての感想はこちらにあります。

●僕はPC/Mac/Linuxを使っているだけで、その中ではLANも伝送路の一つであり、PC共通のファイル共有がDoP抜きの裸のDSDファイルも含めて自在に行えるのと、たまたまWindowsファイルサーバというパワフルなストレージに出会ってしまったのでネットワークベースでやっているだけで、いわゆる「ネットワークオーディオ」などという大層な意識は全然ありません。PCもネットワーク/LANもデジタルオーディオとは別物の技術なのですから、ノイズの嵐の真っ最中に「音楽 データ」を伝送していかなければならないのは、オーディオ用途でのPCでもネットワークでも同じ事です。
 大局観のなさが、レッテル貼りや方式論へのこだわりを生む背景にあります。



2014年4月21日  ウブスタ君がっかり
Ubuntu Studio14.04がリリースされたがLow Latency カーネルだけで、以前アナウンスされていたrtカーネルはリリースされていない。「Linux RT Kernel for Ubuntu 14.04 Trusty」も昨年9月の記事止まりなので、とにかくrtなしでスタートしたらしい。
 専用の環境も用意しておいたのに、がっかりだ。いつも書いているように理屈でReal Timeが良いとか言っている訳ではなく、蛇口全開なリアルタイムカーネルの音が好きなのだ。11.10 OneiiricのReal Time Kernel環境tと13.10のLow Latency環境では13.10にも良いところがあるが、全体としてのエネルギー感は11.10の方が好きだ。

●しょうがないので、1月位して安定して来たらインストールしてぼちぼちと様子を見てみよう。誰かがひょっとして手をあげるかもしれないし。
 JRiver Media Center for Linuxも様子見だ。

●こうなると現行のUbuntu関係ではワイスMAN301だけがrtカーネルを持っている、ということになる。我が家の11.10 OneiiricのReal Time Kernel環境は大事に使い続けることにしよう。

◎Linuxベースのプレーヤーと言えば、SFORZATO岡山AC2が扱い開始という前回記事のニュースは喜ばしいが、実際にユーザーさん、特に初心者が使い始めるにはいろいろとハードルがある。
 音源のNAS/サーバづくりが一番の関所で、要はPC/Macを母艦とするサポート環境の構築が必要だ。これを勉強して一から組め、というのは良い音で音楽を聴きたいだけの音楽ファンや初心者にはあまりと言えばあんまりだ。
 なので、これらをショップが選び環境設定したパッケージとして提供して下さるよう、AC2さんにはお願いしている。サポート費用はPC業界でも有料なので、コストが上がるのはやむを得ないが、ハード・ソフトともにセットされて、ちゃんと使い方を聞ける相手がいるというのは随分と助かるはずだ。
 もちろん腕に覚えのある向きにはご自分で自力更生されるよろし。



2014年4月15日  岡山でSFORZATOを聞けます。
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●B&Wノーチラスの調整をお願いしていた、岡山AC2の熊代社長が忙しい合間を縫ってはるばると我が家にお越しになった。

 相変わらずエネルギッシュにいろんなお話を聞かせていただいたが、一番の注目はSFORZATO製品を扱われるようになったというニュースだ。2月21日付け記事でもご紹介したように素晴らしい機器だが、実際に聞ける場所が多くないのが悩ましいところだった。また、本体の操作は非常にシンプルなもののの、ストレージやLANなど周辺機器や環境設定については、やはりしっかりしたショップのサポート付きで、いわばパッケージで提供してもらった方が、ユーザーにとっては遙かに心強いことになる。

 AC2の扱いにより中国地方はもちろん、新幹線が整備された今日、九州や京都北陸あたりまでカバーできるので、機会あれば是非足を運んで聞いていただきたい。
 聞いた瞬間、足を運ぶだけの値打ちのある機器だということが十分にお分かりいただけるだろう。

●さて熊代さんのことだから何か必ずビッグサプライズを持ってこられるのが恒例で「くまった、くまった。」に相成るのですが、今回はやはりネットワークがらみだった。どうしたものかと腕組み思案中であります。



2014年4月9日  母が退院しました。
●母が退院しました。急性肺炎の症状軽快で基本は変わらないのですが、慣れた環境に戻してやれて嬉しいです。

●濃い薄いも大事だが、全ての真実に直面できないならば、曖昧なままにしておくのも良いことがある。
 ジュード・ロウの映画「クロコダイルの涙」にはためになる言い回しがたくさんあります。

 Somethings best kept unsaid.
 Somethings better left unseen.

p.s.原題は「The Wisdom of Crocodile」でしたが、どうも「Immortality」に改題されているようです。前の方が断然良かった。どこの世界も同じで、後知恵は賢しらなだけで結局何かが失われる。

●さて、それではこの間明確になった「ネットワークオーディオ音質向上対策の基本」について気が向けば次回からゆるゆると勧めましょうか。



2014年4月5日  ぬちどぅ宝(命こそが宝物)
●老母(96歳)が急性肺炎で入院しました。抗生剤点滴で軽快しつつあり、今回は1~2週間で退院できそうですが、ドクターからレントゲンやCTスキャンの結果を現実として見せられると、弟共々に心底めげました。
 当分全ての予定はキャンセルです。各方面ご理解あれかし。

●帰宅してともかく夕食をかき込み、一寝入りしてメールを見ると、香港のKentがギターを聴いて喜ぶ双子の赤ん坊(1歳未満)の映像をFacebookにアップしていて、この殺人的かわいさには癒やされました。一切は命は巡りつつあり、新しい命もこうして芽吹いている。

●いずれ来る別れを避ける方法はない。そう思いつつ、しかし僕にはこれを受け入れる力が無い。自身でもあちこちに先回りして少しずつ別れを告げ始めていた矢先に、己のはかなさと愚かさを思い知らされた気がする。
 とにかくいま手元にある何やかやでやっていくほかはない。余計なものは捨てよう。日々を大事に、身の丈に合った暮らしに還っていこうと思う。

●祈りと音楽。



2014年4月1日  音、沈黙と測りあえるほどに
●ECMやATCなどで聞けるポーランドのジャズにはとても惹かれるものがある。トーマス・スタンコのなまえは知っていたけれど、amazon.comにオーダーしたのは、マイクル・コナリー「ナイン・ドラゴンズ」(上)を読んだからだ。無断で引用させていただくと「午後4時、『ソウル・オブ・シングス』がかかると、ボッシュは、マイルスでさえ不承不承スタンコを認めざるをえないだろうなと思わずにはいられなかった。」

 ちなみにこの小説は、後半香港に舞台が移ると途端に緻密さはどこかへ行ってしまい、嫌いな映画「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」めいて、いかにも白人的に荒っぽくなるが、それでもこれは「父親ハリー・ボッシュ」を描いた傑作だと思う。ラストが沁みる。

トーマス・スタンコ・カルテット『ソウル・オブ・シングス』は若手3人と組んだカルテットでのECMへの初録音。オスロのレインボウ・スタジオでエンジニアはヤン・エリック・コングスハウだから音は悪かろうはずはない。2曲目で少し叙情的になりはするが、徹頭徹尾抑制の利いた静寂の美しさ。武満徹の書名を思い出さずにはいられなかった。

●沈黙は音がない事ではない。ワンポイントやペアマイクでちゃんと録ると無音の箇所に「サー」という音が入っている。我々の耳には「シーン」と聞こえる空気の動く音だ。(この音が聞こえるか聴こえないか、どう聴こえるかでシステムの能力はおおよそ分かる。例えば矢野顕子「ホームガールジャーニー」
 沈黙は単なる余白ではない。例えば水墨画を思い出されたい。

●ECM2作目の「Suspended Night」は、より弾むバウンスが生き生きとして、こちらも大好きだ。2枚続けて聞いても飽きないのは、かなり珍しい。
 音楽もオーディオも最終的には感性なのだ。実装回路からの出音を感じ、手法とも照らし合わせて判断し、また模索する。出音と音楽についての話抜きにオーディオは成り立たない。

●ここんとこストレージやLAN環境のノイズ対策に取り組んでました。そのなかでIOデータの「RockDisk Next」はハードディスクを自分で選べるし、安価なわりには機能のカスタマイズができるので、東芝の1TB1プラッターのHDD「DT01ACA100」を組み込んで、いろいろと遊んでました。メディアサーバ機能(DLNA1.5相当)を停止してDLNAは働かせずにSambaだけにすると、SMB/cifsが機能したファイルサーバになります。簡単に言いますと、DLNAはファイル共有の仕組みであるSambaなしには動作しませんが、Sambaがあれば単体のファイルサーバとしてNASはより軽快な環境で動作できる、という事です。
(メディアサーバ機能/DLNAをオンしたときの動作確認環境はこちら。)
 ファイルサーバならばコンピュータ共通のファイル共有の仕組みで動くので、受けるプレーヤー側がPCまたはPCベースの機器(ワイスやSFORZATOなど)だと確実に接続・伝送できます。GNU/LinuxがLANなどのインフラとして使われているoppoやCambridge Audioのような大抵のDLNA機器でも再生できて、なかなか抜けの良い音です。WindowsはもちろんMacからもフルにコントロールでき、もちろんファームウエアのアップデートでDSD再生も可能。

 最終的な音質とパワー感は電源(12V)により決まるので、これは各自工夫のしどころですが、工夫次第でQNAP TS-119あたりの重たい音よりも十分に使えると思います。



2014年3月26日  カンシオンのコンサートで会いましょう
●昨日紹介した福山敦子さんのコンサートが5月3日午後3時に大阪で開催されます。会場は「うつろな瞳」他のワオンレコード名録音を生み出したOAPアートコートギャラリーで、大川沿いの小さなギャラリーホールですが天井高が高く響きがそれはそれは美しいスペースです。
 僕も行きますので、関西近辺の方々、初夏の午後の美しい川辺に是非足をお運び下さい。

●LAN環境構築とノイズ対策がようやくまちまりつつあります。アメリカまたはイギリスから届くスイッチング電源のどちらかがハブ用に使われて、一段落です。
 ところでネットギアのハブGS108PEは、サイトからダウンロードする「ProSafe Plus」ユーティリティ・ソフトを使って、ポート毎に優先度を選択できるのをご存じでしょうか?低から高まで4段階の優先度を設定でき、NASやネットワーク・プレーヤーなど音楽や映像などクリティカルな信号を扱うポートは当然「高」にするわけです。例えばこちらをご覧下さい。
 そうすると音質も向上するんですねえ。音楽を聴くためには、こういうものを使わなくっちゃいけません。



2014年3月25日  カンシオン~歌うかのごとく
●消費税増税前で結構ネット通販も盛り上がっているそうな。


●素敵なCDです。デュエットで知られる福山敦子さんのギター独奏曲集「カンシオン」。前回のクラヴィコードと同様に金田式マイクで録音されており、実に繊細でしかも粒の立った音。福山さんの愛想曲ばかりなので、実にこなれてはいるけれども深く掘り下げた情感豊かな演奏です。
 少し控えめな音量で雰囲気を愉しむのも良し、きちんと相対して聴くと「アストゥリアス」など鳥肌物です。
 現在アマゾンで予約受付中。いまのうちに是非どうぞお手配を。



2014年3月12日  DCプラグは難しい
●電源のDCプラグというのは厄介物でコンタクトが安定しないとか以上に、国際的にも規格がなく日本でもせめて国内だけでもというEIAJ規格があるだけで、グレードアップしたいと思っても困ることが多い。
 外径5.5・内径2.1または外径5.5内径2.5というのが比較的多く、外径5.5・内径2.1を基本とした変換プラグも出ているので、amazonで入手してみた。「DCジャック変換アダプタ12種セット/メス5.5×2.1→オス12種類」というもので、外径5.5内径2.5も含めて結構使える。

 例えば8倍速というまともなCD直接再生がほぼ唯一可能というパイオニアのBDドライブ「BDR-XU02Jなどは外径3.4内径1.4が必要だが、この変換プラグの外径3.5・内径1.35できついが何とか使えるようだ。

 しかし、例えばKORG MR-1000の場合には適合するプラグがない。
 なので、変換プラグに頼って適合させるというのはサイズ面で現状では限界があるようだ。またオーディオではできるだけアダプタは噛ましたくないという感覚もあり、できれば付け替えるのが好ましい。

●秋葉なら秋月電子、大阪日本橋なら共立電子のような専門店に現物を持っていって、適合するプラグを入手して自分で半田付けするのが良いが、それが不慣れな方には不安もあるだろう。

AY電子エルサウンド電源の場合、外径5.5内径2.5を標準として、\1,000で希望される別サイズのプラグに換装可としているが、実際にはなかなかややこしく現品を送ってもらって適合品を探すことも多いそうだ。ここまでやってくれるところは多分他にはないだろう。
 現在一番商用コンピュータでの再生で音質的にダントツに良いのがMacBook Air(最新Huswell)上でのAudirvana Plusだと思うが、同社には「マックパワーキット」があって、MacBook Pro/Airに電圧切り替えで給電できる。Audirvana Plusには不要機能を停止させるソフトウェア環境最適化の機能があるので、MacBook Airにマックパワーキットで良質な電源を給電するのが音質的、コスト的に一番の近道と言えるだろう。



2014年3月7日  重箱の縁
●オーディオに関して言えば、僕は少しでも良い音で音楽を聴くためにあれこれ工夫しながら日々を過ごしている。
 例えばRCAジャックの部品一つを延々と時間をかけて耳で聞いて選別するというような作業は、ネットをポチしてテキトーに探すようなのとは訳が違う。

●既得権益にどっぷりつかった年寄りの贅沢と思う人もいるかもしれないが、それは違う。いろいろあって、僕は51歳で勤め人生活におさらばした。つまり平均より10年ほど早く後進にポストを明け渡したわけだ。その後はいろいろと、あれこれとあったけれども、今日ただいままで、何とか、やってきた。
 はっきりと言わせていただくが、これらはいくばくの悪運の埋め合わせと少しの幸運と、残りの大部分は僕自身の努力によって勝ち取ってきたものだ。

●名古屋の和田さんがブログの「良質なハイレゾ音源を作る!」で、『でも、世の中全般から見た場合、オーディオファイルはごく少数派であり、大多数からは「高質な音源が欲しい」という要求そのものが無いのかも知れません。 そういった観点から見れば、K’s は重箱の縁を突いているにすぎません。』と書いておられるのは、我が事のようで身につまされます。

●例えば30何ビット384KHzとかのバブリーなスペックの「お墨付き」が欲しい人たちがおられる。30何ビットとか言ってもソフトウェア上での桁数をいくら上げても、最終のDA変換など物理的デバイスでの処理は「理論値」24ビットが最高で、実質的なアナログ特性値では21ビットも難しい。384KHzであろうがアップサンプリングはサンプリングレートを上げるだけで、データを書き換えるわけではないので、結局自己満足以外はほとんど意味が無い。ただのスペックインフレ。
 でもこういうバブリー大好きなおじさん達がお金を使って下さるから、マーケットももっているわけで、そういう意味ではもっとリップサービスに努めて囲い込んで、もっとお金を使って広告塔にもなって下さるようにした方がギョーカイ的には良いのかもしれませんね。
 結局、耳で聞かない人達には「お墨付き」の満足感があれば良いようで、「本当に」高音質な音源は実際にはやっぱり不要のようです。

●基本的にはほとんどあきらめてはいるが、しかしすぐには役に立たなくても、「パイロットケース」の積み重ねが方向性や方法論のイメージくらいには寄与するかもしれない。そう思ってこつこつとやっている。
 
 本当を言えば、経験上ではオーディオだけでももっともっと10倍以上書くべきことは実際にある。高い水準を求めれば、随分と考慮すべきことはあるし、それくらい、どこか触れば音は変わるのだ。(データは変わらんぞ!)
 だがいちいち書いてられんので、変化量が多くて再現性のある物だけを選び抜いて書いている。

●最近良いCDを探しているが、そうすると友人達がいろいろと教えてくれるのでありがたいものだ。
 パット・ベネターの「In The Heat Of The Night / Crimes Of Passion 」「Precious Time / Get Nervous 」の2枚は東京の友人が教えてくれたのだが、「AAD」となっていて、アナログ爛熟期つまり70年代末~80年代初頭にかけてアナログで録音され、アナログで編集されて最後にCDになったものだ。伸びやかな声とベース、広がるギター、豊かなドライブ感とグルーヴ感に満ちていてとても気持ちが良い。
 これらのCDはアルバム2枚分をCD1枚にしたというだけでなく、いかにもロックらしいストレート音が満ちあふれていて、しかも安い!といっても単なるお徳用CDでは断じてない。最近のお勧めNo.1だ。あるうちに是非買っておいて下さい。絶対に損はしない。

 特に3枚目の「Precious Time」が好きだ。ラストのレノン/マッカートニーの「Helter Skelter」なんか今聴いてもやはり唖然とするポテンシャルの高さ。
 ちょいと調べるとアンジェイフスキーという本名から分かるようにポーランド系で、しかし親父さんは成功したお金持ちらしい。でもジャケなどからは蓮っ葉なパンク少女としか思えなくて、多分表現したくてたまらない何かがあったんだろう。ずっと後のCDのいかにもしっかり者のお母さん/奥さんという感じのジャケ画からは、こんな風に成熟したんだと思えて少し嬉しい。



2014年3月6日  沖縄、Windowsファイルサーバ
●しばらく更新が途絶えていましたが、先週末は沖縄に滞在して、友人宅でオーディオにふけったり、ワインをしこたま飲んだり、在庫数が凄いジュンク堂の那覇大型店舗で本を買って、ホテルやスタバで原稿を書いたりしていました。
 帰ってきたら春はどこへやら、おお寒い。

●友人宅では①音源ストレージとしてのファイルサーバをセットして聴く、②LAN/ネットワークのノイズ対策のと入り組みました。
 ②については稿を改めることにして、①はLAN接続=ネットワーク経由で音源データを供給するWindowsファイルサーバです。ソフトウェアは昨年末で販売終了となった「Windows Home Server 2011」で、120クライアントまでのクラサバの核としてネットワーク経由で対応できるパワフルなソフトです。
 知人のエンジニアが聴いてみてちょ」と持ってきたときには「Windowsなの?ふ~ん大丈夫?」という感じで聞いたのですが、鮮度感が高く前に出てくる音に口あんぐりで、その後何人かのお客様にも聴いていただき、皆一様に驚いていました。どうもいろんなクラサバ・システムをこなさざるを得なかったので、きわめて実戦的なファイルサーバとなっているようで、理屈よりも音質に動かされました。

●販売終了となったので書くのをためらっていましたが、言い換えると流通在庫が少しある今なら最後の最後のチャンスなので、またいろいろと具体的な経験知が得られたので、書いておきます。

●しかもファイルサーバからは相手がPCベースであればPCが扱えるデータは全て伝送できるので、DSDデータもDoPマーカーなどつけなくても問題なくそのまま送れます。大抵のDLNA機器ならば音源として使えるので、最強力な音源ストレージと言えるでしょう。

●エンジニア氏の協力を仰ぎ、いろいろなハードで試作して、最終仕様としてハードウェアはIntel NUCの旧モデルマザボCore i 3-3217U)とラトックシステムのUSB3.0出力HDDケースなどで構成し、ファイルサーバ機能だけを動かすソフトウェア環境としています。また、メインメモリも制限いっぱいで動作させるのは良くないようで、試聴の結果動作電圧を1.5Vから1.35Vに下げています。

●残念ながら昨年いっぱいで「Windows Home Server 2011」は販売終了となり、後継バージョンも出ないようです。後は2,000円でMavericksに追加できるMac OS X Serverくらいでしょうか。
 もちろんこういうカスタムな物だけでなく、IOデータのNAS「RockDisk Next」キットも取り寄せてみるとなど面白そうです。具体的には、①QNAPのようにHDDにシステムを書き込まず高速なフラッシュに書き込み、処理を分けてシステムは高速化、②不要な機能のデーモン(Windowsでいうサービス)を停止することができる、③軽快なNASコントローラにSDRAMメモリをつけて高速に処理、などで、ノイズ対策をさらに加えていろいろ試す予定です。4畳半の物置部屋の大半が足の踏み場もなく、、もう使わない製品が溜まるばかり、という身には、安価なのが懐に優しくてよろしいです。

●これらの経験も踏まえると、音源側は必ずしも速ければ良い、パワフルであれば良い、と言うことではなさそうです。



2014年2月23日  WEISS MAN301DSDレビュー(英/和文)が、ワイスの新オフィシャルサイトに掲載されました
●SFORZATO DSP-03には面白い機能があります。「絶対位相の切り替え」です。と言っても「何じゃらほい?」という方はググって下さいな。CBSの録音などひっくり返すと面白くなります。僕のリクエストに小俣さんが、ESSのDACチップの機能を活用して設けて下さいました。画面の左右両側の2つのボタンで豊富な機能を選択できます。

●アジアワイスのサイトに寄稿した「One & Only most advanced Music Archive Network Player "WEISS MAN301DSD"」の英文・和文両バージョンが、スイスのワイス・エンジニアリング新オフィシャルサイトにも掲載されました。



 こちらの「MAN301 network player」のページを開いて、下の方の「REVIEWS AND USER FEEDBACK」をクリックするとレビューの一覧が出てくるので、「MAN301 REVIEW BY TERUHISA ONDA(ENGLISH)」「MAN301 REVIEW BY TERUHISA ONDA(JAPANESE)」クリックしていただければ英文、和文がそれぞれ立ち上がります。

●掲載もさることながら、現代デジタルオーディオ界のウイザード的存在であるダニエル・ワイス氏から「I very much appreciate your findings.」と評価していただけたことが大変嬉しかったです。



2014年2月21日  SFORZATOのネットワーク・プレーヤー DSP-03 とマスター・クロック PMC-01 BVA
●写真は話題のSFORZATOのネットワーク・プレーヤー一体機 DSP-03 ワオン・レコードの小伏さん。実は一昨日にDSP-03を聴きに来られて、アサヒステレオセンターの梅川社長もご一緒だったのだが、写真を撮るのを思いつく前に急ぎの用事で帰られたのでこの写真と相成った次第です。

 ある本の記事のための試聴にお借りしたのですが、その内容は要するに「最高のPCオーディオ」とは「本物のプロフェッショナルがPCを駆使して作りあげたオーディオプレーヤー」だと言うことです。この「最高」が難しくて、PCを知っているだけでは話にならず、オーディオと音楽について深い経験と知識を持ち、どのような音をどのように出すか、あるいは出さないようにしていくか、きちんとしたレシピを持っておられることが必要だ。つまりはそれがワイスであり、SFORZATOと言うことです。

●SFORZATO代表の小俣恭一さんは日米欧のIT関連企業を歴任され、帰国後は家業を継がれる傍ら、ご自分の大好きなオーディオで良い音楽を良い音で愉しんでもらいたいと、志を持ってSFORZATOをローンチされた。貴重なパーツや基板が溢れるラボの隣には、試聴室があり、少し無骨なドイツ製業務用パワードスピーカーが実に芯のあるしっかりした音を溢れんばかりのニュアンスで鳴らしていた。音は何よりも雄弁にその「人」を語る。この音を聞いたとき、僕ははるばる東京郊外の日野市までやってきて良かったと思った。従来のオーディオの畑とは全く違う土壌で咲き始めた新しい花に出会うことができたからだ。
 それ以来連絡を取らせてもらって前作のDST-01も聴かせていただいた。本という物は出るまでに時間がかかるので、その一端を先にここでご披露するわけだ。

●今回はDSP-03に加えて、凄い物も一緒にお借りできた。
 右の写真は上がDSP-03の電源部。
 その下の機器が、まちがいなく世界最高級の10MHzアトミック級マスター・クロック・ジェネレーターPMC-01 BVAだ。これは「BVA」と呼ばれる特殊な水晶振動子技術を用いたスイスのオシロクオーツ社の恒温槽付水晶発振器 ( BVA-OCXO )8607発信器ユニットを使って、その超優秀な近傍位相ノイズ特性を活かすために、余裕ある超ローノイズ電源、こだわりの内部配線などより抜きの技術の粋をアルミブロックからの削りだしによる堅牢な筺体に納めたものだ。
 僕もいろいろと模索のあげく米Stanford Researchの超高精度水晶SC-10を使ってアトミック級クロックを自作しているが、そのリサーチの過程で確信したのは、何万年に何秒しか狂わないという時計あるいはラボ用などのタイムベースとしてはルビジウムは最高の物の一つだが、音質については瞬間瞬間の音の佇まい、つまりは「短期安定性」や「位相ノイズ」が重要であり、その点では超高精度水晶がデータ・性能的にも音質についても優れている、と言うことだ。
 PMC-01 BVAは製品として初めて、それも超弩級でこれを体現した物である。まあ音には好みもあるので、これくらいにしておこう。

●小伏さんと梅川さんとご一緒にいろいろな音楽を、バッファローのNASや自作サーバを使い分けて聴いた。コントロールアプリにはiPhoneアプリの「Media Link Player」(iPad用のLiteではなく)を使い、設定も操作もいたって簡単で、初心者の方もすぐに使いこなすことができる。
 小伏さん、梅川さんともすぐに意見は一致したが、本当にDSP-03は素晴らしい。DST-01はやや一本気で律儀なまでの詰め方が見事だったが、DSP-03ではそこが柔らかくほぐれていて、スケールが大きく、しなやかでしかも芯があり、どの音源についても様々なニュアンスをきっちりと表現する。音源にもよるが音場感は左右は勿論、前後まで聴かせてくれるのは実はかなり珍しいと言っても良いだろう。小俣さんはいい音を出したいというのが基本の商売気のない人なのでこの価格に納まっているが、正直この価格でこれだけ音楽を深く豊かに聴かせてくれるネットワーク・プレーヤーはとても思いつかない。いい音を出してくれる生涯のパートナーをお捜しなら、あらゆる機会を捉えてお聞きになるべきだと思う。おそらく、そのうち何人かの方はそこでようやく旅の終わりに達し、安らぎを見いだされることだろう。 

●そしてマスター・クロック・ジェネレーターPMC-01 BVAだ。これを接続すると一挙に超絶的世界になる。単に細かい音が聞こえるという物ではなく、音の彫りがより深くなり、陰影やニュアンスがぐんと濃くなるのだ。前後の音場感はさらに大きく明確になり、音楽体験の質そのものがぐんとレベルを上げてしまう。
 これは聴かないとお分かりにならないと思うが、値段のことなどどこかに行ってしまい、ただひたすらに音楽だけが在るもの凄い世界だ。

 ワオン・レコードのクラヴィコード新録音「静寂の語らい」など、好適な音源だ。モーツアルトが短い人生の長い旅に持ち歩いた楽器だが、ここではアンナ・マグダレーナ・バッハの小曲に使われているそういう小型の楽器と、より大型の2つが使われている。大型のクラヴィコードでも小音量だが、オーディオレベルを低め、というかこの楽器には最適レベルに設定していても、強く弾いたときのアタックとその音の深さは息をのむ。名手上尾さんの見事な演奏にひたすら聴き惚れた。
 いい一日でした。

ネットワークオーディオというものは、実はまだ決して完成の域に達していない。その理由の大部分はLANネットワークを構成する各機器やNASなどの周辺機器がオーディオグレードには達していないところから来ている。小俣さんとも情報交換しているが、「まだ、なかなか良い物が見当たらないんですよね。」という彼の一言が物語るとおりだ。

 小俣さんから教えてもらっていたが、バッファローからオーディオ専用NASが出る話もリリースされたので、さて音質はいかが相成るか。
 ハイレゾ・オーディオNASだそうで、HDD搭載の 「HA-N1AH20」(1TBx2)が¥152,250、オーディオグレードSSD 512GBx2の「HA-N1ZS10」が¥714,000だそうです。またオーディオ用と名を付ければ、とか言われそうです、トホホ。HDDの方だけでも、もうちょっとお安くできませんかねえ。

この日の試聴ではネットワーク/LANのノイズの改善策も小伏さん達に試聴してもらったのだが、その話はまた続きで。



2014年2月19日  「自腹」の説得力
●共同通信のGaudio+PCオーディオfan サイトでの『【編集部発】自腹で試したぞ! HDDオーディオプレーヤー ソニーHAP-S1』が3回で完結したようだ。週間アクセスランキングにずっと1~3回がランクし続けているのも、関心の深さの表れだろう。やはり楽しく気軽に聴きたいですよね。
 また編集長自腹という説得力も大きいと思う。例えばCDレビューでも、自腹で買った人のCD評は実感が感じられて説得力があるのと同じ事だろう。

【編集部発】自腹で試したぞ! HDDオーディオプレーヤー ソニーHAP-S1 第1回
【編集部発】自腹で試したぞ! ソニーHAP-S1 第2回  使いやすい音源ファイル管理 
【編集部発】自腹で試したぞ! ソニーHAP-S1 第3回  ライブラリー作りで生じる謎の現象の体験的解消法

●実はある本で書くので、この上位機種Z1ESも我が家で既に試聴している。これからというところはいくつかあるが、中級機として十分に使えるし期待感の方が大きい。

ネットワークオーディオの大きな弱点は、①ストレージ(NAS)と、②LAN上の大量のノイズだ。
 
やはりNASは音質の割には手間やコストがかかりすぎる。QNAPなど汎用NASは、限られたマシンパワー(LinuxOSとCPU、メモリ等)の上でオーディオ以外の機能もてんこ盛りに多数のデーモン(Windwosでいうサービス)が起動しており、設定がややこしく結果としてパフォーマンスは良くない。
 また、オーディオ用NASと銘打つとそれなりのハードも必要で、OS的にも不要なデーモンや機能を省いたり汎用用途からのカスタマイズが必要で、どれだけの数が売れるか分からない中で、どうも高価になる傾向がある。(バックアップを考えるとRAID1も大げさじゃなかろうか?)
 両方使える環境なら、USB / Firewireストレージでローカルに直接接続する方がコストも低く音質は良い、というのが通例だと思う。
 SONYのHDDプレーヤーでは1クッションかむ形ではあるがLAN上での音源データ伝送も不要になり、ネットワークオーディオの問題点がクリアされているわけだ。

 だから言ったじゃないですか。海外ではネットワーク・プレーヤーの競合機種も少ないようで、USB メモリ挿せるんだから同じ伝送モードのUSB HDDも使える仕様にしておけば音も良いし扱いは簡単だし、内外でもっと売れただろうに。
 まだ気づきもしていないけど。

●ついでに言っておくと、OSが違ってもPC間でファイル共有できるcifs(サイフス)などの仕組みがあるので、およそコンピュータで扱えるデータは全てイーサネット/LANで伝送できます。
 イーサネット上でDSDがなんたらとか大騒ぎしているのは、単にDLNAの、それもTwonky Mediaなどの「メディアサーバ」というアプリケーションがDSD対応しているかどうか、というごくごくローカルな問題に過ぎない。ちなみにDLNAもUPnPもファイル共有など既存PC技術の上に成立している物だ。
 全体像、大局観がないからむやみに騒ぎ立てる。

●さらについでに「DoP」というのはMac OSのCore Audioつまりは「オーディオMIDI設定」が、Lion以降にrawDSDデータに対応していない(スティーブの遺産?)という、これまたローカルな問題に対応するための物です。社業を放り出して各国を奔走したアンドレアス・コッチさんもご苦労様なことです。
 立ち上げていただいたおかげで、副産物としてUSBオーディオクラス2.0を実装していないWindowsに、ASIOドライバーがハードウェアメーカーから提供される体制が整ったことで、全体としてはありがたかったですけど。
 ちなみにCore AudioつまりオーディオMIDI設定は別として、MacOS自体はUNIX互換ですから当然rawDSDデータをイーサネット経由で受けることができます。
 



2014年2月16日  「静寂の語らい」と改良型金田式無指向性マイク~ワオンレコードの新録音
●助けていただいたおかげでいろいろと懸案が片付いて、寒さにはめげるが大変ご機嫌な週末となった。良い音で音楽を聴く事ができる。高い情報量と豊かなニュアンスのデジタルサウンド。なんと贅沢で幸せなことだろう。



●ワオンレコード新録CD、「静寂の語らい」(5.6MHzDSD録音)などが届いた。録音機材に改良型金田式無指向性マイクが加わったのが今回の特徴だ。
 マイクアンプが不要なほど溢れるばかりの出力が確保でき、しかも精密感きわまりない音質が確保できるそうで、名手上尾直毅さんが奏でるクラヴィコードのような、小音量だが精緻なニュアンスが膨大な大情報量の楽器にはうってつけだ。HiResデータにはさらなる期待ができる。
 じっくりと聞かせていただいて続報致します。



2014年2月14日  銀世界
●大雪に閉じ込められたので、チョコレートもらいに行かれへん。誰もくれへんけど.......。



●「そんなこと言っても音の聴き方なんか分からないよ。」と言う方のために小泉由香さんの「マスタリング・エンジニアが教える 音楽の聴き方と作り方 (CD-EXTRA付き)」があります。CD聴いて音の聴き方覚えましょう。

 最近はスタジオエンジニアもどんどん職人気質がなくなってきて音も分からずレベルも落ちてるそうで、「そんなこと言ってもちゃんとマニュアルにしてくれないと分かりませんよ~。」とか唇尖らせて言う連中にうんざりして、こう言い渡すために小泉さんはこの本を書いたんだと僕は思ってます。「はい、マニュアルにしておいたから、これくらいの基本はちゃんとマスターしときなさいよね!」



2014年2月13日  「現状では、多くのオーディオファイルがもはや聞くのをやめている」(Kent Poon)
●「ユーザーの皆さんが耳をどれほどよりどころとして判断される状況にあるかどうか」について、新録音をまとめる一方で最近猛烈に更新を続けてしているKentのブログ記事が参考になります。(新録音のHiResサンプルはこちらから登録してダウンロードできます。)

● Kentの2作品、2000年の「After 6」と2009年の「Audio Jazz Prologue 3」を買ってくれたオーディオファイルDannyに「これらの年月が過ぎたいま、デジタルストリームの将来をどのように展望していますか?」と問われて、Kentがブログに書いてます。下記に訳しますが、英文もなかなか味のある語り口なので、是非味読してください。



"An old digital stream"

 現状では、多くのオーディオファイルがもはや聞くのをやめている、と感じている。彼らは良いオーディオシステムを通じて音楽から感動を感じる能力を失ってしまった。いまやオーディオファイルたちは DSD128, DSD256, DXD768 など数字を追いかけているにすぎない。

 アルバム購入者(オーディオファイル)と音楽録音製作者(レコード会社)との鑑賞という絆は既に壊れてしまった。オーディオファイルには良い録音がエンジニアの工夫によるものだということを理解していただきたい。良い音のCDは、いい加減なDSD768や24bit/768kHzをいつでも打ち負かすことができる。フォーマットが音質を保証するわけではないのだ。ピンぼけの写真を撮るために、30メガピクセルのデジカメを持っていることもできるだろう。何にも増して、同じやり方で製作されたのではない2つの録音を単純に比較することなどできはしない。PCMかDSDかの話題はもうやめて、双方のフォーマットを吟味するようにしていただきたい。フォーマット争いは愚かな事でしかない。オーディオファイルというのは録音をより深く聴き、エンジニアの音や音楽性とサウンドステージの奥行きと広さの全体を味わうもののはずだ。

 一方で、この時代のエンジニアについて取りあげたい。僕には自動調整やおかしな設定が求められて、エンジニアをプロツールズ頼みにしてしまうことや、きつい仕事と低すぎる報酬というライフスタイルについての苦痛が感じられる。しかし録音の質をできるだけ良くするためにベストを尽くしてほしい。自分の道を進んで欲しい。それはずっと続く音の歴史だ。そもそも素晴らしい録音エンジニアは良いコーヒーを淹れるながらスキルを積んでいくものだ。

 将来はLPに戻って行くように見えるし、僕はこれを楽しむだろう。LPが良いフォーマットであることにはいくつもの理由と限界がある。しかし、デジタルで自分の好みに合う良い録音をする事もできるのだ。(僕の好みはシャトーとロバート・モンダヴィの間で日替わりだけどね。)

 懸命に働きハイエンドオーディオ産業を推進する人たちに賞賛あれ。いまやほとんどの人がスマートフォンを見つめているけれども、どんな時でも良質な音楽やサウンドを楽しむ人々がいる。

 スティーブ(ジョブズ)が生涯でなしえなかったことはいくつかあるけれど、彼の精神は美しい製品の中に息づいている。美しいものは心がもたらす。音楽を楽しむ事と音楽を創造する事も心から来るものだ。

 技術は道具だ、そして道具でしかない。


[訳者注]最近、amazonで結構VynilつまりLPが増えてきて入手しやすくなってきたのに気づいておられますか?アメリカのオーディオ界の若いユーザーを中心としたLP志向の影響でしょうね。
 さあ大変だ。アナログの方がいい音聞けるなら、ちゃんとやらなければならない。
 わしもLP聴こ。



2014年2月10日  ディザ:「ノイズ」によってデジタルオーディオで音質が変化するという実績
●ファイルオーディオとかネットワークオーディオとか呼び名は何でも良いと思います。
 ただ、それによって区別や違いを強調するのは避けていただいた方が良いと思う。オーディオには自己正当化が常につきまとうので。また、その手段として使われるのはあまり好ましくないし、デジタルオーディオであることには違いはないので。

●USBケーブルやLANケーブルの音質の変化・違いについては、にわかに信じがたいという人もおられましょう。しかし、いつも勉強させていただいているこのブログで述べておられるように、例えば録音の世界で24bitから16bitに変換するときには「ディザ」というランダムノイズを加えて音質改善を図る手法があるわけで、既に「ノイズ」によってデジタルオーディオで音質が変化するという「実績」があるわけです。インピーダンスマッチングなど音質についての仮説的なアプローチを持ちつつ、耳で聞けることはちゃんと聞いて判断するというのが適切な対応だと思います。

●問題はユーザーの皆さんが耳をどれほどよりどころとして判断される状況にあるかどうかと言うことではないかと思う。それが混乱の核にあるのでしょう。

●我が家のネットワークのノイズ対策が大きく前進し音質改善をみたことを耳で確認できた。けれども、こういう状況は理解してもらいにくいだろうと思う。そこが悩ましい。
 PC的にはネットワークやLANケーブル上にノイズがある事を認めているし、それでもデータはちゃんと伝送されるので問題は無いというのがPCサイドの専門家の認識だ。で、オーディオ側では、まだまだこれからの話でしかない。



2014年2月6日  One & Only most advanced Music Archive Network Player
●先日寄稿したワイスMAN301に付いてのレビュー英文『One & Only most advanced Music Archive Network Player "WEISS MAN301DSD"』和文『高音質に音源を管理する最先端でワン&オンリーな機能をもつネットワーク・プレーヤー「ワイスMAN301DSD」』の両バージョンがアジアワイスのサイトに掲載されました。それぞれpdfファイルでダウンロードできます。
(「対象をファイルに保存」でダウンロードされますが、環境的に重い場合は、お手数ですが元ページの各ページ画像をクリックしていただくと、そのページが表示されます。)



●スイスのワイス・エンジニアリングの新公式サイトにも英文が掲載予定です。
 世界中のどのメディアでもMAN301のマザボ上のオーディオグレード・クロックについては全く触れていなかったので書いたのですが、やはりこういうネタは世界的にもマニアックなようです。
 ワイスの場合はデフォルト状態でマザボ上の内蔵オーディオグレード・クロックで動作し、今後のアップデートでアトミックグレードも含めて外部クロックに同期する、というのが特徴です。



●実はDPat Technologyのmodel0037TCSSという技術で、10MHzのアトミッククロックを外部から注入すれば、アトミック・クロックのグレードでUbuntu 64bit PC部分も動作します。



2014年2月6日  電子立国は、なぜ凋落したか「日本のパソコン、鎖国のときは栄え、開国したら衰退」
日本のパソコン、鎖国のときは栄え、開国したら衰退

 「日本市場が一種の「鎖国」状況にあったとき、日本のパソコン事業は栄えた。開国し、市場がグローバル化したら、生彩を失う。前回述べた携帯電話機の場合と同様である。 」
 ネットワーク・プレーヤーにUSB HDDをつけて欲しいと言っても無駄でしたので、SONYのHDDオーディオプレーヤーが刺激になれば良いのですが。

●ある意味では現在、「PCオーディオ」というのは風前の灯火と言っても良いのですね。
 馬鹿の何とかみたいに言われるかもしれませんが、パイオニアの静音設定できるドライブがなくなれば、これから買える現行製品として再生リッピングともにまともに使えるドライブはもう地球上になくなると言っても良いわけです。(ワイスMAN301のCDドライブはDVDドライブをLinux、それもオーディオグレード・クロックで動作するLinuxのオリジナルのアルゴリズムで4倍速再生し、リッピング時の速度を制御しています。間違いなくこれが現行では音質的に最高ですが、単体で発売される見込みもありませんし。)

●本来等倍再生である音楽CDというものは、CDの盤の状態でミュージシャンもプロデューサーもOKを出しているわけですから、この盤の音をちゃんとした状態で聞けなければ、物差しがないわけです。しっかりしたCDプレーヤーの一つもそばにあれば役に立つと思うのですが。
 まあ物差しなんか要らん、と言う人もいるでしょうが、そういう人は想定外なので。

河合一「デジタルオーディオの基本と応用」(誠文堂新光社)から。
 
クロックジッターの種類
1.Time Intervalジッター
 「理想クロック・インターバルに対しての実際のクロックポイントとの誤差」
2.Half Periodジッター
 「理想クロックの半周期に対する実際のクロックでの理想半周期からの誤差」
3.周期(Period/Cycle)ジッター
 「理想クロックでの理想クロック周期(Period/Cycle)と実クロックでの実クロック周期(Period)との誤差」

 『これらの各ジッターの内、オーディオD-A変換における変換精度(オーディオ特性)に影響するのは、「周期(Period/Cycle)ジッター」である。』
 『D-A変換の主流であるΔΣ(ΣΔ)変調機の動作においては、動作クロックの立ち上がりタイミングでの動作を実行している物が多く、この場合、クロックの立ち下がりは関係ないので、動作クロックの立ち上がりー立ち上がり間の周期、すなわち、クロック立ち上がり周期ジッターが変換精度に影響することになる。』

 『D-A変換システムクロックのクロックジッターを一般的な300MHz帯域程度のアナログ・オシロスコープで観測してもジッター成分はまず見ることはできない。』ので、測定にはやや高価な測定システムが必要になるのだそうです。

 実際にはこの後に複雑な話も出てくるのですが、全体を見るならば、要は光学ドライブ、HDD、PC、DAC、それらを接続する各種インターフェース、それぞれのレベルでジッターが存在すると言うことのようですね。

●DA変換の精度と言っても精度が悪くなってデータが化けるとか言うアホなことではないんですよ。
 上記書から。
 『デジタル・オーディオにおけるオーディオ特性(仕様・スペック)は、アナログ領域でのアナログ・オーディオと基本的には同じ物である。』として、その後に
「THD+N特性の基本」
「THD+N特性の分析」
「S/N比特性」

などと続くのですね。(THD+Nは全高調波歪み率+ノイズ)
 この「実装電子回路」からしか音は出せないのに、その事を考えないのならそれは既にオーディオではありません。PCをご存じでも、「実装電子回路」の事が分からなければ、全体としてのオーディオのことは何も分からないんですよ。



2014年1月26日  久々にMacネタ
●近頃Mac関係の話題がとんと無いと思っておられた方々。ご存じの通り僕は現行機種を基本的に紹介しているのですが、Mountaion Lionではちょっとばかり厳しいなあと思っておりました。
 で、最新のインテルHuswellのチップセットを使った最新モデルを聴くと、これがなかなか良いのですね。

●写真のMacBook Airは、年末に買った最新のMarverick搭載のHuswellのチップセットモデルです。SATAではなくPCIe接続の高速SSDなどハードウェアが一段とパワーアップ。
 再生ソフトはAudirvana Plusですが、これが音楽再生用に不要機能を切るとか環境の最適化もできて、オーディオ再生用には非常に良いと思います。ダイレクトモードで、最適化レベルは「Extreme」です。
 USB LANアダプタでLAN上のファイルサーバを音源に入力して、サンダーボルトからSonnetのExpressCard34アダプタを介してFirewire出力して、Prismオルフェウスに接続しています。
 USBオーディオインターフェースを使われる場合は、本体端子はUSB HDDに接続して、サンダーボルトからUSBの専用の出力をとる方が良いでしょう。

●この後にはMac miniのMarverick搭載のHuswellのチップセットモデルも出てくるでしょうし、ディスプレイもバッテリーもないので音質的に有利ですし、iPadあたりからRemoteでリモコンすればミュージックサーバ的に使えて大変良いかと期待しています。



2014年1月23日  JRiver Media Center 19 for Linux
●現行のUbuntu Studio13.10を試用中ですが、デスクトップ環境は大分こなれてきて、LAN上のサーバに接続したり、従来のXFCEではできなかった機能がうまく動くようになってますね。リモコン用のVNCサーバもX11VNC Serverがメニューに入ってきたり、XFCEとGnomeの混合環境が成熟してきているようで好々。
 次の14.04LTS(3年サポート)からリアルタイムカーネルが復活する予定で、これは随分と楽しみが増えそうな気がする。

●そしてLinuxオーディオの世界に大きな変化がもたらされる可能性
 これまでHiRes対応のためJackを使ったり、AlsaとPulsの設定ファイルを都度都度書き換えたりしなければならなかった不便さが、開発中JRiver Media Center 19 for Linuxで一挙に改善されるかもしれない。(完成前なので現在はEarly Birdつまり早割で約半額の$24.98で利用可能)



●まだ実際に試してはいないが、Windows版などのように音源をメモリーにあげて再生するメモリープレーヤーとして、わかりやすい画面操作で各種音源フォーマットに即してシームレスに簡単にDSDも含めて高音質で再生できる可能性が十分期待できるわけだ。もちろん表示は全て日本語で。
 まあフルバージョンでも5千円程度($49.98)なので、例えば結構パワフルなIntel NUCなどにUbuntu Studio 14.04LTS をインストールして、「デフォルトのままで」JRiver Media Center19のLinuxバージョンをインストールして、かなりの高音質ですぐにあれこれ遊べる、という可能性ありなので、大いに期待したい。

●まあ5千円にもかみつく連中もいるだろうし、「Linuxやってるから俺たちは偉い。」「MPDのようにややこしいことをやっているから俺たちは賢く偉い。」と思いたい連中には嬉しくないかもしれんが、世の中変わって敷居が次第に低くなり、かたぎのホビットの時代になってきているわけだ。なあ、白のガンダルフ。

 もしJRiver Media Center19のLinuxバージョンが良ければ、Ubuntu Studio 14.04LTS での使い方のページなどこのサイトに作っても良いかもしれない。低いコストで高音質が普及するのは良いことだし、多様性は発展の母だと僕は思うので。



2014年1月22日  人間の一生は短い
●プロデューサー/ミュージシャン/作曲家/アレンジャーの佐久間正英さんが亡くなられた。享年61歳で僕よりも若い。2012年7月5日付けの記事に書かせていただいたぐらいで、そのお仕事について深くは存じ上げないが、このようにして人の中に蓄積された智恵や知恵は失われていくのだと改めて思う。
 人間の一生は短いので、短いスパンしか展望できず、勢い近視眼的になるのも無理はない。それを補うのは謙虚な気持ちで学ぶことだけだ。

ネットワーク上のノイズの問題を認識してされている方が結構おられるようで、心強く思った次第。
 ジッターばかり話題にされている方もおられるようだ。こちらこちら(2011年3月4日)をご覧願いたいが、根っこはどうも共通のプラットフォームなのだ。(ジッターなどについては是非こちらもご参照あれ。以前、モニオさんからご教示賜りました。)

●インテグリティを保ってデータだけを送れば良いのなら、スカスカ・ザワザワなデータでもビット列として正確ならばPCの処理としては問題は無い。(よって頭の中がスカスカ・ザワザワでもPC的には何の問題も無い。)
 しかし、スイッチングハブ(レイヤー2スイッチ)をはじめコンピュータ関係の機材は、ノイズ以外の点も含めてオーディオグレードには総じてほど遠い。要は、いわゆるデジタル回路=デジタル情報を取り扱う超広帯域アナログ回路においてオーディオ的観点から対策を講じないと、最終的にはアナログ信号であるいろいろな音情報が損なわれる、と言えるだろう。僕もネットワークオーディオに取り組んでいるので、ノイズ対策についてはいろいろ工夫して・聴いて・確認して、いくつか整理できた。お察しいただけると思うが、当分ネット上では僕個人の成果たるオーディオ情報の発信は限定したいので具体には書かない。



2014年1月14日  LANケーブル上のノイズや減衰(ロス)
こちらの「ニュースレター第22号 2004年8月発行分(PDF約2,863KB)」 のp.11には「Question ? 2 Answer !」に「LANケーブルのノイズ」が特集されています。もちろん適切なシールドや接地がなされたケーブルを適切に使えばノイズがあってもデータはちゃんと伝送されるのですが。(下図は同ニュースレターから拝借しました。)



 また「第20号 2004年2月発行分(PDF約1,615KB) 」p.2には「リンク試験データ」として「CAT6部材とエンハンスドCAT5部材の混在チャネル特性」としてNEXT(近端漏話減衰量)反射減衰量などのデータのグラフが多数掲載されています。ケーブル内ではデータの伝送以外にいろいろな事象が起こっているわけで、まあ、アナログ高周波回路なので当然の話です。

●いわゆるネットワークオーディオをされている方々は、これらのLANケーブル上のノイズや減衰(ロス)などのことをどの程度まで知っておられるのでしょうか?ケーブルメーカー的にも音質的オーディオ的にどうかは、実装回路などでまだ十分な検証がなされていないと思うんですが。

●データが正確に伝送されるだけで良いのでしょうか?アナログ高周波回路でも「音は同じはず」ですか?



2014年1月11日  当分は紙ベースの原稿に集中。
●年末年始に体調を崩して、今週前半はほとんど寝ており、後半から少しずつ社会復帰しました。

●香港のKentに約束した原稿があったので、英文和文で仕上げて、今日ようやく送って一息ついたところ。これからは当分は紙ベースの原稿に集中。

●オーディオは結局は耳とそれを裏打ちする経験値/経験知が必須だ。それが欠けていれば、オーディオ的には何も実らないだろう。



2014年1月5日  見限り方
 「とにかく、コンピュータに関連するマターについては、分からない連中や分からない組織の前でいくら努力しても無駄です。」
(冷泉彰彦「トロイの木馬」角川春樹事務所)


 著者は日本文化の中枢を担い続けた冷泉(れいぜい)家の一人。先見性のある名作だと思うのだけれど、再版されないのが残念だ。中古で読む値打ちも十分にあります。

●昨年はいろいろなことを見限った年だった。詳細を書くとお馬鹿なところに変な反応が起こったりするので、とにかくお知らせ事項と、いざという時の戦いの武器としてしかこのサイトを使う気が無くなってきた。
 まあ、そういう見限り方だ。三重苦のスカスカ連中に絡まれたくなかったら、連中を見限って情報発信は紙でやろう、なんてね。

●憎しみで人を攻撃して一時的に快感を得ても、結局それは本人の心をどんどむしばんでいく。その結果、だんだんと人間らしさがなくなって化け物になっていくわけだ。ネットの世界は化け物が横行し悪意が充ち満ちていると言う点で、最低の度合いがひどくなりつつある。個人情報は絶対に書いてはいけない。

●一方で情報だけはほしがる。いわば情報キョンシーだ。と言っても、ちょっとばかり古いから通じないだろうが、これも人外だ。
 スカスカ連中にはもとより知識が無いから洒落も通じないし、憶測に噂を重ねていつの間にか真実でもないのにねじ曲げた変な情報や悪い情報を一人歩きさせようとする。諸兄よ、信じるな。そして身を守らなければならない。



2014年1月4日  人間はサーバのようなわけにはいきませんね。
●昨日は母の処に集まって、お寿司を食べながら楽しい時間を過ごした。次の3月で96歳になる母は、近頃とみに運動能力が衰え、認知症も進んでいて誠におぼつかないが、名前はすぐに思い出せなくても家族だと言うことはさすがに理解していて、やはり皆でわいわいやっているとご機嫌が良い。なにをどうしても進むものは進むので、見守りながらできることをするしかない。

●年末から年始にかけて寒さも増してきたので体調は優れず、細切れにしか眠れないとか、目覚めると肩が痛いとか、基本的に安らげていないことがわかる。溜まっているストレスを和らげてペースをつかまなければ。
 平穏を維持して淡々と行きたいと思っていましたが、やはり人間はサーバのようなわけにはいきませんね。



2014年1月1日  初春のお慶びを申し上げます。
 雑詩三首 (王維)

  君自故郷来  君 故郷より来たる
  應知故郷事  まさに 故郷のことを知るべし
  来日綺窗前  来日 綺窓の前
  寒梅着花未  寒梅 花を着けしや未だしや