米国ミュージックリファレンスのプリアンプRM-5MkⅡ(写真はMk Ⅳ)
これも当時書きためておいた文章を、そのまま載せます。
アートワークということ ~ ミュージックリファレンスRM-5 MkⅡプリアンプ
(’99.12.15)
薄型アンプの流行
マークレヴィンソンのJC-2プリアンプが世に出たのは、もう20年前くらいになるだろうか。クールな音の切れ込みとノイズの少なさで、鮮烈なインパクトがあり、オーディオアンプの世界に大きな影響を与えた傑作である。それ以来、薄型のシャーシを使ったアンプが大流行し、管球アンプの世界でも球を横置きするタイプも含め、薄型のアンプが結構増えた時期があった。
そして、新世代管球アンプの一つの傾向としては、6DJ8(6922)のような新型球を使用したこと 【はじめて6DJ8を使ったのはセータ(Theta)】、それらローノイズ選別球を前提とした無帰還回路や、電源部を中心とした半導体の多用が、あげられる。その代表選手が、ミュージックリファレンス(RM-5)、カウンターポイント(SA-5,SA-3)あるいはオーディブル・イリュージョン(モジュラスⅡ)などである。このうち前2者は似ているのは当たり前で、ミュージックリファレンスのR.モジェスキが設計した回路のパテントを、カウンターポイントが買い取って製品化したのである。
「ミュージックリファレンスのRM-5プリアンプを聞くことができますよ。」というASCの梅川さんの話に、食指が動いて聞かせてもらうことになった。どちらかというと、カウンターポイントの方が世評は高く、ミュージックリファレンスはいつの間にか消えていったので、当初はそんなに期待してはいなかった。しかし、「ミュージックリファレンスは音に優しさがあって、クイックシルバー8417パワーアンプと通じるものがある。」と聞いては、やはり気持ちが傾いてくる。
インターネットを見ていると、テネシー州はメンフィスのオーディオショップがミュージックリファレンスを強力にプロモートしたホームページを出しており、RM-5は現在MkⅣが販売されている事が分かった。フロントパネルの意匠や回路的には基本は変わっていないようで、入出力のジャックが従来の基板直付けから、パネル取付けのティファニー製に変わるなど、リアパネルの姿は変わっていた。パワーアンプもRM-10やRM-200というのも出ており、ミュージックリファレンスは健在のようである。
実質本位の仕上がり
そして、我が家には1985年にゲインの増加などマイナーチェンジされたブラックパネルのRM-5 MkⅡが届けられることになった。(セレクターにチューナーはあってもCDがないというのが、時代を感じさせる。)最初の印象では、ラックマウントのため思ったより横幅はあるが、奥行きは短く、軽いアンプという印象。消費電力はわずかに20W。早速トップカバーをあけて中を見ると、まず電源トランスの小ささに驚く。こんな小さなトランスで、十分なパワーが供給できるのかと、思ってしまうくらいである。そのトランスも含め全パーツを1枚のガラスエポキシ基板にマウントしている。基板のパターンがどうなっているのか、底板もはずして見る。ミリタリー規格の基板だそうだが、ハンダでディップされて割と厚みのあるパターンとなっており、非常に精密感があるものの、やはりパターン幅は細く、何となく線の細い音になりそうな不安を覚える。
電源部のコンデンサは、ニチコンなど通常グレードの電解コンデンサであり、パーツのグレードアップによる改善の余地は相当にありそうだ。製造から15年ほど経っており、ほぼ耐用年限を越えているので、電解コンデンサは順次取り替えていく必要がある。特に、B電源のコンデンサをフィルムに変えることが、当面の主なポイントになりそうな気がする。
信号系のカップリングコンデンサは、REL-Capの大型のポリプロピレンであり、この辺は当面このままでも良いだろう。ボリュームやバランサーは米ノーブル社の導電性プラスティック型を使っており、悪くはないのだが、コンパクトな配置のため、大型のステップアッテネーター等に交換するのは無理で、このまま行かざるを得ないだろう。まあ、そのうちにはずして分解掃除し、接点のクリーニングなどすれば、鮮度が上がるだろう。イコライザーの入力抵抗にはヴィシェイやキャドックの金属箔抵抗などを奢ることにしよう。
デザイン的には、あまり高級感のある仕上げとは言えないが、内容的にはポイントを押さえて音質に必要なところは高級パーツを使うなど、価格を考えた実質本位の仕上がりとなっている。全体としてもっとグレード感がほしいと思うが、まあ音が良ければ、まずは良しとしよう。
奥行きと空間のでるアンプ
いよいよ音を出してみる。MkⅡ化した主旨が昇圧トランスを使わず、ダイレクトにLPをならせるようにゲインを上げた、ということなので、デンオンのDL-103FLを直につないでみると、かなりボリュームを回さなければならず、ノイズも相当出てくる。何より、音全体に力感がない。アンプの入力抵抗が47Kのままという事もあろうが、実用的には厳しい。
やはり、昇圧トランス(タンゴのMCT-999)を使うことにして、再度鳴らしにかかる。音全体としては、柔らかく優しいタッチの音で、繊細感はあるが個々の音のエッジを立てないので、柔らかく分離していく音である。我が愛するエラートレーベルの音に、大変マッチしそうな音である。左右の広がり感や空間の出し方は非常によい。しかし、例えばベースやドラムがどしっと決まる、というようなエネルギー感は薄目である。
まあ、鳴らし始めだし、こんなものかな、ということで、当分慣らし運転がてら聞いていくこととする。
そして、ある夜更け、控えめな音量で聞いているとき、前後の奥行き感、ステレオイメージのいわゆるデプスがかなりはっきりと出てくることに驚かされた。むしろ音量を下げた時の方が、位置関係も含めてくっきりとイメージがたつようである。早速リッキー・リー・ジョーンズなど出してきて、確認に及んだ。大変良い。これがこのアンプの本領なのかもしれない。俄然、面白くなってきて、次の土日で以前から考えていた事を実行にかかった。
一つは、二段に積んでいたラックを一段にして両スピーカー間の障害物をできるだけ減らすこと。チューナーをはずすのでFMが聞けなくなるが、まあやむを得ない。
もうひとつは、両スピーカー間の壁に吸音のための布を垂らすこと。このために入手しておいたスコットランド産のケルト文様の布を使ったのだが、なかなか良い感じに納まった。
三つ目は、RM-5の電源ケーブル、プラグの交換である。我が家の定番JPSケーブルとハベルのホスピタルグレード3Pプラグに交換した。
2日がかりでこれらを整えながら、順次音出しをしていった。電源ケーブル、プラグの交換によって、エネルギー感が出てきたのは、読みの通りである。ただし、電流が少ない事もあってパワーアンプほどには効かないが、安定感は向上した。
そして、両スピーカー間の対策によって、前後のデプスはかなり聞き取れるようになってきた。といっても、録音によりきれいに出るものや、よく分からないものまで、出方はまちまちであるものの、全体としての空間がかなり把握できるようになってきた。
そしてある日、雑誌を読んでいて気づいたのだが、このアンプのラインアンプは真空管1段であり、絶対位相については反転型である。そのために、音像のエッジが立った響きになっているのかもしれない。そこで、スピーカー側で接続を逆にし、正相にしてみたところ、これが大正解でオーケストラの広がりの豊かさや深々という感じがよく出てくる。ただ、個々の音像のエッジが立たなくなった分、音像表現のシャープさが少し弱まったが、これはスピーカー後方の吸音処理を強化すれば改善できるのではないかと思う。
さらに、決め手としてB電源の電解コンデンサ(315V 150μ、160V 220μ、250V 4.7μ)をフィルム型に交換した。160V 220μはメインの定電圧回路の出力側で使われており、回路の安定度の問題もあって、できるだけ大容量としたかったが、スペースの関係上、手持ちの82μを使うことにした。4.7μはそのままの値としたが、全体としてB電源用コンデンサは当初の1/3程度の容量となった。音的には、まずかなり細かい情報が聞き取れるようになった。以前は、よく言えばシルキーな、悪く言えば何もかもが溶けあっているようなシチュー的な感じであり、ノイズ自体もいろんなスペクトラムのノイズが一緒に出てくる感があったが、フィルムにするとノイズの中心がくっきりと聞こえてきて、ざわざわした感じが収まって全体に静かになる。特に、バックやサイドで出している合いの手的なヴォーカルや楽器の音が見えてきて、こんな音まで入っていたのか、これは改めて各レコードを聴いて行かなくては、と思わされたほどである。ドラムやベースのアタックももたつかずにかなりのスピードで出てくる。この音から見て、容量不足の心配はなさそうであり、ゴールドムンドの例を見ても、多少の容量増加より小容量ゆえの充放電のスピード(流通角度)やフィルムならではの高域の低インピーダンス特性の方が効くようである。
圧巻は、各回路のカップリング・コンデンサ(200V 5μ)をMITの錫箔巻き・ポリプロピレン(PPFX-S)に変えた時の事。できれば、元カウンターポイントのM.エリオットの言うように錫箔巻き・ポリスチロールのRTX(またはVTVの銀箔・オイルペーパー)を使いたかったのだが、実装上の大きさと性能の関係でこれに決まった次第である。カナダのソニック・フロンティアーから届いて手にしてみたとき、まずそのずしりとした重さに驚いた。まさに、錫箔を巻いたという重みであり、アルミに比べてもかなりの重さである。実際、これを6本交換する事で、アンプ全体の重量はかなり増えた。そして、ブレイクインの後に鳴らしたときには、その実体感のある三次元的な広がりのある音に驚かされた。全体の厚みと密度が一段と良くなって、しかも聞こえるべき位置から、それぞれの音が聞こえてくる。そして、音の強弱などの表情がよりくっきりと出てくる。シンプルな構成のアンプは、使用パーツの数が少ないため、高品位なパーツを使うことにより効果的なアップグレードができるということを改めて実感した次第である。
アートワークということ
この間、回路図が手に入らなかったので、事ある毎に基板パターンを追いかけて回路を把握し、電圧などを当たってみた。6DJ8が3本使われているが、イコライザーは完全無帰還のCR型(6DJ8を2本)であり、ラインアンプはゲインを4段階に変えられるので、P-G帰還がかかっている(6DJ8を1本、F特0.17Hz~350KHz)と思われる。B電源は全段共通で140V(実測137.7V)、プレート電流は各ユニットで3.5mAから5mA、プレート電圧は45~65Vというスペックで、一言で言えば「低電圧大電流」、むしろ半導体アンプに近い数字である。6DJ8という球の特性と、無帰還のためNF用の余分なゲインが必要ない、という状況が、この数字をもたらしており、必要とされる電圧・電流ともに低いため、電源トランスも小型で済んでいると思われる。それにしても、無帰還のプレートフォロワーで実用上十分な低インピーダンス・低ノイズの出力を取り出せるとは、コンピューター選別の低ノイズ球とはいえ6DJ8はなんと凄い球だろう。上記のホームぺージには、モジェスキーが6DJ8について書いたレポートも掲載されていたが、確かに12AX7などを使えば、絶対にこんなアンプはできず、もっと大がかりになってしまうだろう。CR型のイコライザーについても、NF型のように球のゲインによって低域等の周波数特性が影響を受けないことなど、そのメリットには確かにうなずけるところが大である。
そして、パターンをなぞってみると、単純にワイヤーをパターンに置き換えたというのではなく、アースの引き回しなどは、ものすごく工夫を凝らしていることが分かる。例えば、リップル電流の多いヒーター配線回りをアースで囲ったり、イコライザーのLR入力それぞれの間に並行にアースを引いてセパレーションを向上させたり、あちこちにアースのパターンが非常にきめ細かく配置されている。基板パターンが二次元でしかないことを逆手にとって、アース電位をフルに活用していると言えないこともない。なにしろ350KHz以上まで、周波数特性がのびているので、引き回しで対策を講じないと、飛び付きや誘導ノイズがいとも簡単に入ってくる。そういう意味では、電源回路は完全に半導体化されているが、増幅回路も半導体を扱う感覚で作られている、といっても良いかもしれない。設計者が球に通暁した人物でなければ、逆に不安を覚えるほど、真空管アンプらしくない造りである。
また、電源にはロジック回路とリレーを使って、電源オン時にミュートがかかるようになっていて、真空管の立ち上がりとタイミングを合わせて、ショックノイズを出さずに、周辺機器に負担をかけない工夫がなされている。また、入力セレクターと録音出力セレクターが同時に同じテープデッキにつながれると、入出力のループが逆転して発振してしまうため、このときにもミュートがかかるようになっている。球にも周辺機器にも優しいアンプという訳である。
こういう事をつぶさに見ていくと、「アートワーク」という言葉が浮かんでくる。本来は基板のパターン設計を意味する用語だが、いろんな工夫やきめ細かい配慮をも意味するるようにさえ思えてくる。
後日、ASCから入手した回路図(ただし、最初のモデル)を見ると、電源回路は、基準電圧・誤差増幅回路を内蔵した定電圧回路ICを中心に、さらに1段の増幅回路を設けたもので、かなり凝った構成のようである。それにひき換え、増幅回路は極めてシンプルであり、信号ラインに直列に入っている100Ωなどの抵抗(バッファ用か?)やイコライザーを除けば、部品点数はいたって少ないものである。また、ミュート用に半導体を用いたロジック回路が組み込まれており、シンプルな管球増幅回路を半導体の周辺回路がサポートしていることが分かる。
そして使用される電圧・電流ともに低いこと、を考えると、基板のデメリットについての懸念もかなり緩和される。ヒーター電流についても、3本のヒーターを直列にすることで、電流値を抑える工夫をしている。(それでも約300mA余り。ただし、6DJ8系の各球のヒーター電流値には結構ばらつきがあるため、必ず3本とも同種の球を使わなければならない。)
しかし、クイックシルバーでのワイヤー配線の経験から見れば、かなり厚みがあるとはいえ基板のパターンが細いことが、ある種の抑制の効いた、いわゆる「優しい音」言い換えれば、エネルギー感にやや欠ける音、につながるのではないか、という不安はおそらくは一部は当たっていると思われる。(クイックシルバーのプリアンプはどんな基板を使っているのだろう?)B電源についても各球をぐるっと一巡したパターンで供給されており、最初に供給される球と最後に供給される球とに、何らかの差は出てこないのかな、とも思ってしまう。
各パーツを新しい高性能なものに交換していきながら、少しずつAC電源やアース、B電源など主要なパターンを銀線などで裏打ちをしなければならないかもしれないが、やりすぎると「アートワーク」としてのバランスを欠くことになりかねない。基板に直付けされている入出力のRCAピンジャックの半田付け部分が、プラグの抜き差しに伴ってだんだんと不安定になっていくので、カルダスの銀ロジウムメッキのジャックをリアパネルに直付けした。いずれにせよ、音を聞きながらぼちぼちと、ポイントをしっかりと押さえてアップグレード、ということであろう。
両スピーカー間にQRDのアブフューザーなど吸音効果のある素材を置けば、ステレオイメージはさらに精密に出てくるだろう。思ったよりも早く、システムのまとまりを見ることができるかもしれない。スピーカーが消えて、ただ音場空間が広がる。それは夢から現実のものになろうとしている。
この後にも種々パーツ交換を行ってきた。カップリング・コンデンサはマイケル・エリオット推奨のオーリキャップ、カソード・バイパスは三洋のOSコンデンサ。
最近(’02.4以降)の変化としては、まず各部品や球のシールドを始め、徹底したノイズ対策をした。それに伴って分かった「電源トランス」の熱対策。つまり、トランス本体からヒートシンクを出して全体の温度を下げたこと。これは劇的にエネルギー感改善に効果があった。熱により銅線の抵抗値が上がり、電流が流れにくくなっている(熱損)のが改善され、ダイナミックレンジ感が改善されたようだ。
もう一つはボリュームの交換だ。金メッキ23接点で表面実装抵抗を使ったDACTの CT-2というのに換えましたが、高域の伸びだけでなく全体の解像度やSNの面でかなりの改善をみました。下の方のステップが6dBや4dB刻みで、音量調整はあまり思い通りにはならないが、音の良さという点で、もう元にはもどせません。
また、底板を東急ハンズに依頼してブラック・アルマイトの5ミリ厚アルミ板に変えたところ、文字通り低域の力感がかなり改善された。また、天板をはずした方がよりオープンで吹き上がりの良い音になるため、とりあえずアクリル板を東急ハンズでカットしてもらって使っている。(’02.8)
’02年11月頃に、マイケル・エリオットのHPを見てカップリング・コンデンサをTRTのDynamiCapsに交換。これまでのオーリキャップもすごかったが、これは更に上を行く音のよさ。中域の解像力や高域の抜け、という点はもちろんだが、マイケル・エリオットのいうように”rightness”、つまり音の出方が自然なのだ。TRTの資料によると、各部分での信号の流れ方を同じ長さにそろえているとの事。MITのMultiCapは、複数の容量のコンデンサを同軸でパラって、いわばマルチウェイでワイドレンジ化しているが、一方で信号のスピードは周波数により、まちまちになる。おそらくこの辺りが効いているのではないかと思うが、なんにせよ出てくる音がよくなって吉祥。
また、電源ケーブルをAETのGAIAに交換。超低音処理した線材をシールドした硬いケーブルだが、エネルギー感、ソリッドさ、情報量がすごい。電源周りはベーシックに全般に効く。パワーアンプにも使いたいが、高価なのでワンランク下のTAITANにしようかとも思う。(’03.2)
【オリジナルのRM-5 Mk2と比べてみる。】
定電圧電源が故障して、原因究明の比較チェック用にアサヒステレオさんから同じRM-5 Mk2を借りてきた。結局トランジスタが飛んだのが原因というのが分かった。
【今回勉強できたこと】
1.RM-5の定電圧電源はIC(UA723CN)を使ったフローティング型で、現在でも使われている回路のようだ。それに1段Trを加えて構成。かなりのフィードバックがかかっているようだ。少なくともこの回路なしに、あのSNと音は実現できない。
2.レストアして使い続けるなら、予備のパーツは全てそろえていなくてはならない。今回はTr類が運良く全て現行製品だから良かったものの、これに懲りて早めに集めておかなければならない。ダイオード類も手配しておこう。
3.主要部分以外の電圧も把握しておかなくてはならない。今回はお借りしたオリジナルとの比較が役に立った。回路図だけでは分かりにくいので、基板に直接書き込んでおいた。
4.RM-5も同じMk2といっても、電源電圧が違ったり、かなりバージョンによる違いがありそうだ。
回路図(RM-5) 170V
RM-5 Mk2(お借りした#303) 159V
〃 (現用の#552) 137V
時代とともに下がってきているが、意味がありそうだ。
滅多にない機会なので、両方並べて写真を撮ってみた。
上が僕が改造して使っている現用機でシリアルNo.552、下がお借りしたオリジナルでシリアルNo.303。同じMk2だが、電源など細部は回路や部品も違う。現用機のトランジスタは現行生産品で入手可能だったが、#303の石は現在一部が入手不可能。
ご覧の通り、現用機は部品が相当交換されている。目立つのは赤いコンデンサDynamiCaps。オリジナルのREL Capは、マークレビンソンML-1などに使われていたIMBと類似品で、当時はやっていたポリプロだった。音は一言でいうと情報量の次元が違う。
左下の電源トランスには、ヒートシンクをごたごたと取り付けている。トロイダルなんかの良いトランスを外付けしたら、もっとエネルギー感が出るだろう。
その準備はもう出来ているのだ。(’04.4.22)
◆左のアルミケースに入っているのが、ハモンドのトロイダルトランス。
◆その上に置いてあるのが、内蔵トランス(隠れて見えません→もう一つ上の写真)に以前取り付けていたヒートシンク群。
考え方や音への影響についてはオーディオ日記を参照してください。(’04.2.26,、'04.9.19)
いろいろ考えたのだが、RM-5本体には、B電源を安定化させてから真空管につなぐロジック回路が搭載されており、このまま生かしたいので、
1.内蔵トランスはへヒーター電源専用とする。
2.B(プレート)電源のみ外付けトランスとする。
3.AC100Vラインはスイッチドで共用とする。
4.ACラインの接続は定格250V・20Aのノイトリック製パワコンを使用する。
5.B電源ライン(AC200V)の接続はAETでクライオ処理したノイトリックXLR端子を使用する。(DCT-XLR/M)
6.接続ケーブルはAET/TWINを使用する。
おかげで、以前は内蔵トランスのあたりが熱かったのが、全く熱を感じない。一方、外付けトランスの方はほとんど温度が変わらないので、キャパがかなり違うことがこれからでも分かる。
※今回のポイントの一つは「パワコン」。CSEのコンセントボックスに一部採用されており、スピーカー用の「スピコン」も採用メーカーがある。IECのインレットが一般的だが、かなり甘さがあって不安定なことはよく知られている。
IECに比較してのメリットは、
1.インレットの接触抵抗が新品で10mΩ程度に対し、パワコンは3mΩ以下。(福田雅光「オーディオ・アクセサリー」93号)
2.ひねってカチッと止めるロック機構を備えている。
3.ケース本体には難燃・耐熱のガラス繊維を採用。
問題点としては・クライオ処理されたものが市販されていないらしいこと。
使用感としては、非常にリジッドに固定され良い感じである。
むしろこれを標準規格としてほしいが、1メーカーの製品であるが故にそうならないのだろう。
('04.11.9)待ちに待っていたプライトロン(カナダ)の電源トランスがようやく届いた。パッケージを持った最初の印象は「軽るっ!」
それもそのはず、あけてみるとハモンドの2/3くらいの厚みしかない。左の写真のように精悍な黒なので余計小さく見えるというわけ。
早速、プリアンプに接続した外付けのケースに組み込む。
右の写真で左がこれまで使っていたハモンド。右のケースで右側の端子がプリからAC100Vを受けるノイトリックの「パワコン」、左が真空管のプレート電源用にAC約200Vを供給するノイトリックのXLR端子。
音はすばらしい。凄味があり、彫りが深くなる。「彫琢」というか、「切磋」という言葉がふさわしい。音ののびも凄いが飽和感はない。音場の出来方も非常にナチュラルだ。これはもう、半端な凄さではない!