むむむ英国

 何でイギリスかというと、一人で海外旅行に出るのは初めてなので、大してしゃべれるわけではないのですが、まず英語圏から始めよう、というのが理由。アメリカは15年ほど前に行ったこともあり、スキーもできないのにカナダでもあるまい、ということでイギリス。(’02.9.26~10.4)



お土産はなあーに?

 今回のイギリス旅行で一番大切なことは何だったか?それは、短期の旅行とはいえ、知らない異国の街で、自分一人で、十分とはいえない英語で他人とコミニュケーションしながら、行きたいところに行って、欲しいものを見つけられるか、ということ。
 半日の市内観光と、1日のコッツウオルズ観光以外は全て単独行動。
 
結論は何とかなった、ということ。疲れて地下鉄に立っていたときは学生らしき男の子が席を譲ってくれた。道を聞いた喫茶店の店主は表に出て、きっちりと教えてくれた。(紅茶はまずかったけれど、うれしかった。)ガイドさんからは結構脅かされたけれど、特に何もなかったし、大阪にいてもヤバイときはヤバイ。
 
やっぱり、アイコンタクトして自分の希望をはっきりと言い、それをしてもらったときには笑顔でありがとうという。そういう事なんだ。下手な英語の冗談でも気持ちは何とか通じる。それを確認できたのが、そして自信がついたのが、なによりのお土産だった。
 また行きたいかって?この後を読むと分かると思うけれど、ロンドンの都心部にはあまり興味はない。テートモダンやそのほか見逃したところは別として。
 田舎でゆったりする。それも安いところで、レンタカーなんかでのんびり回る。(誰が運転すんだよ?早く免許とれよな。)それがサイコーだと思う。でも、たとえばトスカナあたりは、もっといいかもしれないね。どうも俺って都会大好きなくせに、他人の都会の澱ってのはダメみたい。香港みたいな猥雑さがあれば救われるんだけどな。


むむむ英国

 
「むむむ」は、じゃあどういう意味か?
 一つは
イギリスが階級社会であり、加えてロンドンは移民が集まり、階級や人種に沿って棲み分けているモザイク都市であること。


(左)ロンドン、エッジウエアロードのアートショップ

 ハイセンスな商品とディスプレイ。
 あちこちにこんな感じの店がある。スキン人にはこたえられない。ポートベロののみの市も面白そうだし、探せば安くて楽しめる所はいっぱいある。とはいえ、物価は相対に高い。特に外食は高い。
















もう一つは、
田舎(コッツウオルズやオックスフォード)はいわゆる英国的に素晴らしく素敵だ、ということ。(移民はほとんど見られない。)


コッツウオルズ、ボートン・オン・ザ・ウオーターのカフェ


























 





















(左)オックスフォードの「ラドクリッフ・カメラ」(左側は図書館)と「オールソウルズ・カレッジ」(右側はオックスフォード大学の一部。これが大学なんて.......) 
(右)オックスフォード市内。全体としてカジュアルで落ち着いた街並み。結構面白そうな、入りやすそうな店がたくさんある。


 そして、
歴史的な積み重ねが凄いと言うこと。勿論馬車道は幅も狭く、フラットな地面はほとんど無く、僕には歩きづらい街だが、石造りの建物はしっかりと残っていく。日本のスクラップアンドビルドはやはり「花見酒の経済」であり、どこまでもドメスティックな国だと改めて思った次第。
 これらが「むむむ」の理由。

多人種の国イギリス

 空港に迎えにきてくれた旅行者の担当者は、現地で暮らす日本人女性。バスの運転手はポルトガルからの出稼ぎの人で、英語も上手ではない。そしてホテルはロンドン中心部からやや西のエッジウェアロード。とりあえず、晩飯を食わねばならないので、ホテルのレストランなどは確認したが、何はともあれ外に出ることにした。
 初めてのロンドン、夜の町歩き。やっと来たぜ。気分がハイになってくる。しかしインド系の人はともかく、やたらアラブ系の人が多い。看板にもアラビア語(たぶん)やハラルミート(宗教的に正しく処理された肉。ユダヤ教のコシャーに当たるらしい。)などがやたら目に付くし、水パイプを吹かしているおじさん達も多い。後で聞いたのだが、近年とみに移民や出稼ぎは増えているらしく、この辺りは特にアラブ系の人が多いのだそうだ。
 とりあえず、イタリアンならと思い、「パニーニ・カフェ」という手近な店に入ったら、これが中は完全なアラブ系で、ウエイターのお兄さんもやや聞き取りにくい英語。アラブ系だから、当然ビールもない。パニーニとコーヒーを注文して、出てくるまでの間、水タバコの甘い香りで胸がいっぱいになってしまった。
 その後、
あちこちでいろんな人種の人に出会うが、総じて移民は飲食業や流通関係など、職業的にも限られたポジションにあるようだ。ニューヨークで黒人やイタリアン、中国人が元気よくのさばっているのと、かなり雰囲気が違う。

階級社会

 勿論、
階級というのは目に見えない。だが、結局棲み分けという形になっているらしい。リージェント・ストリートのパブに入ったら、最初は僕だけだったが、お昼時になるとネクタイ、スーツ姿の男性で一杯になった。ネクタイ姿の見られないパブもあったので、それが棲み分けの形なんだろう。
 ノッティング・ヒルなんかでは、若者が一杯繰り出しており、ヒップホップのレコード屋や古着やさん、ジュエリーショップを始めポップな雰囲気だったが、全体にアメ村的な安そうな店が多く、ブランドもの的な雰囲気は余り無く、彼らも階級的にはハイソではないのかもしれない。
 クイーンズウェイなんかは中国系の人が多く、いける中華料理屋さんもあり、僕的には気に入った場所なのだが、やっぱり庶民の街。
 ボンドストリートやリージェント・ストリートは余り見ていないが、こっちはハイソそのもの。観光客だけを相手にしているわけではなく、やっぱり、それらしき人々が歩いている。
 今回、オーディオショップを探すのが一つのテーマだったのだが、レコード屋さんとかオーディオ屋さんなどその道の人たちから共通して聞くショップの名前があった。KJ WEST ONE

 ところが彼らも名前は聞いていて凄いらしい、というだけで行ったこともなければ、場所がどこにあるかも知らない。たまたま、僕の使っているスピーカーのHPでその名前と住所を事前につかんでいたので、ある日タクシーの運転手に伝えると、やっぱりプロでその店の前まで横付けしてくれた。ところが、営業しているようだが、鍵がかかっており、ベルを鳴らしてようやく中に入れてもらえた。品揃えは確かに凄いが、店のスタッフはこちらを無視して声もかけてこない。こちらから、話しかけて答えは得られたが、積極性はまるでない。どうやら、お金持ちの所に出向いて商売をしているようで、要するにアポのないふりの来店客など相手にしていないのだ。スタッフの気位の高さもうなずける。こういう出張サービスの御用達の店があちこちにあって、それらが高級品を扱っているらしい。
 

田舎は素敵だ


 何かの本で、「英国の真価は田舎にある。」というのを読んだ記憶がある。今回行った範囲ではコッツウオルズとオックスフォードが素晴らしかった。いわゆる英国らしさが、横溢している。
 コッツウオルズは本当の田舎と言うよりも、観光化された田舎であり、最近の住宅バブルの傾向で、家の価格も相当上がっているようだ。観光客とロンドンあたりから来るお金持ちを相手にやっている。
 オックスフォードは大学町なので、全体にかなりカジュアルな雰囲気がある。小さな街なのに、ハイレベルなオーディオショップが少なくとも2軒あり、オーディオ雑誌の種類などはピカデリーの大書店より、こちらの方が上。
 気が付くのは、共通して移民らしき人が殆ど見られないこと。移民がいないから素敵だというのではないが、少なくともこの辺りでは、自分は観光客であり、人種・階級モザイクのどの辺に位置するのかは考える必要がない。
 次回行くとしたら、この辺を中心にゆっくりすれば、素晴らしいツアーになるだろう。食器やインテリアなどじっくり見て回りたいものだ。結構安そうだし。


ベナレム城を囲む緑地






























オックスフォード市内の通り


































やっぱり食い物はイマイチ

 以前から言われていたが食事はあんまりうまくない。まず、ホテルのレストランで食べたパスタには参った。グニャグニャ、ベタベタ。イギリスには「アル・デンテ」という感覚がないのがよく分かった。小説家の島田雅彦氏が無類の麺類好きで、パスタ大好き人間なのだが、「イタリアから離れると急速にパスタの味は低下する。というよりも、イタリア以外ではまともなパスタは食えないと思った方がよい。」というのは真実のようだ。
 しかし懲りずに、何軒かイタリアンレストランに行ったが、やたら胡椒をかけるのと、何でもじっくりとゆでるのは共通していた。やれやれ。
 中華はまあまあ。ケチャップ風味のやたら甘い排骨には閉口したが、何とかなる。しかも安い。
 フィッシュ・アンド・チップスはまあいけるのだが、塩味も何もつけないのが普通らしくて、レモンをかけるにせよ、もう少し味付けしておいてよ、という感じ。量も凄く多いし、一度食べればまあいいか、と思った。
 結局、昼はイギリス人に習ってパブやデリでサンドイッチなどを食べ、夜は何とか食えそうなところを探す、というパターンに落ち着いた。
 ギャラリー・クラヌキの八木さんに言わせると、「イギリス人は食べ物にこだわらないから、世界制覇をできたんですよ」ということで、げにむべなるかな、という気がする。八木さんの言うようにインド料理も行ってみれば良かったな。
 しかし、パブで食べるギネスのスタウトはさらっとしていて、本当においしい。また、パブの伝統的なサンドイッチもおいしい。(最近はやりのイタリアン風のデリもたくさんあるが、気をつけないとクリーム状のモッツアレラ・チーズなどがゴッテリと塗られていて、強烈な胸焼けを起こすことになる。)ローストビーフもいける。残念だったのはベーコン。脂がほとんど無い上質のバックベーコンなのに、全体に塩味が強くて、少ししか食べられない。ソーセージも同じ。残念至極。
 やっぱ食い物はイタリアとフランスかな?

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