この国はどうなるんだろう

(’02.8.24現在)ため息が出るような数字や分析をいくつか並べてみよう。

1.概算で現在の国債発行残高(要するに償還対象額) 約700兆円 vs 国の税収 約50兆円
  サラリーマン家庭で言うと、世帯収入の14倍のローンを抱えている状態。
    (ただし、財投などに伴う道路公団など特殊法人の債務などはカウントされていない。諸々を合わせて国の
     債務約1,000兆円というのが概ねの共通認識のようである。そうすると、年収の20倍の計算となる。
     1,000兆円はGDPの約2倍。アルゼンチンでさえ負債はGDPの約半分というのが、よく見られる論法。)

     ちなみに、日本の国家予算約82.7兆円。
     
2.個人金融資産残高は約1,400兆円。別途ローンが約400兆円。差し引き純資産が約1,000兆円。

3.『国の財政赤字は地方を除いた国だけで528兆円(02年度末残高)。気がつけば経済協力開発機構(OEC
 D)加盟国の財政赤字の7割以上を日本が垂れ流す。国債はアフリカの開発途上国並みの格付けだ。』(朝日新
 聞’02.8.18朝刊)

4.日本の国際収支の経常黒字は’01年度で11兆9,124億円、外貨準備は’02.6末時点で4,461億ドル。
 120円換算でおおよそ、5兆3,500億円。日本は世界最大の債権国と言われるが、少なくとも経常黒字も、外貨
 準備も上記1の債務の引き当てに届くような額ではない。

5.銀行の資産は主に貸し出し、株式、債券で構成されている。金融機関の不良債権額については、数字の確定
 は困難だが、貸し出しが不良債権の温床と化していることは間違いない。
  保有株式は相場下落で時価評価での含み損が発生しているまっただ中。債券は唯一健全といえる資産だが、
 利ざやの薄い短期債中心のようである。つまり銀行の自己資本は枯渇寸前の上、膨大な不良資産を抱えて
 いる状況
にあり、いくら「量的緩和」をしたところで、リスクを恐れて、資金を必要とする企業や産業に貸し出しを
 しない状況が続いている。これでは、投資が、経済が伸びるはずがない。日本の金融制度は機能不全の状態
 にある。



 問題は、①国の財政破綻、②金融機関の機能不全と資本不足、そして③デフレというふうに分類してみよう。

 ③デフレについては、金融緩和では効果がないことははっきりしている。アメリカの景気期待で輸出促進、そのための円安誘導(インフレへの期待もにじませて)には、米景気やドル安状況から限界がある。公共事業はさらなる国債の発行につながるので実質的に不可。よって、減税論議が浮上し、財源は後からといういい加減さだけでなく、誰をターゲットとしてどのような減税をするのかが、はっきり言って五里霧中。それが景気回復につながるかも。不明。
 ②金融機関の機能不全と資本不足については、本来の不良債権対策を本当にどうするのか、という点がどこかへ行ってしまって、一方ペイオフの骨抜き、実質延期が論議されている。
 不良債権をきちんとしたルールのもとに一斉査定し、止血剤として公的資金を導入し、経営陣は責任をとって総退陣させる。これらは、隣国の韓国で、いろいろ問題はあったにせよ既に実行されている。なぜ日本で決断できないのか?預金者からお金を収奪するゼロ金利をこれだけ続け、量的緩和も限界までやっても、結局のところ、不良債権は金融機関サイドとして解決はできていない。政府としても、住専や新生・あおぞら両銀行(それぞれ10億円で売却された両行で使われた公的資金は計6兆6千億円)などへ既に公金注入しているため、「金融機関は健全である。」という金融庁の建前が、問題先送りとともに押し出されており、自分からしんどい事に手を染める気配はつゆほどもない。
 ペイオフについても、本来は預金者保護のためのセーフティネットであるのが、いつの間にか金融機関淘汰の手段に使われている。預金者への情報提供やディスクロージャーも含めた、金融機関の整理は本来、それとして検討すべきもののはずだが、議論がずれている。
 今回の見直しは、要するに、預金が中小から大手に流れ、金融機関がもたないから、という業界の声を受けて市場原則による金融機関の淘汰など、荒波にはさらさないということだ。現行秩序をできるだけさわらない、という護送船団的な先送り。しかも、決済性預金などという新たな預金を設けると、システム改造などが必要になり、またぞろみずほ銀行のようなシステム危機が起こりかねないから、普通預金でも利率ゼロなら保護対象とする、という訳だ。預金者には「自己責任」をいうなら、まずリスクをちゃんと開示して、それに応じたきちんと利息をつけるべきではないのか?金融機関は何を持って競争すべきなのか?
 ①国の財政破綻については、日本国債がほとんど国内で消化されており、超金融緩和の中で、リスクが(いまのところ)小さい資産として、金融機関を始めこぞって購入しているので、国債の消化に問題が生じていないだけである。格付け機関ムーディーズにたいする反論の中で、日本には約1,400兆円の個人金融資産残高がある、と主張していたが、これは国の金ではない。国民の金である。つまり増税や国民負担増で債務に当てていく、といっているのと同じだ。従順な国民であるといっても、これは怒るべきだろう。
 郵貯についても実質は国債と同じで、国が国民から吸い上げて財政投融資に使っている。郵政公社や民営化論議では今までの財投と資金の流れが変わるので、郵貯の資金運用の方が、国債の需給から見ても、大きな問題になるかもしれない。
 詳しい数字は忘れましたが、日本は欧米に比べて、公的部門が行っている事業比率がかなり高いそうです。先日沖縄に行って来ましたが、主要産業がない、というのが将来への一番大きな問題だそうです。一番良い就職先は、米軍基地の職員と公務員というところでは、結局公的にお金を投入していかなければならないのかもしれません。しかし、問題はそれがいつまでも道路やハコモノで良いのか?ということではないでしょうか?
 では、年金財源等も含めどうやって返していくのか?改革には痛みが伴う、というのは大部分の国民がおそらく理解を示すだろう。消費税の増税もある程度覚悟はしているだろう。しかし、社会保障というセーフティネットが整備され、個人の財産や生活が保障され、情報はきちんと提供され、契約は守られる。そういう前提があって初めて、フェアな競争や活発な投資が行われる。ところが、日本の場合、この辺の論議はおざなりで、ルールやモラルの「全体像」がまるで示されず、何でもかんでも自由競争の海に放り出そうとしていることが、国民の不安を募らせ、消費の減退を招いていることは明らかです。ある説によれば、このままでは日本は国家破産し、徳政令(債権放棄というよりも、銀行預金を封鎖して新円などに切り替えていくようなイメージ)、ハイパーインフレ、大幅な円安などにより、国の債務は帳消しになっていくが、国民は塗炭の苦しみをなめる、というシナリオが示されます。実際は日本がどこまでこれから対応していくのかによって、結果は大きく変わってくると思います。

 マネックス証券の松本大氏が「実力はまだまだ大変高いのに、それよりもずっと低く評価され、誇りと自信を失い、そしてその結果実力も次第に落ちて行く。この悪循環を早く断ち切れないものでしょうか。責任回避や足の引っ張り合いは止めて、建設的な動きを創って行かなくてはいけないと思います。」('02.7.2 Monex Mail)というのは、大変に共感します。ですが、今の状況を見る限り、抜本的な対策や改革は期待できそうにありません。

 米国の赤字垂れ流しもあり、世界には実体経済をはるかに上回る投機的マネーがマーケットを巡っています。しかも高度にプログラム化された取引システムの存在が、市場全体の変動を大きなものにしています。日本がそれらと無縁でいることはできないのです。基礎数字を見ると、どう考えても、円は中長期的には下落は避けられないと思います。
 今のところ、庶民は庶民で、状況をしっかりとウオッチして、できるだけ自己防衛するように努力するしかないようです。円という単一の通貨で、それも大部分を日本の金融機関に預け、日本の事業に投資する、というのは、「全ての卵を一つのバスケットに入れるな。」というセオリーからみて大いに問題がありそうです。だからといって、金地金をどっと買い込む、というのも問題です。とりあえず、リスクヘッジとして資産の20~30%程度をドル、ユーロなど外貨で持ち、外貨で使っていくようなことを考えて、勉強していく必要があると思います。

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