( 製品の詳細はメーカーのHPへ
http://www.salogic.com/home.htm )
低音の魅力
バンバン、ズンドコ
オーディオを始めた頃は、みんな低音をバンバン、ズンドコ鳴らして 喜ぶものである。実際にホールやディスコやクラブで鳴らす音量で聞けないのは分かっていても、一度は必ずはまる。かくいう僕もアルテックのA-7やJBL4350などにしびれた口である。あるいはタンノイ・オートグラフという人もあろう。だが、小さな部屋ではすぐに飽和するし、第一聞き疲れしてしまう。
僕的に表現すると、「スケールの罠」というところ。つまり、リスニングルームはホールなどに比べて圧倒的に小さく、空気の量も少ない。その中で、結局ダウンサイジングしていかないと、オーディオは成り立たない。
これを妥協ととるかどうかが一つの分かれ目だと思う。つまり、ダウンサイジングであっても、現実のコンサートやギグの相似形であるならば十分満足感が得られる、というふうに思うかどうか。この相似形というところがキモだと思う。つまり、比例的にバランスを保ってスケールダウンすれば、音楽体験は十分成立する、というのが僕の基本感覚。
ジャズやロックのファンの場合、これを良しとせず、例えばホーンスピーカーで突き刺さるような音像や音量を求める人もいる。例えば、故朝沼予史宏氏などはそういう要素をもっておられたと思うし、JBLのようなハイプレッシャーモニターにこだわっておられたのも、そういうところ大だと思う。
ただ、実際に朝沼氏が亡くなる直前の試聴会を聞いて感銘を受けながらも、やはり思ったのは、ハイプレッシャーは僕の選ぶところではない、ということだ。
誤解を恐れずに言えば、朝沼氏のボリュームは一つの限界に近い切なさがあり、あれを超える音質や音量は、はっきり言って感覚を麻痺させて、より強い刺激がなければ持たなくなってしまうような怖さがあって、ヤバイと思う。(朝沼さんご免なさい。)
良い低音とは?
話が少し横道にそれた。低音の話だった。音量を上げる一つの理由はより低音を聞きたいからだ。故岩崎千明氏の話が有名だ。では、音量を上げずに、または余り上げることなく、良い低音を聞けないものか?
ではどんな低音が良い低音か?これは、人の数だけ定義があるかもしれない。
試みに定義してみよう。
1.十分な量の低音 「十分な量」が人により違うので、明確でない。
2.ワイドレンジな低音 ローエンドまでのびきった低音。数値化は難しいが、一応共通性はありそうだ。
3.遅れない低音、あるいはハイスピードな低音
アルテックなどの時代に一番認識されていなかった要素。箱の共振などで遅れた音が発生し、いわゆる共振あるいはボクシーな音になることを嫌う。
よくご存じのように、スピーカーの特性や、箱を含む材質の物性により、1と3はしばしば相対立する。
現代スピーカーの方向は概ね3を重視し、1を後にする。つまり、量は少なくても、極端な場合ほとんどなくても、箱鳴りのないハイスピードでクリアな低音を選ぶ傾向が強い。
ここで、もう一度話を戻そう。つまり、現代スピーカー的感覚(というものがあるとして)からすれば、ハイスピードであるだけでなく、現実の音や音場と相似形な低音、高音や中音と現実の相似形としてのバランスを保った低音が必要となる。
ようやく本題にたどり着きました。つまり、Sa-Logicの仕事はこれを実現しようとする試みだと思うからである。何も引かない。ただ、超低域だけをメインスピーカーに足そうとする試み。足し方の調節はデジタル技術を駆使して、周波数的にも(カットオフとローエンド)、位相的にも、音量的にも出来る。
サブウーファーDegi-Cube(D-Cube2)試聴記
1.特長
詳しくはメーカーのHPを見て頂くとして、ごく簡単に要約すると、25cm径のヘビーデューティーSPユニットを用い、DSPによるデジタル制御で、タイムアラインメント(音の到達時間)補正機能と不要高域のカットオフ特性
100dB/Oct というシロモノ。15Hzまで再生可能で、アンプも最大1Kwのデジタルアンプ内蔵。
(AV関係機能もあるが省略)
2.ケーブル等
電源ケーブルが同梱されていなくて、待てども来ないので、JPSラボの2□3芯ケーブル、FURUTECのIECコネクター(ロジウム・メッキ)、Hubbellの20Aプラグで自作した。(後で届いたのが14AWG≒2□の3芯モールドだったので、そのままJPSを使用。)
信号ケーブルはオーディオ・クエストの「コーラル」という単線3芯シールド付きのものを、アメリカからバルクで安く買い、カルダスのプラグをつけた。現用のMITのMI-350(Spectral-Ultra Linear 仕様)に替えてメインSPで聞いてみると、情報量とパワー感ともにかなり落ちるが、硬くてしっかりした作りだし、低域専用なので、まあ使えるだろう。
チェック用のセリーヌ・ディオンやフォー・プレイのCDも早速買ってきた。
3.配置
かなりコンパクトなスピーカーで、目立たぬようブラック仕上げにしてもらったものの、センターには置けないので、配置についてはインテリア的にこれしかない、という目立たない左隅の位置に置いている。超低音は指向性がないので、今のところこの位置で支障はない。
聴取位置からの距離はメインスピーカーより90cm奥なので、タイムアラインメント(音の到達時間)補正はー0.9にした。
4.入出力レベル、クロスオーバー周波数設定
D-Cubeを実際に聞きながら入力レベルを設定するが、これが結構難しい。取説通りに赤LED(0dB)が時々点灯するくらいにすると、LPを盛大に鳴らしたら、すぐ入力オーバーでプロテクト・リレーが働き、電源をオフ・オンしなければならない。結局、橙色LED(ー12dB)がごくたまに点灯する位が無難と分かる。
D-Cubeのすぐ横にチェスト(引き出し)があって、その裏板なんかがかなり振動している。隣のギャラリーからエコー・バスターを1枚取り返して、元のようにはめ込み、内側にPタイルなどを張って防震に努める。
CDから鳴らし始めて、順次LPに移る。メインスピーカーの Wilson Benesch
ACT-1 Loudspeakerが40Hzで±3dB(ウーファー17cm)だったので、クロスオーバー41Hzでスタート。なかなか量感あり。38Hzでは少し薄く、44Hzでは音がかぶり気味。当分、41Hzで行くことにする。
レベルの方は、当初オーバー気味の設定になったので、順次入力レベル、出力レベルともに下げていく。最終的には、クロスオーバーは38Hz、レベルは入出力ともに、9時くらいの低い位置になった。なぜ、こんな設定になったか?
はじめは、フォー・プレイやセリーヌ・ディオンのCDなどで重低音が厚めに出るのに喜んでいたが、大音量では、だんだんと耳が疲れてくる。マーカス・ミラーなんか聞いても、Eベースの量感は凄いが、ベース・シンセとの分離が今いちだ。ベベウ・ジルベルトも少し音像が大きい感じ。
結局、まずクロスオーバーを38Hzに戻す。この方がスッキリする。
いろいろと聞いてみるが、やはりある程度以上レベルを上げていくと微妙に圧迫感がある。レベルをだんだん下げていく。念のため、メインSPだけでも鳴らしてチェックする。このD-Cubeの場合は入出力とも9時・9時位がベストのようだ。
レベル設定について山本耕司さんに聞くと、「プリアンプやDACの出力や、スピーカーの能率も違うので、単純比較にはならないが、山本家の場合INPUT 10時、OUTPUT 13時半ぐらい。KEFは、感度94dBなので、ACT1よりは能率が高いと思う。」とのお答えだった。ACT-1は90dBと低いので、こちらのD-Cubeがそれに合わせて低いレベル設定というのは一応理解できる。しかし、両方とも9時位というのは、特にOUTPUTの方は低すぎるかと思うが、プリの出力が大きいのかもしれない。(スペック上真空管1段でMax40Vとなっている。Max26cBゲインの時のことと思うが、現在は14dBゲイン。よって1/4としてもMax10Vか?)
いずれにせよ買うことにして、Sa-Logicの村田さんに電話する。
その際、メインSPのアンプ・オンでD-Cubeの電源を切ると、少し経ってからギュルルーという音がして切れていくことを話すと、「本来電源SWオフ時には、リレーが出力を切り離すので、音が聞こえないはず。交換する。」との事で別のものを届けてもらうことになった。
5.使いこなしの技
村田さんに聞いて、分かったことは以下の通り。
(1)INPUT 9時の位置では、歪む事はない。
(2)スピーカーは4オームなので、プロテクト・リレーには最大で10A流れる。接点を保持するため演奏中のオンオフは出来るだけ避けること。
(3)φスイッチは位相反転用。(うちのプリのラインアンプは反転型なので、マイナス側で使用)
(4)スパイク使用は効果あり。SWー1600はダブルSPでエンクロージャーの振動をキャンセルしているが、D-CubeはSPが1本なので、キャンセル出来ておらず、振動対策として有効と思われる。
(5)D-Cube周りは、壁や家具など振動しないようにする。効果的なチェック方法としては、CDのキックドラムが鳴った時に、CDの電源を切り、壁などが振動している状況を確認すること。
6.音楽試聴
フォープレイ、セリーヌ・ディオンのCDから始める。いずれも余り好みでないので、あくまで試聴用。
カエターノ・ヴェローゾ(ノイチス・ド・ノルチ、CD)なんかでは、彼の声が少し太いというか、これが本来かもしれないがボディが感じられれる。かなりいい線行ってるものの、StudioK’sで聞いたときの切れの良さには及ばない。ボリュームを上げても、あまり改善されない。これは、やはりスーパートゥイーターが効いているのだろうか?
キース・ジャレット・トリオ(ウィスパー・ノット、CD)は、ECMらしく全体に低域が薄い感じがよく分かる。ライブ感は別のところで醸し出しているのだろう。全体として、厚み、深み、ライブネスがとてもいい。
LPの反りはやっぱり出てくるものもあるが、大体はいける。やはり、LPにすると何か元気になってくる。
パイプオルガン(J.パッヘルベル/トッカータ、バッハ/トッカータとフーガ、いずれもLP)はやはり凄い。持続的な重低音が出ているのがよく分かる。
特に印象的だったのが、バイオリン・ソロのLP(G.クレメル/バッハ)。無伴奏だから低域成分がないと思ったら大間違い。D-Cubeを切ると、上澄みだけのような頼りない感じが出てくる。入れると、ステージというか会場の広さが見えてくる。いわば、足が地に着いた感じになる。
LPのオーケストラ(A.ロンバール/ストラスブール響/トリスタンとイゾルデ)(チェリビダッケ/ミュンヘン響/展覧会の絵)では、コントラバスは地を這いはしないが、その旋律がしっかり聞こえる。フィルハーモニア・バロックのヘンデル(LP)もいい。
ピアノはどうか?モニク・アースの弾くドビュッシーのアラベスク(LP)が以前は軽めに聞こえたのに、これで聞くと厚みが増している。リヒテルの東京ライブもより深くなる。
ジャズのライブ(ビル・エヴァンス・トリオ/ワルツ・フォー・デビー)ではヴィレッジ・ヴァンガードのグラスの音やざわめきがよりリアルに聞こえる。
日野晧正やマイルスのマイ・ファニー・ヴァレンタインの切なさ。トランペットのブローに合わせて、D-Cubeの緑ランプが点滅する。(ピアノやベースでないことに注意!)
スティーリー・ダンの躍動感(Aja)。マーク・アーモンド(The City)の厚みと濃さ。凄く良い。
7.総合して
このサブウーファーについて分かったこと。
これは、一種のエンハンサーである。それも、量を増加させる(increase)のではなく、再生のレンジやクォリティを拡大(extend)する。だから、単純に量感を増やす方向に行くと、全体としての情報量増加をむしろ曇らせる事になる。高域や中域とバランス=相似形を保ってレベル設定していく必要がある。
我が家のメインSPのウーファー&スコーカーの口径は所詮17cmなので、結構低音が出るといっても限界がある。全体としての音の出方はどうしてもハイスピード志向で軽めになる。
ここで、この試聴記に長い前説をつけた意図がお分かりいただけるのではなかろうか?
つまり、このサブウーファーのレベルや周波数の調整に注意すれば、メインSPの持ち味を生かしながら、低域再生能力と音のクォリティを上げ、厚みや艶、彫りの深さ、雰囲気感などを付け加えることになる。いわば、より濃く深く音楽を聴けるように出来るのである。
そして、メリットはコンパクトな大きさもあり配置の自由度が高く、サブウーファーの存在を意識しなくて済むことだ。メインスピーカーだけで聞いているのと同じ感覚でよい。また、そうなるようにバランスを調整することが必要だと思う。
これからも、レベル設定はまだまだ微妙に触らなければならないだろう。だが、基本的な能力の高さはよく分かった。これはいろんなソースを聞きながら、ある程度位置も動かしながら、ゆっくりと丁寧に使い込んでいかなければならないSPだ。('03.2.19)
その後の調整で、現在のところ、クロスオーバー 41Hz、INPUT 9時45分、Output 10時くらいになってます。('03.3.9)
山本耕司さんがStudio K’sに新しく製品版のD-Cubeを導入された。これまで使っておられたのは試作機でゲイン設定などが違うそうで、現在のところ山本さんの『製品版D.Cubeのinputは8時半、outputは4時ぐらい』との事。上記の設定と大分違っているのが分かる。音も製品版の方がずっといいそうだ。
それにしても、D-Cube2個でのステレオ使いは良さそうだなあ。また聞かせて頂こう。('03.3.17)
今日メインSPとの距離を測り直してみると、コーン紙同士の間隔で約80cmだったので、タイムアラインメント(音の到達時間)補正を従来のー0.9からー0.8に変更した。
そうしたら驚いた。これまで少し中高域と低域がほんの少しスピード感が違うかな、と感じていたのが、ぴたっと重なったようになった。ものすごく微妙なレベルの話なので、多分経験しないと分からない事だと思うが、こんなに微妙なところが効くとは思わなかった。
レベルは入出力とも9時くらいで、曲により少し触るが、クロスオーバーはここのところずっと38HZにしている。('03.5.14)
【D-Cube2のスパイク支持】
Sa-logicの村田さんにD-Cube2のスパイク支持について聞いた話では、SW-1600の場合は、2本のSPが逆位相で動作し、振動をキャンセルしているのに対し、D-Cube2はSP1本だけなので、スパイク支持は振動対策に効果があるだろう、ということだった。そこで、東急ハンズで2cm径(D-Cube足部の先端と同径)の真鍮コーンを超強力両面テープで貼り付け、スパイク支持にした。
我が家の床はカーペット敷きで、スパイクが直接コンクリートに刺さる形になる。
その結果、まず音全体がシャキッと立っている感じがするようになった。
これまでの、ややドローン感を持つ音の方がいかにも出ているという感じなのだが、スパイクにすると量感は少し減る。
これまでは、超低域まで延びているという感じがする、やや重い音だったが、少し軽く感じられるようになり、出力を2ノッチほど上げても十分な感じになった。
一方で、4プレイやパイプオルガンなど超低域を含むソースの音はちゃんと再生している。しかも、全体としてのスピード感が上がる中で、高域がよりくっきりと感じられるようになった。特にオーケストラなんかが、かなり一体性を持って鳴るようになった。
この原因としては
1.メカニカルアースによるD-Cube自身の箱鳴りの抑制
2.床を通じた振動伝搬の抑制
という事が一応考えられる。
いろいろ聞いた上で、我が家では当分これで行くことにした。
入力は9時過ぎ、出力は11時、クロスオーバーは38Hz。('03.5.20)