演奏も録音も素晴らしいマルチのディスクを集めてみました。「これぞ!」というお薦めがありましたら、是非ご一報下さい。
マルチの場合、どうしても効果を確認することも含めて■■ピンクフロイト「狂気」■■やビョークなどを聞く場合が多く、クラシックファンからは「あんな音がぐるぐる回るだけの曲のどこがいいんだ?」と言われる時もあります。ビョークなどはその繊細多様な音楽性が素晴らしく、マルチでは一層際だつのですが、好みは好みで致し方ありません。
一方で、クラシックのマルチソフトは単に残響をリアに付けただけの感じのディスクや、ダイナミックス重視でピアニッシモが非常に小さい物も多く、無難とはいえ今ひとつパットしない、というのも多いのです。(5.0収録も結構あります。)
また、特にヨーロッパにマイナーレーベルでクラシック中心にSACDを意欲的に出しているところがたくさんあります。これも順次追いかけたいとと思います。
参考にアマゾンのデータも載せてありますが、海外から買った方が安いケースもあります。
◆「オーディオ・ベーシック」Vol.31~Vol.34で、山本耕司さんの「わがまま実験室」にビョークや●●チック・コリア「ランデブー・イン・ニューヨーク」●●をはじめおなじみのお薦めソフトが満載されています。まずは、こちらもご覧下さい。ここでは、重複しない物から紹介していきます。
◆ステレオサウンドに三浦孝仁さんの「マルチチャンネルディスクレビュー」が前153号まで掲載されています。これも情報満載です。でも、このコーナーなくなってしまわないだろうなあ?
◆あと、個人のサイトですが、「もみの木医院」のお薦めソフトも多彩な内容です。
http://www.mominoki-iin.com/hobby/sacd_multi_dvd-audio_multi.html#sacdmulti
The Sermon on Exposition Boulevard /Rickie Lee Jones [SACD+DVD] [Limited Edition] [Import from US] NEW!
◆リッキー・リーの2007年リリース。リー・カンテロンという人がイエスの言葉を現代風に語り直した「The Word」という本からインスピレーションを得ており、彼が製作やライナーノーツにも参加している。なかには「ゲッセマネ」などというモロそれ系のタイトル曲もあるが、音楽自体は落ち着いたアコースティックな曲ばかりで、聞いていると不思議にネイティブ・アメリカンの世界のようにも感じるときがある。リッキーの中では多分、いろんな事がシンプルに咀嚼されて音になっているのではないかという気がする。
◆マルチとしての音造りは非常に丁寧で、ギターや各楽器が自然な感じで、しかし濃密なつながりの中で一体感を持って響いてくる。
買ってから一度聞いただけではぴんと来ない、でもじわじわと良さが分かってくる種類のアルバムで、森の中のような響きを味わうだけでも値打ちがあると思う。
マルチの音場についてはポップスではビョーク、ベックに次いで良いと思う。
◆今でもDVD付きの特別版が手にはいるので、リハ風景など「動くリッキー・リー」を見ることが出来る。
In A Silent Way/Miles Davis [Original recording remastered] SONY [Import from US] NEW!
●「SHHH」の最初にザヴィヌルのオルガンが後ろからドバっと出てきて度肝を抜かれるが、いやあ、ディテイルが手に取るように分かって面白い。チック・コリアとH.ハンコックのエレピも合わせてキーボード3人がリア、後はフロントだが、たとえば「In
a Silent Way」の冒頭でキーボードやエレピが濃いスープのような持続音を広々と鳴らす中で、D.ホランドがアルコ(弓)で弾く部分のニュアンスの変化がクリアに分かる。
それにテープ・ヒス(もうこんな言葉が分からない人も増えているんだろうな)もちゃんと入っているので、むちゃくちゃな加工はしていないと思う。
●僕の米コロンビア盤LPはマトリックスナンバー2L&1AFでとてもオリジナル盤とはいえないのだが、もっとミッシュマッシュなごった煮の感じだ。むしろビル・ラズウェルがリミックスした限定盤LP2枚組の方がSACDに感触としては近い。
●ウエイン・ショーターのソロの美しさはSACDがダントツに良い。勿論、マルチはやや分析的な感じになるので、LPを大音量で鳴らしたときの呪術的・祝祭的なエモーションは少し薄れるが、ミュージシャンのど真ん中で聞いているようなクールで持続的な興奮がある。
これはマイルスが好きな人は一度聞いてみる値打ちがあると思う。勿論、マルチで。
Dark Side of the Moon/P.F. [Hybrid SACD] [Import from US] NEW!
■ご存じマルチの紹介の常連ソフト。
■内容はマルチ的にはとことん面白い。最初にマルチで聞いてドヒャー、たまに聞いてやっぱり良くできているなあ、そして、時間が経つとやはり内容が良いのでじっくりも聞ける、これは持つに値するディスクだと分かる。
■よって必携。
Amazonへは上の検索ボックスからどうぞ。
Rameau: Une Symphonie imaginaire [Hybrid SACD] Archiv
マルク・ミンコフスキ「ラモー/シンフォニー・イマジネール(空想のシンフォニー)」(アルヒーフ)
作曲: Jean-Philippe
Rameau
指揮: Marc
Minkowski
◆ミンコフスキが22歳で結成した手兵のルーブル宮廷音楽隊を率いて、ラモーのオペラなどからオケ曲を抜粋して作り上げた「空想の管弦楽曲」。ステサン最新号のクラシック評者7人中5人の選を得た点でも異例だが、このディスクのマルチ・トラックの音は素晴らしい。
◆40数人という演奏者の数、シンプルなマイク配置だから出来たのかも知れないが、豊かな音場空間が広がり、みずみずしい音達が飛び交う。特に冒頭のティンパニ連打の鮮やかさと空間の広さは、2chとはスケールが違っており特筆に値する。
◆ラモーというとチェンバロなどがよく知られているが、スケールの大きな作品の良さがとても伝わってくる。
Late Vivaldi Concertos /A.VIvaldi[SACD only] (Sony Classical/ SS 87733)
独奏:Giuliano Carmginola/バロック・ヴァイオリン
指揮: Andrea
Marcon
アンサンブル: Venice
Baroque Orchestra
◆イタリアのバロック・ヴァイオリンの名手、ジュリアーノ・カルミニョーラがヴェニス・バロック・オーケストラ(アンドレア・マルコン指揮)と録音したヴィヴァルディの6曲の後期ヴァイオリン協奏曲(初録音)集。
◆最近の演奏様式の見直しの動きもあって、シャープで劇的・構築的な表現が素晴らしい。
◆石造りの建物で録音したらしく、音がいろんな所に反射して拡がり溶けあう様が見事。
◇Amazon co.jpのレビューから
「前期と比べると意外性があり、ドラマチックで、大胆である。ムード、特性、表現がいきなり変わって、鮮やかなコントラストを描き出す。形、ハーモニー、構造で思いきった冒険をしている。緩やかな楽章はうるおいに満ちて美しい。」
ヴェネツィア協奏曲集 【独アルヒーフ】
作曲: ヴィヴァルディ、ロカテルリ、タルティーニ
指揮:
マルコン(アンドレーア)
演奏:
カルミニョーラ(ジュリアーノ),
ヴェニス・バロック・オーケストラ
◆ジュリアーノ・カルミニョーラ(Vn)が本当に凄い。ヴィヴァルディの他にも優れた作曲家が沢山いた当時のヴェネツイア。
◆これは沈んでいく前に本当に現地に行かなくっちゃ。サンマルコ広場、リアルト橋、アドリア海の夕陽...。
◆でもヴェネツイアほど男の一人歩きが似合わない街はないのだそうだ。あの街に行くと、人恋しくて堪らなくなるのだそうだ。それもなあ..........。
Antonio Vivaldi: La Stravaganza [Hybrid SACD]
Rachel Podger(バロック・ヴァイオリン)/Arte dei Suonatori
Channel Classics/ CCS SA 19503)- 2003/07/08
作曲: Antonio
Vivaldi
演奏: Arte
dei Suonatori
◆レイチェル・ポッジャーがポーランドのバロックオーケストラと競演したヴィヴァルディの「ラ・ストラヴァガンザ」という12の協奏曲。2枚組。
◆やや柔らかめの響きだが、空間が綺麗にとらえられていて美しく拡がる音。カルミニョーラよりもう少し柔らかめの、しかし溌剌とした現代的演奏。
◆ステサン#154のP.171のコメントを参照してください。
スローライフへの誘い バリ・ガムラン ・ミュージック[SACD only]
(ソニーミュージックエンタテインメント XSGL 1)
◆打楽器奏者ツトム・ヤマシタのプロデュースのもと、バリ島にて現地有名ミュージシャンによるガムラン演奏をワンポイント録音、つまり5本のマイクをITU勧告通りのポジションに立てて、その回りにミュージシャンが集まる形でDSDダイレクト・マルチ・チャンネル・レコーディングした1枚。
◆ケチャとガムランだが、特にガムランのベルの響きや余韻が見事に表現されていて、素晴らしい。あまり関心のない人も、虚心に聞いていただければ美しさを理解されることと思う。
James Taylor / October Road [SACD only]
Columbia CS63584
◆ご存じジェームス・テイラーの、暖かく懐かしい世界「オクトーバー・ロード」。参加ミュージシャンも多彩でいろいろ工夫も凝らしているが、和める、和める。
◆SACDマルチとしては、リアは残響を中心に柔らかく全体が拡がる感じになっていて、ヴォーカルが踏み込んできて、安心して音楽に浸れる。素直にマルチっていいなあ、と思わせてくれる1枚。
◆いい曲そろいだが、僕は 3曲目の"On the 4th of July"、9曲目の"Carry Me on My Way" が好きだ。
TOUR LES MATINS DU MONDE / Jordi Savall [Hybrid SACD]
Aliavox AVSA9824
◆映画「めぐり逢う朝」のサントラ盤。
18世紀フランス、ほとんど記録のないヴィオールの名手サント・コロンブと、その娘と、弟子のマラン・マレとの確執と愛情を描いた物語。92年のセザール賞で監督賞、助演女優賞ほか7部門を受賞しているそうだ。フランスで大ブームとなり、これが古楽・バロックのCD売り上げを押し上げたと言うから、やはり映像の影響力は大きい。
◆単なるサントラ盤以上のホンマモンで贅沢なアーティスト陣、音楽的内容の多様さと深さと、録音の良さ。18世紀フランスバロックの総集編としても聞く値打ち在り。超推薦。
◆次は映画を見てから聞くと、もっと臨場感が沸きますよ、和知サン。
◆CDはアマゾンでもあるのだが、SACDはタワーにも無い。しかし、和知情報によれば新宿のユニオンにちゃんとある由。
米アコースティックサウンズのページ
DVDは中古品しか販売されていないのですが、参考に。
Isabel I, Reina de Castilla / Jordi Savall [Hybrid SACD]
Aliavox AVSA9838
◆カスティージャ(カスティーリア)の女王イザベル1世に関連した曲や、その時代のイベリア半島の音楽のコンピレーションアルバム。
◆これも和知さんネタ。冒頭の鐘の音からして、録音の良さと、音場の広さをまざまざと感じることができる。多彩な楽器の音色が愉しい。
英文の解説も読むのももどかしく、内容は良くは分からなくても、十分楽しめるディスクだ。
Hiromi(上原ひろみ)/Another Mind [Hybrid SACD]
Telarc SACD-63558
◆若手ジャズピアニストの一押し、Hiromiのデビューアルバム。何のためらいもなく、ぐいぐい引きこむダイナミズムに才能のほとばしりを感じる。他にも日本人ピアニストは一杯いるのだが、彼女には飛び抜けた物を感じる。
◆一部にお遊び的な音の動きはあるが、全体としてはスケールの大きな空間でのジャズという、オーソドックスな音作りだと思う。DSDレコーディングだが、ピアノやベースがしっかり踏み込んでくる手応え。
◆早いテンポの曲が特長のように思われているが、バラードっぽい曲のリリシズムもいいと思う。僕はアンソニー・ジャクソンがエレベーを弾いている4曲目"Joy"、それと6曲目"Truth and Lies"が好きだ。
確かにまだ荒削りで力押しなところはあるが、トータルで絶対「買い」だと思う。
Bjork /Vespertine ビョーク/ヴェスパタイン[Hybrid SACD]
Polydor 06024198159071
◆ビョークというアイスランド出身のアーティストは当然昔から知っていたが、濃そうな感じで何となく近寄らなかった。
しかし、山本さんのスタジオで聞いたときには、一挙にはまった。「SACDマルチをやりたい!」と僕に思わせた1枚がこれだ。
◆今までいろんな人がコメントしているだろうが、僕は自信を持って断言する。「いい状態のマルチで聞かなければ、この凄いアルバムの真価は多分分からない。」
◆4曲目の"Undo"、6曲目からの"Frosti"~"Aurora"などの流れが特に好きだ。優しい、繊細なしかし強靱な知性が支える柔らかい音達が、広い音場の中で息づく。
確かに、冒険的な音楽かも知れないが、同時に、僕にとってはこの上ない安らぎの音楽だ。
ディスコンのようなので、シカゴのMusicDirectのこちらを。
http://www.musicdirect.com/product/75986
メダラ (SACD)ビョーク
◆言わずと知れた最新アルバム。これの5曲目など確かにマルチで聞いたら、子供は泣くだろうな。声というのは直接に響いてくるパワーがある。一方で、ほとんどさわれるように感じるソリッドな低音の塊(かたまり)も出てきたりして、万華鏡のような音のパレットが展開される。
◆とても、奥の深いアルバムで、マルチ的に聞いていくと音楽的な深さも見えてくる。傑作。
◆メイキングのDVDも見たいけど。40分であの値段はなあ...。うちではDVDオーディオはかかんないし。Wowowでちらっと見たから、いいことにしておくか。
Rachmaninov Symphony no.2 / Ivan Fischer & Budapest Festival Orch.
[Hybrid SACD]
channel classics CCS SA 21604
◆イヴァン・フィッシャーがブダペスト祝祭オーケストラを振ったラフマニノフの交響曲2番。音と内容の良さで定評ある蘭チャネル・クラシックス。
◆これは傅信幸さんのdCSの試聴会で知りました。勿論、2チャンネルで聞いたのだけれど。
ステサンの三浦孝仁さんのマルチ・ディスク・レビューにも載ってます。
◆とにかく美しい曲、美しい演奏。DSDレコーディングらしい空間に拡がる柔らかな響きがよく捉えられている。
僕が好きなのは、3楽章「アダージョ」。よく知られたロマンティックなメロディが、空間に満ちる。
長岡京室内アンサンブル(In Memory of Hideo Saito)
[Hybrid SACD]
N&F(ユニバーサルミュージック) NF 60102
◆斉藤秀雄の弟子、森悠子率いる長岡京室内アンサンブルは独自の問題意識と表現力を持った団体だ。フランスの音楽祭でのヴィヴァルディ「四季」の独自性で一気に評判になったが、このページの上の方のカルミニョーラにつながる先鋭性がある。
◆ここでは斉藤秀雄が弟子達を徹底的に鍛えるのに使ったので有名なチャイコフスキーの「弦楽セレナード」やモーツアルト「ディヴェルティメントK.136」などが集められている。整えられたアンサンブルが美しい。
◆マーラーの「アダージェット」はCD層のみで、これこそSACDで欲しかった。
◆特に重要なのは、マルチの「サウンド・バランス・テスト」トラック。弦楽合奏で全体や個々のチャンネルの音量、バランスのチェックに使える。SACDのテストディスクはほとんど無いので、それだけを考えても値打ちある1枚。
TOWER@JPのカタログNo.
セイクレッド・ラブ Sacred Love/スティング [Hybrid SACD]
◆これもスティングの最新作。マルチとしては大傑作録音ではないが、2chよりもずっとスケールの大きさが伝わってくる。「センド・ユア・ラブ」冒頭など、「おっ」と思わせるところが随所にある。
マルチの凄さ、というよりも、当たり前にマルチはやはりいい、と思わせる。
◆WOWOWでこのメイキングを放映していて録画したが、実に緻密な音作りをしているかが、とてもよく分かる。
Faure: Requiem (1893 Version) [Hybrid SACD]
◆古楽で有名なP.ヘレヴェッヘのフォーレ/レクイエム。これはちょっと聞きにはマルチのメリットはわかりにくいが、2chに戻すと、ホールトーンやスケールが一気に小さくなるので、それと分かる。
小音量でも音場の広さ、ホール感を味わえるのがマルチの強みだと、つくづく思わされる。
◆ピエ・イエズス(4曲目)など、本当に美しい。ヴォーカルの実在感が凄い。
◆あなたもこれを聞いて、これまでの人生悔い改めてみませんか?(笑)
作曲: Gabriel
Faure
指揮: Philippe
Herreweghe