●旧宅(大阪市北区OAP)のインテリア


リビングルーム東側
 ~スピーカーの対向面






















日々の暮らしのデザイン

 「デザイン」には元々興味があった。昔は、例えばイタリアンデザインや北欧デザインなど、特にストレートで凝縮したモノが好きだった。ガラスで言えば、いつかバカラを、という感じ。音楽で言えば、バッハやベートーベン、ウェーベルンといった感じ。シューベルトやブルックナー、ブラームスなど、あんな辛気くさいモノ聞いてられるか!という感じだった。
 しかし、事故後の入院生活でかなり志向が変わってしまった。その頃、プロヴァンスブームで入院中、ピーター・メイルの本を何回も繰り返し読みふけったものです。病院では、お酒は勿論、食事も思うとおりにはならないので、社会復帰したら思う存分おいしいものを食べて、ワインも飲んで、などという事を考えて、毎日やり過ごしていた。
 退院して、またいろいろあって、結局一人に戻って、本当にがらんとしたマンションの中を見て、これからどんな風に暮らしていこうかと、つらつら考えて、まとまって来たのは、「カントリー」、特に「シェーカーデザイン」、「プロヴァンス風」、「ナチュラル」というようなイメージだった。もともと着るものはトラッドだったし、元配偶者がパッチワークをやっていたりして、そういう影響はあったかもしれないが、間違っても「赤毛のアン」風な感じはご免蒙りたい。そこで、いろいろな本や雑誌を読み始めた。特に気に入ったのは、フランス語も読めないくせに「見続けた」マリークレール・メゾン。本当に穴のあくくらい最初の何冊かは隅から隅まで「見た」。空間の使い方、色の使い方、ファブリックの使い方、その他。特に気に入ったのは、カトリーヌ・メミなど、白と様々なグラデーションの茶色と、黒を中心とした、色数を押さえて良いものをバランスよく置いていくやり方。あるいはいろいろな中間色の使い方。
 もう大分前にマリークレール・メゾンの購読はやめてしまったが、今、そういうページを見て「ああこういう感じだな。」という風に思えるのは、これらの暇な日々のおかげかもしれない。 

 
























 一番上の写真の左側。グラス類を収納するパントリー       一番上の写真の右側のデスク。右奥は書斎。
 キャビネットとコンソールテーブル。右奥はキッチン。

 ところが「カントリー風」なものはいっぱいあるのだけれど、「プロヴァンス風」のものはほとんどないか、あっても凄く高価だった。そこで、当時はまっていた海外通販でシェーカーデザインなどのアメリカン・カントリーの家具キットを購入して、色目をそろえて順次製作・塗装していった。今使っている家具の半分以上は、そうして自分で手がけたもの。これらは、とりあえず手を動かすことで、心を癒し、木に触れることで家具のコンセプトのようなものを教えてくれた。
 そして、イタリアンデザインみたいなものはもう欲しくなくなってしまった。ガラスで言えば、リサイクル・ガラス。あるいは手吹きガラスのもったりとした、柔らかい感じ。直線のようでどこにもそんなものがない、アフリカやインドネシアなどの素朴な手作り家具。アジアン・テイストにも惹かれる。音楽で言えば、一番厳しい時をブルックナーが支えてくれた。今でも、つらくなってくるとブルックナーの各交響曲のアダージョを続けて聞く癖は変わらない。シューベルトがあんなに少なく聞こえる音数で、どんなことをうたおうとしたのか、少し分かるようになってきた。
 今の住まいに引っ越すときには、前よりも広い部屋になったけれども、配置を詰めていくと、結局、家具の数を減らして、空間を大事にすることになっていった。
 格好良いことなど、何も必要がない。日々柔らかい心で過ごせていくならば、それだけで十分。隠れ家・避難所のような自分の遊び場所と、友人を招く場所、オーディオや音楽を楽しむ場所、効率的な作業ができる情報や資料の収納場所、高速なマシン環境などなど、要するに、くつろげる場所。

 今はインテリアいじりはもう一休みして、関心は雑貨の方に移っている。でも、ショップや美術館などよくデザインされた空間は大好きで、あちこち出かけていって栄養分にしたい。それが自分の空間を新鮮な眼で見直すことにつながる。そして、「和への回帰」、「アジアへの回帰」のような気持ちを強く感じはじめている。


 













(上)玄関のシェーカーキャビネット

(右)和室

 

 ベランダの風景。ここで朝昼の食事をしたり、本を読んだりします。パソコン、インターネットもできるのですが、テーブルが低いのでもう少し大きめのものを探しています。

 長椅子です。川から結構風が来るので、時々ここで昼寝をします。