「こら下界。お前は夕べも職を曠(むなし)うしなかった。そしてけさ疲れが直って、己の足の下で
           息をしてゐる。もう快楽を以て己を取り巻き始めている。断えず最高の存在へと志して、力強い
           決心を働かせてゐるなあ。」(ファウスト第2部、堀辰雄「美しい村」より)

ホンコン、ホンコンどこ行くの?

  旅行記には小難しい文明批評的なことは書きたくないと思っていた。イギリス編をなかなか書かなかったのもその辺が引っかかっている。しかし、良かった、楽しかっただけでは、やはり面白くない。
 まずいろんな街や人々の様子を見たい、土地の空気を感じたい、というのが第一の目的である以上、短い期間に出会った人々の話や限られたデータであるが、やっぱりその辺を書いて見たい。

中国の中の香港

中国返還(1997)後の香港の変化
 身近なところでは、警察の名称が "Royal Hong Kong Police"から"Hong Kong Police"に変わったなどあるが、殆ど変わってない、というのが聞いた人々共通の答えだった。

◆いくつかのデータなど(まだ、きっちり裏をとってはいませんが、共通して聞いている内容です。)
 面   積  東京の約半分(約1,100k㎡)。香港島は車で1日もあれば余裕で回れる。小さな疑似国家。

 人   口  約680万人(30年前は約400万人)
         毎日150人が移入してくる、という話もある。殆ど中国から。

 観光客数  香港への観光客数は、中国返還後、毎年減少傾向のようである。
         しかし、広州など中国側の観光客が大幅にのびており、そちらから香港に入る観光客が増えてい
         るようで、香港全体としては増えているという見方もある。

 建設関係  78階建てのビルが最高だが、現在88階建てのビルが建設途上。地面はもう殆ど残っていない。
         (8というのは中国人が大好きな幸運の数字。ちなみに4階や4号室は作らない。)
         埋め立ては順次進んでおり、九龍半島と香港島の間の海はだんだん狭くなっているらしい。
         お金持ちは山側に住んでおり、その圧力で中環の北側からヴィクトリア・ピークスへつなぐ、ヒルサ
         イド・エスカレーターが政府負担で設置されている。
         
 交   通  かなりのラッシュ。しかし、車には100%近い関税がかけられており、しかもガソリンはリッターあた
         り200円ほどするため、車に乗っているのはお金持ち。中国は右側通行だが、香港は左側通行。
         歩行者の信号無視は当たり前だし、車も止まらない。要するに自己責任。 

◆経済情勢

 最近数年は冴えないようだ。しかし、経済特区で急成長している広東省は香港との一体化を強めているようで、香港はもう中国本土(Mainland China)と一緒に見なければならないのかもしれない。
 
















(上)中環(Central)の高層ビル郡
(右)Quarry Bayの"Taikoo Place"でかい、高い、綺麗。



 実際に中環(Central)のビジネス街は凄い活気と人の動きで、香港島のQuarry BayでもCitibank(IBP)や香港IBMが入っているTaikoo Placeという高層ビルが複合的につながったビル郡があり、欧米人も含めいかにも国際金融ビジネスマンという感じの賢そうな人たちであふれていた。
 まあ、銀行の利率が下がってきているというのは、余り良い情勢ではなさそうだが、それでも香港の国際経済上の地位は揺るいでいないようだ。

宗教の話

 アジア風の街に来るとなぜか肩の力を抜いてしまうのは、やはり我々がオリエンタルだからだと思うけれど、それは他方で多神教的な多元的価値の世界だからかもしれません。
 ところで、中国人の宗教ってなんだと思ってます?儒教は僕の意見では宗教ではありません。道徳倫理思想みたいなものだと思うし、第一儒教の宗教性が高ければ、とっくに当局が弾圧していただろうし、韓国でも儒教とカトリックが同居していることからも、儒教の性質が分かると思います。
 では、中国人の伝統的な宗教ってなんだと思います?それは、民間伝承のようなものです。例えば、あちこちにある関帝廟の「関帝」は三国志に出てくる関羽。誰それ?「項羽と劉邦」ってありましたよね?「虞や虞や汝を如何せん。」といって虞美人を手にかけた項羽。それを破った劉邦の家臣にして第一の義兄弟が関羽です。
 他にも、今回行ったレパルス・ベイ(浅水湾)ではお金の神様がまつられていたり、下の文武廟では教育と幸福の神様がまつられていたり、日本で言うお地蔵さんや何々観音、管公(菅原道真)のような感じです。しかし、現世利益的とは言っても、人々が熱心に信じているのは中国の方がずっと上のようです。




















(上)文武廟のループ状の線香の下の我が母(マーマー)。ちなみに線香は1本何千円かする高価なもので、1週間くらい持つそうです。

(下)文武廟で線香を捧げる人たち
 神様の色で、黄色はお金、赤は幸福、緑は魔除けという意味だそうです。
 線香の煙でかなりスモークされています。


 キリスト教のように攻撃的な宗教でなくて、ほっとしますが、他方、共産党というもっと一神教なものが中国にはあるので、いずれにせよ油断はできないということです。
 中東や北アイルランド、旧ユーゴなど世界を動かしているかなりのパワーは宗教がらみなので、宗教のことをしっかり知っている必要があると思います。例えば、アメリカ(美国)は開放的なイメージに反して、基本はキリスト教チックな神の国だということが最近よく分かる。それはネイティブ・アメリカンを虐殺した強迫神経症のあらわれとしての「十字軍症候群」とでもいったものになり果てている。
 いずれにせよ、日本人の、そしてよく分かっていないけれどアジア人の我々としては、多神教的な多元的価値の世界が持つ、ある面では優柔不断でテキトーなところと、他面では優しく懐の深いところをもっと評価してしかるべきだと思います。(日本の場合、一方で伝統的なモラルが崩壊しているのが厄介ですが。)

よく遊び、よく稼ぎ

 20年余り前、心斎橋にあったホンマモンの中華料理屋さんの人たちと親しくなり、おごりのビールをご馳走になりながら中国人の感覚みたいなものをよく聞かせてもらったことがある。ミカン箱一つから始める金儲けの話。親を大事にする話(親孝行というのは中国人の琴線にビシバシ響くそうです)。etc. 「ラーメンイーガー、コーデルリャンガー」しか無かった大阪には早く来すぎた店で、数年で無くなってしまいましたが、懐かしい思い出です。

 
















(上)旺角(Mong Kok)の目抜き通り。女人街の北側。

(下)同上。久保田利伸の「夜に抱かれて」のMTVは上海で撮影されたので、それをイメージして唄いながら歩いたりしていました。お持ちの方はここでかけてください。

 人間みなそうですが、中国人は欲望の追求に正直なようで、特に香港はなんでもありの世界なので、街にはエネルギーがあふれています。まあ、その辺は既にご存じの通りです。写してはいませんが、ため息が出るくらいストレートな看板やディスプレイもありました。猥雑さというものは、香港の共通項の様です。
 それと、香港の女性はみんなしっかりしているようです。最近は、30歳を過ぎても結婚しないのが当たり前だそうで、自己主張もはっきりしているそうです。また、よく食べるのも特徴の様です。ただし、自分で料理することは余り無く、外食が多いそうです。実際街を歩く姿もかなり背筋が通っているように思います。
 胸に手を当てた、そこの貴女。私は日本女性の方が絶対よいと思っておりますぞ。まあ、たおやかな中国語でささやかれた日にはどうなってしまうか分かりませんが。

よく食べる、皆食べる

 
 昼は定食屋をやってる「上海飯店」にて。
青島ビールの大瓶って初めて見ました。
結構高かったけど、蟹も車エビもうまかった。といっても、腹一杯で合計9千円余り。
















 今回は母の行動できる範囲と時間の制約があったので、実は美食追求は余りできていません。
 その中で、気づいた事がいくつか。

 平均1日5食くらい食べるのが普通で、朝はお粥、午後におやつ、夕食をしっかりとって、寝る前に夜食だそうです。お茶は相当飲むそうです。外食が多いので、飲食店の数はやたら多いのがうなずけます。
 
 お粥は白粥と牛豚鶏アワビなどの味付きの粥。学生時代、二日酔いで神戸元町に食いに行ったのと、同じ感覚のお粥。しかし、香りに違いがある。当然「外米」なので、これが原因ではないかと思いますが、どちらもうまいし好きなので、「ま、いっか」、というところです。

 店により違いますが、朝食やランチのセットメニューではコーヒー・紅茶が付いているものが多く、食事とともに大きなカップでドンと持ってきます。かなり濃い味ですが、いわゆる食生活の欧風化の現れかもしれません。バタートーストは牛肥多士とメニューにあります。

 ディナークルーズはおいしくなかったし、観光客用の店は高いだけででいまいちなのが多い。ニッコーなどのホテルは高い。うまい、いまいちなど当たりはずれはありますが、総じて街中のカードもあまりきかない店で食べた方がおいしい。日本語の書いているメニューがあれば良いのですが、あとはカンと度胸です。でも、これが楽しい。ところで、英語はタクシー(的士)を始め、街中では余り、あるいは全く通じないので、例えばタクシーの行き先などややこしいことを言わずに意志疎通ができるよう考えて、片言でやっていけるのは必須条件です。

我的気に入ったところ

 ブランドものなどにあまり興味が無い私の好みなので、ちょっと違うかもしれませんが。
 (いまさらアルマーニのスーツにゼニアのシャツなど着たところで、誰とどこに行けばいい?)

◆荷李活道(ハリウッド・ロード)

 中環からタクシーで西に行く。骨董や中国家具、お茶関係などの店がどっと通りの周りにひしめいていて、もうワクワクしてしまう。時間の無い中、必死こいて回っていたので、写真も撮っていない。いつか思う様ゆっくりと歩きたい街の一つになってしまった。

 買った物
 1.茶托と中国の鉄観音茶  「誘月(ユーユイ)」という素敵な名前の店。お茶の淹れ方も実演してくれた。
 2.アンティークのバスケット  茶器入れ用に作られたもの。ギャラリー・クラヌキあたりでお茶会をやりたいな。
                    勿論値切った。店の名前は「紫禁城古典家具」

 実は前から欲しかった、格子のペアもあったのだけれど、我が家での使い方のイメージがもう一つ決まってなかったこともあり、見送った。お楽しみは残して、上海での探しものに譲ろう。

◆中環のオーディオショップ

 これまた時間がなかったのと、ガラスとカーテン越しではたぶんうまくとれないだろうと思って写真をとってないのですが、ナカミチのシルバー仕上げの小型のオーディオ機器を、広い空間にシンプルにディスプレイして、しかもアンティークと思われる中国家具をさりげなく配して、おそろしくシンプルかつハイセンスにまとめていました。B&Oなんか目じゃない。このインスタレーションはどっかで使える。凄かった。こんな目抜き通りで商売が成立しているのなら、買う人たちの家はどうなっているんだろう?アジアン・テイストとモダン。うむ。

◆ネオンの街並み

 できれば酒を飲める誰かと一緒にほろ酔いで歩きたい。キッチュな看板(本当は分家の我々の方がキッチュなのかもしれないが)を見上げながら、街の人々のエネルギーを感じながら。結局、誰と行くかなんだよね、旅というのは。いや、親孝行、親孝行。でも、観光はあまりしなくてもいいから、もう一度遊びに行きたいな。









どこへ行く香港

 滞在中ちょうど共産党の1中全会が開かれ、江沢民が主席降板した。労働者階級と中国人民、中華民族の前衛としての「三つの代表」という党規約の改正を行い、資本家を取り込んで党が全ての利害利権を調整するという考え方のようだ。
 だが、うまく行くのだろうか?後任の胡氏はインテリ党務官僚であり、チベット蜂起の武力鎮圧の実績もあるが、一つの政党が全国民の利害を代表できるという、フィクションを維持できるだろうか?
 香港は自己決定ができない。50年は香港の体制を変えない、という約束が返還時にあったが、中国本体の体制がどうなるか、それに全てがかかっている。
 空港のあるランタオ島にディズニーランドが建設中で、これができたらまたアジアの人とお金の流れが変わるだろう。TDLもUSJもその心配をしておいた方がいいと思う。第一、空港一つとってみても、勝てるとは思えない。まあ、当分は生き馬の目を抜く国際金融観光都市としての香港は健在だろう。問題は、むしろこっちの方だよ。

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