DanielWeissの言葉
          "Jitter_Suppression_and_Clocking_by_Daniel_Weiss"


[DAC-202マニュアルから拙訳]

 「古き良き時代のアナログ的な設計原理が適用されねばなりません。」という1節などデジタルを裏打ちするアナログ技術についての深い造詣がうかがわれます。味読あれ。(赤字は筆者)


『ジッターとは何でしょうか?それはどういうふうにオーディオの音質に影響を及ぼすのでしょうか?
 
オーディオ分野でジッターとは、デジタルクロック信号のタイミング的な不安定さを指します。例えばアナログ・デジタルコンバーター(A/D)ではアナログ信号は一定の時間間隔でサンプリングあるいは測定されます。CDの場合でいえば、1秒間に44,100回、あるいは22.675737マイクロ秒毎に、といった具合です。これらの時間間隔がもし厳密に一定でないならば、ジッターの多い変換用クロックそのものを問題にしなければなりません。現実の問題としては、全てのサンプル毎に正確に同一の時間間隔を生成するのは不可能であります。結局のところ、デジタル信号といえどもその本質においてはアナログであり、そのためにノイズやクロストーク、電源の変動や温度などの影響を受けてしまいます。


 それ故に
ジッターの多いクロック信号は、誤ったタイミングでサンプリングされることにより、A/Dに誤差をもたらします。惹き起こされる誤差の程度は高域ほど高いことが、容易に観測されるでしょう。これは高域信号がより急峻な波形であるからです。可能な限りジッター量を最小にするよう注意を払うのが、良い設計といえます。』


それ自体アナログ量であるジッターは、いろいろな場所に忍び込んでいます。
 
①電力を食うモーター(スピンドル/サーボ)による電源の汚染、②サンプリング周波数を生成する水晶の共振(マイクロフォニック)、③容量(キャパシタンス)または誘導(インダクタンス)によるクロック信号間のクロストークなど、です。このように様々なクロストークの仕組みを通じて、CDまたはDVDプレーヤーに組み込まれているD/Aコンバーターはジッターに「感染」しうるのです。
 単体D/Aコンバーターのジッターは、上記のモーター(①)を除いて、②③の仕組みはもちろんのこと、さらには
ソース(例:CDプレーヤー)とD/Aコンバーター間をつなぐ質の低いケーブルによってもたらされます。


 DAC202のような
単体D/Aコンバーターの場合は、ジッターによる2つの汚染経路があることに注目してください。一つは内部経路で、これはD/Aコンバーター内部の信号そのものが、サンプリングクロック(訳注=システムクロック)発振器のジッター量に影響することによるものです。この場合それらに対しては、①電磁波からのシールド、②良質なアース設計、③良質な電源デカップリング設計(訳注:電源干渉低減のための大容量コンデンサなど)、④クロック発振器とD/Aチップとの良質な信号伝送など、古き良き時代のアナログ的な設計原理が適用されねばなりません


 もう一つはサンプリング・クロックが追従・ロックすべき、外部ソースからの信号という
外部経路です。すなわち、D/Aコンバーターは入力されるデジタル・オーディオ信号に同期しなければならず、それ故に内蔵サンプリング・クロック発振器の周波数はソース(CDトランスポート)と同じサンプリング・スピードで動作するようコントロールされなければなりません。これはフェイズ・ロックド・ループ(PLL)が、誤差フィードバックによりコントロールします。勿論PLLは、例えばソース側のサンプリングレートが時間や温度と共に僅かに変化するなどという、ソース側の長期的変動にも追従しなければならないので、CDの場合は44.1KHz一定にはならないでしょう。しかしPLLは短期的変動(ジッター)には追従してはなりません。PLLを非常にゆっくりと反応する「弾み車」のようにお考え戴きたいのです。


 
DAC202では2ステージのPLL回路を採用しており、非常に効率的にジッターを抑制します。オーディオ回路に使用されているPLL回路の共通した問題点は、高域側のジッターしか抑制できないことです。例えば1KHz以下の周波数のジッターは、しばしば一部しか抑制されません。しかし、既に知られているように低周波数のジッターはオーディオ品質に大きく影響しうるのです。DAC202は非常に低い周波数のジッター成分でさえ抑制いたします。』

  DAC202について


トップページに戻る